今季、ふたりの捕手とバッテリーを組む山本。「日本人捕手だと、バーンズは坂本や海野、スミスは梅野や甲斐と似ている」(お股ニキ氏) 今季、ふたりの捕手とバッテリーを組む山本。「日本人捕手だと、バーンズは坂本や海野、スミスは梅野や甲斐と似ている」(お股ニキ氏)

昨年のオフシーズンから今季開幕後の現在まで、MLBの話題はドジャース・大谷翔平が中心だが、ほかの日本人選手たちも目覚ましい活躍を見せている。今、知っておくべき注目ポイントを一挙紹介!【日本人メジャーリーガー大奮闘ワイド②】

■正捕手のスミスは防御率4点台、バーンズは1点台

韓国でのMLBデビュー戦では初回に4安打2四死球5失点を喫し、大炎上となった山本由伸(ドジャース)だが、その後は復調。5月最後の登板で2敗目を喫したものの、11試合登板で5勝はまずまずの出足だ。

そもそも、初戦はどこが悪く、現在は何が改善されたのか? お股ニキ氏は「球種バレ対策でのフォーム変更が裏目に出た」と解説する。

「オープン戦でグラブの中の握りから球種がわかりやすいと指摘され、開幕直前に急遽、大谷翔平のように腹部にグラブをセットして握りを隠すスタイルを導入。しかし、これが山本の投げ方に合っていなかった。

2戦目以降は、まずは腹部で握りを決め、そこから日本時代同様に胸の前にセットするフォームに修正し、その後は復調。本来の投球ができればMLBでも通用することが証明されました」

"らしさ"が戻ってきた山本だが、実は受ける捕手によって違いがあるという。正捕手ウィル・スミスとのコンビでは、韓国シリーズを含む7試合で防御率4点台。一方、34歳のベテラン捕手オースティン・バーンズと組んだ4試合では防御率1点台。如実に差が出ているのだ。

打率1割台のバーンズに対して、スミスは打率3割前後、6本塁打と4番も任される打棒を加味する必要はあるが、山本との相性という点ではバーンズを推したくなる日本人ファンも多いはず。お股ニキ氏が捕手ごとの配球の違いを掘り下げる。

「投球割合ではバーンズのほうがストレートは多めですが、そうとは感じさせない配球の妙があります。フレーミング技術(ストライク率を高めるキャッチング技術)が世界一のレベルなので、その自信が配球に影響している可能性も。日本人捕手だと、坂本誠志郎(阪神)や海野隆司(ソフトバンク)タイプといえばイメージしやすいかも」

一方のスミスだが、お股ニキ氏は「日本人捕手では梅野隆太郎(阪神)や甲斐拓也(ソフトバンク)と似ている」とし、その特徴をこう解説する。

「スミスとのコンビでは、低めのボールゾーンへのスプリットのスイング率が高い傾向があります。問題点は、右打者へのカーブの投球割合が多すぎること。山本は日本時代から右打者のほうが打たれがちなので、注意が必要です」

ほかにも、ふたりの捕手には次のような違いがある。

「正捕手のスミスは失敗が許されないので、その日に一度打たれた球や、調子が悪くて使えないと判断した球種をその後の選択肢から消しがち。

逆に控え捕手のバーンズは少し自分の色を加えてチャレンジしたい意識もあるからか、何度も投げさせることで使える球種に仕上げていく。ほかの球種への効果も考えて選択肢からは消しません」

それぞれに良さと課題があるため、臨機応変な対応が必要になるのは間違いない。お股ニキ氏はその上で、どちらとコンビを組むにせよ、山本の配球面で改善してほしい点があると提言する。

「右打者へのカーブを減らし、代わりにスラッターを増やす。また、今永のように高めのストレートを増やせば、スプリットの効果もさらに増します。配球次第で投球や球質、結果が大きく変わるのが野球の醍醐味。投球の難しさ、奥深さを感じることができる事例といえます」

*成績は現地5月27日時点

オグマナオト

オグマナオトおぐま・なおと

1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

オグマナオトの記事一覧