おぎぬまXのキン肉マンレビュー【第49巻編】 ~積年の汚名を晴らすのは今! 悪魔六騎士の猛攻!!~

構成/石綿 寛(樹想社) ©ゆでたまご/集英社

『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』49巻をおぎぬまXがレビュー!!『週プレ』復活シリーズ、JC『キン肉マン』49巻をおぎぬまXがレビュー!!

第49巻は『キン肉マン』にとってアニバーサリー的な巻にあたります! 作者コメントでゆでたまご先生ご自身もコメントされていますが、『週プレNEWS』(Web)での漫画連載が始まって3年目に突入した記念すべき巻にあたります。

また、新シリーズの第100話目も収録されており、まさにメモリアルな巻と言っても過言ではないでしょう! ということで、作品の節目を飾った超人たちの熱い闘いを早速レビューします!

キン肉マン49

レビュー投稿者名 おぎぬまX
★★★★★
 星5つ中の5

 ●悪魔的な演技が光ったサンシャイン! 

前巻のラストで、完璧超人始祖(パーフェクト・オリジン)シングマンによって木っ端微塵にされてしまった悪魔六騎士のサンシャイン。さらに変形のためのキーパーツをも完全に破壊され、絶体絶命の状況に陥ります。するとサンシャインは敗北を悟ったのか、シングマンに対して「こんなことでは将軍様に顔向けできない」と、号泣しながら殺してくれと懇願します。

殺してくれと言う割に注文が多いが、サンシャインの熱演がウソを曇(くも)らせる...?殺してくれと言う割に注文が多いが、サンシャインの熱演がウソを曇(くも)らせる...?

すでに勝利を確信しているシングマンはサンシャインの願いを慈悲深く受け入れますが、それはサンシャインが仕掛けた巧妙なワナでした...! 一連の奇行は、シングマンをダマして、ホッカイロの要領で自身の身体を発熱させるためだったのです。そして高熱を帯びた身体でキーパーツを鋳造(ちゅうぞう)したサンシャインは、見事に復活を遂げました! 

とはいえ、復活したサンシャインには、シングマンをKOする決め手がありません。そこでサンシャインは、シングマンのショルダーアーマーに収納されていたディスクカッターを引きずり出し、リング上へばらまきました。宇宙金属でできたシングマンのボディは、最強の矛と盾を内包したような存在です。ならば、それらをぶつけ合わせればいい...という悪魔的トンチを実行。 

思惑通り、サンシャインは新技「コンプリートサンド・セメタリープレス」を繰りだして、リング上にぶちまけたディスクカッターにシングマンを突き刺しました!

サンシャインの新技で、8の字を象(かたど)ったディスクカッターに叩きつけられたシングマン。完璧・捌式(パーフェクト・エイス)を司(つかさど)るだけに、なんという因果か...</p>サンシャインの新技で、8の字を象(かたど)ったディスクカッターに叩きつけられたシングマン。完璧・捌式(パーフェクト・エイス)を司(つかさど)るだけに、なんという因果か...

九分九厘、勝利を掴んでいたシングマンでしたが、サンシャインの口車に乗ったことで足元をすくわれてしまい、最後は逆転負け。試合終了のゴングとともに、無邪気に喜ぶサンシャインと相まって、なんだか気の毒にすら思えてきます。試合中も指摘されていましたが、かつてサンシャインは、非力な人間だったジェロニモに敗北を喫するという大失態を犯しました。一方、神に選ばれし10人の完璧超人始祖のひとりでありながら、下等超人に敗北したシングマンもまた、当時のサンシャイン以上に己の傲慢さを呪ったことでしょう。 

さて、シングルマッチで初勝利を収めたサンシャイン。悪魔六騎士・首領格としての威厳も、これで取り戻したと言えるでしょう。ジャイアントレスラー同士の試合という触れ込みで始まったこの試合でしたが、奇策が飛び交う、実にトリッキーな内容でしたね!

●闇に潜みし者たちの闘い、勃発――!! 

