昨年12月の自民党派閥裏金騒動の際に公開された、2022年の政治資金収支報告書の一部。これを「見やすくする」だけで状況は相当変わるはず 昨年12月の自民党派閥裏金騒動の際に公開された、2022年の政治資金収支報告書の一部。これを「見やすくする」だけで状況は相当変わるはず
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「自民党総裁選」について。

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自民党の総裁選が告示された。そこで私なりの政策提案をしたい。行政の内容だけではなく立法の内容も混在しているのはご容赦を。

まずはDXだ。私は以前からメディアでコメンテーターを務めている。ビジネスの世界と比べて政治はデータに乏しい。たとえば、

①以前、地方議会や国会に各議員が出席したか、しなかったかのデータベースを調べようと思ったら存在しなかった。議員給与は税金で賄われるから国民が知る権利はある。ジャーナリストだけではなく市民が各議員を評価できるようになる。

②政治資金収支報告書をスキャニングしたPDF(画像データ)ではなく、収支内容をデジタルデータ化し、データベースとして公開してほしい。現状では、公開はしているものの、手作業でしか分析できない状態だ。

どうせ公開書類とは別に、エクセルか会計ソフトで管理しているんだろ。それもなきゃヤバい。民間企業に提出させているレベル感と違いすぎるよ。現在の公開方式は裏金などの追及を"防ぐ効果"はあると思う。ただ政治の見える化と透明性を理想とするのであれば、デジタル庁などで取り組んだらどうだろうか。

なお私は、議員が議会に100%出席せよとか、政治家はパーティー券を企業から買ってもらうのはダメだ、とかは主張していない。単に、見えるようにしてくれといっているだけだ。

ビジネスの現場では見える化をするだけでほとんどの問題は解決する。見えたら悪さがわかる。そして高校の情報科目の授業で「政治家に不正がないか分析してみましょう」と生きた題材として使えばいい。政治に関心をもつだろう。

次に、これは国の各省庁に加えて地方自治体にも求めたいが、

③入札情報のデータベース統一化と公開、そして落札情報の一覧も瞬時に見られるようにしてほしい。現状では意地悪をしたいのではないかと思うくらいホームページの深いところに置いてある。見せたくないんだろうか。まず見えるだけでいい。

もちろん政治家や行政を責めるだけではない。民間企業のうち上場企業は金融商品取引法に基づき、有価証券報告書を提出することになっている。いわゆる決算書だ。そこで、

④各企業の最重要指標EBITDA(税引前利益に支払利息や減価償却費を加算したもの)を決算書の表紙に載せられないだろうか。これで各社を一瞬で対比できるようなる。投資も呼び込めるかもしれない。

また、提出されたデータは現状、金融庁のEDINETで閲覧できるものの、非常にわかりにくい。経営指標を軸に調べられれば経営学の発展もありうるだろう。個人的に私はXBRLというコンピュータ言語を使ったカスタマイズアプリを活用している。そうしなければ各社の決算書を手作業で分析するしかなく手間だ。

⑤有価証券報告書でもいいので、全従業員数と総労働時間の記載を提案したい。一人あたりの労働時間を計算でき、労働環境が推測できる。株主からしても持続可能なビジネスモデルか判断材料になる。

おなじ利益を稼いでいるA社とB社でも、A社はB社の2倍働いているかもしれない。就活生向けにも有益な情報になる。なにより無駄な会議や付加価値を生まない資料作成がなくなるだろう。まずは「見える」を政策に!

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坂口孝則

坂口孝則Takanori SAKAGUCHI

調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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