こんにちは! 旅のできない旅人マリーシャです。
最近、サブスクで海外の映画やドラマを見て「おうちたび」を楽しんでいます。世界125ヵ国を訪れた私は、映画を見ているとたびたび「お、この国行ったことある!」と懐かしい気持ちになるんですが、実際にその土地を知っていると映画が倍楽しくなります。
画面に映っている反対側の街並みまで把握できたり、登場人物がコーヒーを持っていたら近くのカフェやデリを想像したりと、その世界を360度で、時には匂いや音など街の雰囲気まで蘇り、よりリアリティをもって鑑賞できるからです。
今回は、印象的だった映画ロケ地やモデル地を紹介したいと思います!(映画のネタバレにご注意を)
■人生最大のアドベンチャー! ペトラ遺跡までの道! 『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(ヨルダン)
『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』の舞台となった、ヨルダンのペトラ遺跡は、死海とアカバ湾の間の渓谷にある世界遺産。「ペトラ」とはギリシャ語で「岩」を意味し、「シーク」と呼ばれる岩の裂け目を進んで行くと、その隙間に遺跡「エル・ハズネ(宝物殿)」が現れる。
エル・ハズネは聖杯が隠された神殿として登場した。エンディングでは、インディたちがこの前から馬にまたがり、シークの間を駆け巡りながら、荒野の彼方へ消えていく姿が印象的である。
現地ではこの地に住むベドウィンたち(アラブの遊牧民族)がラクダや馬などを連れながら観光客を相手にしている。彼らの姿は、どちらかというと『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウのようであったが、まあどっちの映画も好きだから良しとしよう(笑)。
また、エル・ハズネの内部シーンこそ映画のセットだろうが(実際には内部は空洞で現在立ち入り禁止)、その外観は眺めているだけで「ここなら本当に聖水がありそう。不老不死の聖水、いただきたい......!」と、なぜか欲深き悪役の気持ちになるほど、神秘的でゾクゾクするものがあった。
インディ・ジョーンズの大冒険は旅のロマンと勇気を与えてくれる。私も旅中、何度あの曲に奮い立たせてもらったことか。ペトラ遺跡は、私がそこへたどり着くまでに数々の苦難(南京虫、スリ、ハードな国境越え)を乗り越えたこともあり、これまでの旅で最も大冒険となった思い出の場所だ。
■ジェームズ・ボンドが潜むメキシコシティ『007 スペクター』(メキシコ)
『007 スペクター』のオープニングの舞台となったのは、メキシコの伝統行事「死者の日」のパレード。ロケ地はメキシコシティの街中だ。
「死者の日」とは故人を偲ぶ行事で、街中はマリーゴールドの花の香りに包まれ、オフレンダと呼ばれる祭壇には、遺影や十字架、ガイコツのオブジェ、花や食物が祀られる。日本のお盆に近いと言われているが、楽しく明るく祝うのが特徴である。
実は元々、メキシコシティでは映画に登場するような豪華絢爛なパレードは存在しなかったそう。しかし、作品にインスパイアされる形で、公開の翌年である2016年、多くのボランティアの協力のもと映画さながらのパレードが実現。フィクションだった世界が現実となった。私は幸運にも、そのパレードに参加することができた。
パレード当日、街は顔にガイコツのメイクやマスクをした人であふれていた。この中にジェームズ・ボンドが潜んでいたのかと思うと、同じように何か事件でも起こりやしないかとドキドキする(実際には、仮装をした5人組が宝石店を襲う強盗事件があったそう)。
まるで、映画の撮影シーンに参加しているかのようなこの体験は、単なるロケ地訪問以上に刺激的で、生命感にあふれた貴重なものであった。ガイコツメイクをしながらも「生きてて良かったー!」と心から思った最高のパレードであった。
■街全体が中世の面影を残すジローナ『ゲーム・オブ・スローンズ』(スペイン)
エログロの描写も話題となった、世界中で大ヒットの長編大作ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』は、シーズン6でスペインのジローナが舞台。古代ローマ時代に造られた、中世の街並みが色濃く残る小さな街だ。
印象的なアーチと修道院の扉に続く石の階段のある「プハダ・デ・サンドメネク」は、ドラマでは市場となっていて、女優メイジー・ウィリアムズ扮するアリア・スタークが窓から飛び出す、インパクトのあるシーンが撮影された場所。ほかにも大聖堂や城壁、アラブ人浴場など、街中の至る所がドラマファンの聖地となっている。