次なる闘いの舞台は、日本の京都です。修学旅行生たちが集まる銀閣寺の前では、ザ・ニンジャがなぜか池の中から登場。「かなり男前よーーっ!」と女子生徒が叫んでいると、どこからともなく現れたカラスの大群が銀閣寺を襲撃。純銀の塊(かたまり)を投げつけて建物全体を銀ピカにしたのち、その群れの中からバサバサと"完璧・玖式(パーフェクト・ナインス)"カラスマンが出現しました。いやはや、まだ試合も始まっていないというのに恐るべき情報量です。

ザ・ニンジャの登場シーン。ゴギュゴギュという効果音が独特すぎます...!ザ・ニンジャの登場シーン。ゴギュゴギュという効果音が独特すぎます...!

この試合の見どころは、なんと言ってもザ・ニンジャvsカラスマンのスピード&テクニック対決でしょう。試合中、どちらもほぼ動きを止めることなく俊敏に動き続け、激しい攻防を繰り広げます。 

ザ・ニンジャは、試合の序盤から自身の代名詞とも言うべき忍法「順逆自在の術」を繰り出しましたが、カラスマンは「その技のからくり見切った!」と言い放ち、「体躯鸚鵡(たいくおうむ)返し」というそっくりな技でザ・ニンジャに対抗します。これまで「順逆自在の術」とは、相手の大技をそのまま返す強力なカウンター技でしたが、カラスマンにはそれが通用しないというわけです。

常人の目に見えない速さで技の受け手と返し手を入れ替えるという究極の奥義「順逆自在の術」。その大技をすぐさま返され、ザ・ニンジャも驚愕常人の目に見えない速さで技の受け手と返し手を入れ替えるという究極の奥義「順逆自在の術」。その大技をすぐさま返され、ザ・ニンジャも驚愕

両者の目まぐるしいテクニック合戦の末、ザ・ニンジャは「転所自在の術」でキャンパスを火山の噴火口へと変えて、カラスマンを落下させようと目論(もくろ)みます。相手の慢心をついて火口に落下させることに成功したザ・ニンジャでしたが、いざカラスマンの死体を見に行くと、カラスの〝ある特性〟を活かしてマグマの海から逃がれていたのです...! 

『キン肉マン』には様々な動物がモチーフの超人が存在しますが、なかには「その特性を試合に活かす!?」と叫びたくなるような能力もチラホラ。例えばこのカラスマンの場合は「羽根と骨組みとなる木の枝があればどんな場所にも簡単に巣を作ることができる」というカラスの特性を利用して、火口への落下を回避しました。それを見たザ・ニンジャの「巣!」というリアクションも最高です。

またこの時、鳥取にいたキン肉マンたち正義超人が京都の銀閣寺に駆けつけます。そのメンバーのうち、ブロッケンJr.はキン肉星王位争奪戦でザ・ニンジャと同じ超人血盟軍に所属していたこともあり、とりわけ強く彼を激励します。 

しかし、ザ・ニンジャは「超人血盟軍としてではなく悪魔六騎士として闘っている」とブロッケンJr.に告げて、正義超人たちからのエールを拒むのでした。

真・友情パワーを提唱したキン肉マン ソルジャーのもとで共闘した、ザ・ニンジャとブロッケンJr.による魂の言い争い...!真・友情パワーを提唱したキン肉マン ソルジャーのもとで共闘した、ザ・ニンジャとブロッケンJr.による魂の言い争い...!

過去にも何度か触れましたが、ここで再度、本シリーズのテーマともいうべきイデオロギーの対立が発生しています。正義超人、悪魔超人、完璧(パーフェクト)超人、それぞれの主義主張は決して相いれません。 

しかし、ブロッケンJr.とザ・ニンジャは超人血盟軍として共闘した過去があり、一時的とはいえ同志だった事実があります。三属性による三つ巴(どもえ)の抗争の行く末はまだわかりませんが、超人血盟軍の在り方は現在の問題を乗り越える解決策の一つだったのではないでしょうか。いずれはこの延長線上に、超人同士の争いがない平和な世界が待っていると信じています...! 

