おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第48巻編】~完璧超人始祖、強し! 明かされはじめる物語の核心!!~

構成/石綿 寛(樹想社) ©ゆでたまご/集英社

『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』48巻をおぎぬまXがレビュー!!『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』48巻をおぎぬまXがレビュー!!

第48巻では、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)サイコマンVS悪魔六騎士プラネットマンのテクニシャン対決と、完璧超人始祖シングマンVS悪魔六騎士サンシャインの超巨漢対決という、ふたつの対照的な熱い闘いが楽しめます!! 

どちらの試合も展開が全く読めず、一瞬たりとも目が離せません!!

キン肉マン48

 レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★
 星5つ中の5

●グリムリパー復活!? その正体は...!? 

前巻のラストにて、バッファローマンとの闘いで命を落としたはずのグリムリパーが再び姿を現しました! グリムリパーの言動には初登場時から妙な違和感がありましたが、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)のひとり、完璧・拾式(パーフェクト・テンス)サイコマンとして再登場したことで「なるほど、そうきたか...!」と驚愕しました。

始祖の門(オリジンゲート)を抜けた先で、プラネットマンが見たものは...サイコマンのファンシーでキュートなお部屋!?始祖の門(オリジンゲート)を抜けた先で、プラネットマンが見たものは...サイコマンのファンシーでキュートなお部屋!?

そのサイコマンと対峙したのは、悪魔六騎士きってのトリックスター、プラネットマンです。試合開始早々、プラネットマンは全身を構成する惑星を利用した多彩な攻撃をしかけます。木星のリングを使った飛び道具に、火星がある左肩でバックブリーカーを決めた状態での火山噴火...などなど、必殺技がどれもスケールが大きくて最高ですね。なかでも、お気に入りの技は「氷点下首四の字」でしょうか。首四の字というクラシカルな技に〝氷属性〟が付与されるという......現実のプロレスでは起こり得ない、まさしく超人プロレスを象徴するような技だと思います。

極寒の星、海王星と冥王星で構成されている両足の力で、一瞬にしてサイコマンを凍らせる!ちなみに80年代後半の話なので、冥王星はまだ惑星扱い極寒の星、海王星と冥王星で構成されている両足の力で、一瞬にしてサイコマンを凍らせる!ちなみに80年代後半の話なので、冥王星はまだ惑星扱い

さて、試合序盤はプラネットマンの多彩な技の数々に翻弄されるサイコマンでしたが、やはりこいつも恐ろしい! すさまじい握力を誇る「巨握の掌(きょあくのて)」で、宇宙殺法を次々と破ると、今度はプラネットマンの喉元を握りつぶそうとしてきます。そのままキャンバスに叩きつけられそうになるプラネットマンでしたが、ここで反則級の特殊能力を発動。「宇宙地獄!」の一言で、なんと周囲を宇宙空間に変えてしまいました。

もう一度言います、プラネットマンは自身の意思ひとつで周囲を宇宙空間に切り替えることができるのです。これって、本来はラスボス級のキャラが限定的に使うなら許されるくらいの、とてつもないスケールの能力だと思うんですよね。

なぜなら基本的に、プロレスというのは相手を担いでキャンバスに叩きつける格闘技です。しかし、プラネットマンの「宇宙地獄」はあらゆる必殺技の終着点となるキャンバスを消失させてしまう。「キャンバスがなければ、いかなるプロレス技も意味をなさない」......なんというトンチでしょう! なんでもアリの悪魔超人ならではの無法技です。

このシーンがアニメでどのように再現されるのかも気になります!このシーンがアニメでどのように再現されるのかも気になります!

バッファローマンたち悪魔超人ですら「反則スレスレ」と評するほどの悪辣な技!バッファローマンたち悪魔超人ですら「反則スレスレ」と評するほどの悪辣な技!

●プラネットマン、ピンチ!? 決死の作戦に!! 

宇宙地獄で反撃を狙ったプラネットマンでしたが、サイコマンが隠していた能力、マグネット・パワーによって返されてしまい、窮地に陥ります。そこで「悪魔霊術 霊波共鳴」からの「人面プラネット」という、かつてキン肉マンを追いつめた人質作戦をとりました。

完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ)の同胞たちをその身に宿すことによって攻撃をためらわせるという作戦です。かつて、キン肉マンはこの技にとても苦しめられましたが、なんとサイコマンはわずか4ページで攻略してしまいました。

同胞たちを一撃で沈めたサイコマンの容赦ない攻撃に、満身創痍のプラネットマン同胞たちを一撃で沈めたサイコマンの容赦ない攻撃に、満身創痍のプラネットマン

ちなみに、プラネットマンの胸部に召喚されたターボメンが、サイコマンにやられる直前にストロング・ザ・武道(ブドー)の正体に気づきます。ですが、サイコマンは口封じのためにターボメンごとプラネットマンの心臓を貫き、そのまま「"完幻"ファントム・キャノン」でプラネットマンの体を木っ端微塵にしてしまいます。人質となった同胞を一切躊躇(ちゅうちょ)せず、次々と地獄へ送り返す姿は猟奇的で、まさしく〝サイコ〟そのものでした。

反逆者であるゴールドマンの弟子に、苛烈なる制裁...!反逆者であるゴールドマンの弟子に、苛烈なる制裁...!

