高橋ヨシキ
たかはし・よしき
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デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。 
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 ©2024 CAESAR FILM LLC ALL RIGHTS RESERVED
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なんともハチャメチャな映画である。近未来のアメリカを、堕落と退廃が支配した古代ローマ帝国と重ね合わせて描くというアイディアは素晴らしい。
劇中で「ニューローマ」と呼ばれる未来のニューヨークのビジュアルや衣装は圧倒的で、心躍るものがあった。これまでさまざまな近未来のディストピアがスクリーンを彩ってきたが、本作の「ルック」のユニークさは特筆に値する。
コッポラ監督は本作を80年代から構想していたとのことで、ほとんどペダンティックなレベルの引用や参照は多く、コッポラ本人の問題意識も随所にそれとわかる形で投入されており、時に実験的な映像も含め見応えは十分すぎるほどある。
根底にあるのは「どうやったら世界をより良い場所にできるのだろうか?」という極めて真摯な問いかけだ。
しかしながら、おそろしく寓意性の高い物語と生々しい現実をシネマティックにリミックスしようという試みが必ずしも成功しているように見えないのは、「今の現実があまりにも殺伐としているから」だけではないように思える。
良いにせよ悪いにせよ、呆れるほど何もかも詰め込んであることは事実だが、過剰さの中に真摯さが埋もれてしまったように思える。
STORY:21世紀、アメリカの大都市ニューローマでは、経済格差が社会問題化していた。新都市の開発を進めようとする天才建築家カエサルは、利権に固執する市長と対立し、一族の後継を狙う親族クローディオの策謀にも巻き込まれていく
製作・監督・脚本:フランシス・フォード・コッポラ
出演:アダム・ドライバー、ジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエルほか
上映時間:138分
全国公開中