さて、話は試合に戻りますが、その後、ザ・ニンジャはカラスマンの「鴉(カラス)の早贄(はやにえ)刺し」によって胸を貫かれてしまいます。意識も朦朧となり、ついに敗北を覚悟したザ・ニンジャでしたが、その眼にあの陣形が飛び込んでくるのです...! 

キン肉星王位争奪戦準決勝、知性(フェニックス)チームとの試合中、超人血盟軍が見せたあの光景が再び...! (上:第27巻より、下:第49巻より)キン肉星王位争奪戦準決勝、知性(フェニックス)チームとの試合中、超人血盟軍が見せたあの光景が再び...! (上:第27巻より、下:第49巻より)

そう、「望みを捨てずに戦え」を意味するLの陣形です! その意味を思い出し活力を取り戻したザ・ニンジャは、逆転を狙ってリングを使った大技「悪魔忍法 クモ糸縛り」を繰り出したものの、「体躯鸚鵡返し」で場所を入れ替えられ、自ら囚われの身となります。

しかし、それすらもザ・ニンジャの想定の範囲内でした。ザ・ニンジャはカラスマンが接近した隙に秘技「忍法顔写し」で、カラスマンの姿や能力をコピーしてしまいました。 

ふたりのカラスマンによる我慢比べは、一方のカラスマンがバラバラにされるという残酷な結末を迎えます。残されたカラスマンの真贋(しんがん)は、カラスマンが使役していたカラスたちが答えを導きます。カラスたちが主(あるじ)の命に従わずに飛び去ったことにより、ザ・ニンジャは自ら変身を解き、勝ち名乗りを上げるのでした。 

死肉にけしかけられたネバーとモアと名付けられたカラス。だが、なぜか喰らうことなく飛び去るのだった...死肉にけしかけられたネバーとモアと名付けられたカラス。だが、なぜか喰らうことなく飛び去るのだった...

サンシャインとザ・ニンジャは、ともに屈指の人気超人でありながらもシングルマッチでは一度も勝ったことがないという不遇の超人でした。しかし今回、ついに念願の初勝利を収めることができて感無量です! 旧シリーズから悪魔六騎士を応援されていた読者の皆さんにとっても、最高の結末だったと言えるでしょう。 

さて、次巻はついに節目の第50巻を迎えます! 前シリーズでおなじみの〝魔界のプリンス″と、かつて「黄金のマスク編」でも話題に上ったあの〝正義の神″が激突します!

彼らは果たして、どのような激闘を繰り広げるのでしょうか...!?

こんな見どころにも注目!

画像はサンシャインがシングマンとの闘いを終えたあとに見せた「うる」「せーぞ」「バカがぁーっ!!」という、妙にテンポがいい制裁シーンです。まるでギャグ漫画のように空の彼方へ消えていくシングマンはただただ哀れなのですが...彼の理想、怒り、信念などに耳を傾けずに一蹴してしまうサンシャインには、どこか爽快さすらありました。 

たとえ「我々10人の完璧超人始祖こそ下等超人に優っている」というシングマンの主張が正しかったとしても、それはもう「一億年前の正しさ」なんですよね。だから、現代を生きるサンシャインのアンサーが「うるせーぞバカがぁーっ!!」なのは、ある意味では正解なのかもしれません。実に悪魔らしいというか、彼らしい豪快な決着でした。

●おぎぬまX(OGINUMA X)
1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。原作者として参加している『笑うネメシス貴方だけの復讐』が『漫画アクション』(双葉社)にて連載中。ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中

JC『キン肉マン』第89巻(好評発売中)、90巻(10月3日(金)
2ヵ月連続発売!!

●8月29日(金)0時「キン肉マンの日」に「週プレChannel」にて公開!!
89巻(9月4日【木】)・90巻(10月3日【金】)2ヵ月同時発売記念PV

スペシャルボイス:梶 裕貴 ナレーション:燃え殻 音楽:APAZZI 

●TVアニメ『キン肉マン』 完璧超人始祖編Season 3 制作決定

●漫画サイト史上最強機能!! 超人・技検索追加!!

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