オグマナオトおぐま・なおと
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
今季も予想外の出来事がたくさん起こったプロ野球。中でも特に球界をざわつかせた異変、珍現象、快挙の謎に野球評論家のお股ニキ氏が迫る!(全7回/第1回目)
* * *
昨季、「3割打者が過去最少5人」と話題になったが、今季はさらに減って3人に。DeNAのタイラー・オースティン(.316)、ヤクルトのドミンゴ・サンタナ(.315)、ソフトバンクの近藤健介(.314)だけとなってしまった。
この現象について、シーズン中から何度も「野球の魅力が損なわれている」と警鐘を鳴らしていたのが『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家、お股ニキ氏だ。改めて、今季の打低ぶりを総括してもらおう。
「投手のレベルアップやストライクゾーンの拡大など、その要因は複合的ですが、特に今季は『飛ばないボール』の影響が大きかった。私は2021年の半ばあたりから『ボールがどんどん飛ばなくなっている』と指摘してきましたが、それ以前のボールであれば、今季2割9分台の打者は軒並み3割に届いていたはずです」
3割打者が減ったからといって、決して打者のレベルが下がったわけではないのだ。
「一部では『ちゃんと芯でとらえれば飛ぶ。技術がない』と語る球界OBもいますが、物理的に無理なものは無理。これほど打低の野球は魅力的なのか疑問です。MLBと比べて野球そのものに迫力が欠けているのは明らかで、それはフィジカルや技術だけで解決できる問題ではありません」
今季の12球団総本塁打数は975本。昨季から275本も減っただけでなく、1000本を切ったのはあの「統一球問題」で揺れた2011、2012年以来。
ドジャース・大谷翔平の本塁打量産で沸いたMLBとの差を感じずにはいられない。ただ、「飛ばないボール」で本塁打数が減るのは道理として、3割打者まで減るのはなぜなのか?
「打者は『飛ばないな』と思った時点で、少し反動をつけたり、力んでしまったり、本来のスイングができなくなるんです。その上、飛距離が落ちれば、以前なら観客席にまで飛んでいたファウルボールを捕球される機会も増加。
さらに、外野の頭を越えにくいため、外野手はより前進守備になり、ヒットゾーンも減少。打球速度も遅くなるため、野手が打球に追いつく場面が増えますし、球界全体で打率が下がるのも納得です」
一方、防御率1点台投手はセ・パで6人も誕生。髙橋宏斗(中日)はセ・リーグ今世紀最高の1.38をマークした。
「得点が入りにくくなれば、防御率が全体として下がるのは当然です。だからといって、勝ち星が増えやすくなるわけではないですし、防御率2点台なのに負け越してしまう投手も出てきます。果たして、それが健全な野球でしょうか。
試合時間短縮のための『飛ばないボール』という説もありますが、イニング間の不要な演出をやめるなど、先にやるべきことはもっとあります」
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。