正直、私はエログロ系は得意ではなく、未だ作品の一部しか見ていないのだが、この街がひとつの映画の世界だと思うと興味深く、限られた時間の中で地図を片手にロケ地を探すことにRPG的なゲーム要素もありドキドキした。そのせいか、アリアが逃げたというただの路地裏の石階段すら、ダンジョンへの道のようで妙に印象に残った。
■ジブリの世界とささやかれている絶景『魔女の宅急便』(クロアチア)、『紅の豚』(ギリシャ)
ロケ地ではないがモデル地もちょっと紹介。「アドリア海の真珠」と呼ばれるクロアチアのドゥブロヴニクは、アドリア海に面した世界遺産の街。映画『魔女の宅急便』のモデル地とささやかれているのは有名な話だ(ジブリ公式ではスウェーデンと発表されている)。
スルジ山の頂上から見る青い海とオレンジ色の屋根の景色はまさに『魔女の宅急便』の世界で、観光客はホウキにまたがりジャンプをしてみたり、頭に赤いリボンをつけて浮かれた写真を撮っている。私もそのひとりであり、その写真は門外不出であったが、今回初公開。
また、アドリア海とその周辺は『紅の豚』の舞台だが、その作品については他にもとっておきのモデル地がある。ギリシャのザキントス島にあるナヴァイオビーチだ。
"鮭の切り身"のような形の断崖絶壁に囲まれた秘境は、ポルコの秘密基地にそっくりだ。崖の麓にあるビーチには、1983年にギリシャ海軍に追われ難破した、タバコ密輸船パナギオティス号が座礁している。
崖をつたって下りない限り、自力でその場所へ行くことはできないので、通常はツアー船で行くことになる。ハイシーズンは観光客でいっぱいになるが、私が行ったのはオフシーズン。ツアーが休業中のため、無人の絶景を拝むことができた。
しかし、どうしてもアジトに行きたかった私は、港のおじちゃんに交渉。見事、船を出してもらい(有料)、ポルコのアジトへ到達したのだ......!
ここは、私が世界一周をした中でもトップクラスに気に入っている絶景で、できれば秘密にしたいくらい特別な場所だ。
「きれい......。世界って、ほんとうにきれい」
映画に出てくる"少女フィオ"と同じセリフがこぼれる、そんな場所なのである。
■北欧系と和のミックスでほっこりしたい『かもめ食堂』(フィンランド)
群ようこ原作の映画『かもめ食堂』は、フィンランドの首都ヘルシンキが舞台。小さな海辺の街で、美しい建築やサウナ、マリメッコやイッタラなどおしゃれな北欧ブランドが登場。まさに女子が憧れる「北欧系」の代表である。
ロケ地となった実在する食堂はリニューアルされ、かもめの絵や水色を基調とした北欧インテリアで、日本人観光客の人気のスポットとなっている。
映画では小林聡美、片桐はいり、もたいまさこが、言わずもがな独特な世界を作り出している。彼女たち×和×北欧のミックスと、全体に流れる妙なゆるさがたまらず、フィンランドのシンプルライフに憧れる。
「素朴だけど美味しいものって、ここの人ならちゃんとわかってもらえる気がする」
など、随所にグッとくるセリフが散りばめられている。また、静寂の中に響く生活音や、肉や魚を焼いたり、揚げ物をする音、それを包丁で切るザクザク音など料理のASMRにも癒される(かつて放送されていた小林聡美の食パンのCMでも、『かもめ食堂』が再現されたので、その世界観を目にした人もいるかもしれない)。
激しい日常に疲れたら、かもめ食堂でホッと一息つきたい。そんな癒し系ロケ地である。
■人生でやりたいことはやっぱり世界一周!『最高の人生の見つけ方』
最後に1本で世界一周が味わえる作品を。『最高の人生の見つけ方』は、死を目前にしたふたりの男が、人生後悔しないようにやりたいことを叶えようとバケットリストを作り、生涯最後の冒険旅行に出るという話だ。
ふたりはタージマハル、アフリカの野生の楽園セレンゲティ、万里の長城、クフ王の眠るピラミッドなど、世界各地を舞台にやりたいことを実現していく。
私もかつて、彼らと同じ景色を旅した。その地でのかけがえのない出会いやエピソードをプレイバックしながら、改めて「私は世界一周をしたんだなぁ。もう人生に後悔はないかも」なんて、感慨深い気持ちになる。
みなさんもこの冬はステイホームで「#おうちたび」はいかがですか? 近い将来、また旅ができることを願って、おもしろそうなロケ地を見つけてみてくださいね。それでは、今年も1年ありがとうございました! また来年お会いしましょう!
★2021年開運祈願! "ご利益のある"世界のパワースポット7選~旅人マリーシャの世界一周紀行:第288回
●旅人マリーシャ(旅人まりーしゃ)
平川真梨子。旅のコラムニスト。バックパッカー歴12年、125ヵ国訪問。地球5周分くらいの旅。コラム連載は5年間半を超える。Twitter【marysha98】 instagram【marysha9898】