シーンは変わって、悪魔六騎士のサンシャインが、アメリカ・ニューヨークの自由の女神像のもとにたどりつきます。しかしゴングが鳴る前に、サンシャインは"完璧・捌式(パーフェクト・エイス)"シングマンの奇襲に遭います。悪魔六騎士の中でも一番図体がデカいサンシャインと、それに負けないぐらいデカいシングマンの、超巨漢対決が開戦です!! 

シングマンは、完璧超人始祖の中でも独特な雰囲気を持つキャラです。宇宙金属でできた外見は、ある種の神秘さも感じられますし、顔にはおちょぼ口のようなパーツがあって、それがコマによってあったりなかったりもするんです。僕も最初はこのパーツがないほうがカッコイイのにな、なんて思っていたのですが、読み続けているとどこか味わい深くて......だんだんとパーツがないバージョンが物足りない気もしてきました。前巻で登場した「ガンマン」も連載中と単行本では大きくデザインが変更された超人でしたが、シングマンにもデザインを試行錯誤されている様子が見受けられて、週刊連載の〝ライブ感〟を味わうことができますね。

顔の中心パーツの「ありVer.」と「なしVer.」。個人的には、ないほうがクールで好みでしたが、それだと一度見たら忘れられないデザインにはならない!?顔の中心パーツの「ありVer.」と「なしVer.」。個人的には、ないほうがクールで好みでしたが、それだと一度見たら忘れられないデザインにはならない!?

試合内容に移りましょう。往年のファンならご存じのように、サンシャインは巨漢でパワーファイターというだけではなく、全身を砂にすることもできるので「打撃が効かない」という反則的な能力があります。そんなサンシャインを、シングマンはどう攻略するのでしょうか。

意外なことに、シングマンは巨体な見た目に似合わず、搦手(からめて)で相手を追い詰める策士家でした。あまりにも特殊すぎるシングマンの超人レスリング必勝法を、今回はイチから順に説明していきたいと思います!!

1.肩の楕円状のパーツを回転させてコンプリートコンクリートを精製する。

 2.液状のコンプリートコンクリートを対戦相手にかける。

3.対戦相手にかけたコンプリートコンクリートを綺麗に塗り広げる。

4.時間経過で全身に塗りたくったコンプリートコンクリートが硬質化する。

5.肩から円盤刃を出し、四方のロープを使って全身に切れ目を入れる。

6.肩の円盤刃を収納する。

7.シングデモリッション ウェーブで強力な音波を発生させる。

8.爆破解体の要領で相手の全身が粉々に!

......これがシングマンの必殺技の一連のプロセスです! 恐らく『キン肉マン』史上、もっともセットアップが長い技でしょう。掲載当時、思わず「〝ディスクカッターをショルダーアーマリーへ格納(上図6)〟の部分は省略できるよね!?」とツッコんだ記憶があります(笑)。

ただ、幾重もの仕込みが必要なだけあって、その効果は絶大! 理論上、いかなる対戦相手だろうと一撃で葬(ほうむ)り去ることができる必勝法といえるでしょう。

思えば、超人レスリングにおいて真に厄介(やっかい)なのは、強力な必殺技を持った相手ではなく、優秀な防御能力を持った相手なのではないでしょうか。超人界には、砂となってあらゆる打撃を無効化するサンシャインはもちろん、緩衝材ボディに守られたペインマンなど、特殊体質への対抗策がなければ、ダメージを与えることすらままならない超人が存在します。たとえ瀕死になっても、その度に死の淵から蘇る〝火事場のクソ力〟も、ある意味では最強の防御能力です。しかし、シングマンならどんな超人が相手でも、一連のムーブさえ踏まえれば確実に倒すことができるのです!

ちなみに両者の闘いはサンシャインの崩壊で決着がついたように見えますが、実はまだついていません...! 次巻、粉々になったサンシャインがどうなってしまうのか!? 新たな悪魔六騎士と完璧超人始祖も登場しますので、どちらも楽しみにお待ちください!! 

●こんな見どころにも注目!

これは、シングマンが「自由の女神像の本来の姿は、古代の完璧超人が建てた"完璧の巨像(パーフェクト・ジャイアント)"だった!」と力説した時のサンシャインのセリフです。

これまで対戦相手から語られる衝撃の新説を、正義超人たちは神妙な面持ちで受け入れてましたが、さすがは悪魔超人サンシャイン。ここで読者の気持ちを代弁してくれました。

ピサの斜塔、サグラダ・ファミリア、そして自由の女神......。有名な世界遺産のルーツには、どれも古代超人が関わっており、我々読者はその斬新な新説の数々に息を呑むばかりでしたが、普通に超人たちも困惑しているようで、なんだかホッとしました。

●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。原作者として参加している『笑うネメシス貴方だけの復讐』が『漫画アクション』(双葉社)にて連載中。ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中

●TVアニメ『キン肉マン』 完璧超人始祖編Season 3 制作決定

●9月4日(木)、10月3日(金)
JC『キン肉マン』第89巻、90巻、2ヵ月連続発売!!

●漫画サイト史上最強機能!! 超人・技検索追加!!

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