渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
世の男たちから「セカンドカーとして欲しい!」という声が止まらないのが、スズキ自慢の軽トラの特別仕様車。その実力はどうよ? 公道試乗で徹底チェックしたカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する!!
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――近年はEC(ネット通販)市場の拡大などもあり、街中で配送に使用されている軽商用車を頻繁に見かけます。
渡辺 現在、軽商用車の販売台数は、商用車全体の半数を占めています。そして軽商用車の約40%が軽トラック(以下、軽トラ)です。
――そんな働くクルマの代名詞ともいえる軽トラに〝革命カー〟が登場して話題をかっさらっているらしいですね?
渡辺 スズキの軽トラ、スーパーキャリイの特別仕様車Xリミテッドのことですね。
――どういうクルマですか?
渡辺 キャリイは歴史と伝統を誇る軽トラです。初代モデルとなるスズキライトキャリイは1961年にデビュー。現行型は11代目で13年に登場しました。18年には派生モデルのスーパーキャリイが加わり、Xリミテッドは昨年追加された特別仕様車で、今年4月に改良を受けています。
――普通のキャリイとスーパーキャリイは何が違うの?
渡辺 外観が個性的で、乗員の快適性も改善され、積載性も良好です。
――そんなスーパーキャリイの販売状況は?
渡辺 販売はすこぶる絶好調です。キャリイとスーパーキャリイを合計すると、23年度に約5万7500台が届け出されました。このうちの約20%をスーパーキャリイが占めています。
――今回試乗した特別仕様車のXリミテッドは、スズキの若い女性社員ふたりがデザインを担当したそうですね?
渡辺 彼女たちは商用車の経験が浅いため、まず足を使ってユーザーの声を集めた。すると、ユーザーの多くが、軽トラであるキャリイを乗用車のように買い物などにも使用していることがわかった。
――ほお!
渡辺 ボディが小さくて小回りの利く軽トラは、狭いあぜ道を走る農家の皆さんに重宝されてきたクルマです。ただし、農地というのは公共交通機関を利用しにくい地域にある。そのため軽トラを日常的な〝足〟として使うわけです。
――なるほど。
渡辺 しかも、最近の軽トラは農業に従事する若い女性も重要な顧客になっている。そこでスーパーキャリイXリミテッドは、デニムブルーやクールカーキなどシャレたボディカラーも用意している。
――つまり、普通のキャリイより居住空間の広いスーパーキャリイをベースに、遊びや趣味にも使える楽しい軽トラに仕上げたのが、今回試乗した特別仕様車のXリミテッドであると。ズバリ、試乗した率直な感想は?
渡辺 視界も良好で、狭い裏道や駐車場でも抜群に運転しやすく楽しい。日常的な足に使われるのも納得できます。特に驚いたのは今回試乗した5速マニュアルトランスミッションに採用された4WDです。これはスゴかった。
――具体的に言うと?
渡辺 ジムニーのような悪路向けSUVと同様の副変速機を装着しているんです。しかも、後輪のデフロック(タイヤが空転したときの駆動力不足を解消する機能)も標準装着されているので悪路走破力が非常に高い。
――4WDは値が張る?
渡辺 2WDと比べて約15万円の上乗せに抑えており、お買い得だと思います。
――4WDモデルはアウトドアレジャーの頼もしい相棒になると。短所は一切ない?
渡辺 軽トラですからどうしても乗り心地は硬く、ホイールベース(前輪軸と後輪軸との距離を表すもの)が短いため、前後方向にも揺すられやすい。また、エンジンが前席の下にあるので騒音も大きい。初めて軽トラを購入する人は必ず試乗してください!
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員