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『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎。彼のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。
第4回は、濱田さんがどのように連載を執筆しているのかについて。
* * *
皆さんこんにちは。濱田祐太郎です。今回は、目の見えない僕がどうやってこの連載の文章を書いているのかを紹介します。
実は周りの人からもよく「濱田って目が見えてない状態でどうやってSNSに投稿してるの?」とか「文章はどうやって書いてるの?」って聞かれるんですよ。
答えは単純なんですけど、僕はスマホの音声入力って機能を使って文章を書いているんです。
どんな機能かというと、この音声入力の機能をオンにしてスマホに向かって声を出すと、マイクがその声を認識して文字にしてくれるわけです。
例えば、スマホに向かって「井の頭公園でずぶ濡れの野良犬が交尾をしてるぞ」と言えば、その言葉がそのまま入力スペースに文字として入力されるんです。便利でしょう?
もちろん今の言葉も声に出して入力しました。まあ僕は見えないんで、公園で野良犬が交尾していてもわからないんですけどね。
ただ、もちろんいつも完璧に文章が書けるわけではありません。マイクの調子が悪いときや、寝起きではっきり声が出てないときだと、正しく認識してくれず、間違った文字が入力されることも多いんです。
実際にあった僕のLINEの入力ミスをいくつか紹介しますと、あるとき、お笑いが好きだという知り合いに「劇場にお笑いライブ見に行ったことある?」と聞こうと音声入力を使ったら、「劇場にお祓いライブ見に行ったことある?」って入力されてしまいました。
どんなライブやねんってなりますよね。あしきものを祓う儀式を劇場でライブにするなよって思いました。
まあ、本当に「お祓いライブ」なんてものがあったら面白そうなんで、目が見えなくても見に行きたいですけどね。
ほかにも、僕が百貨店でゼリーを買った話をしていたときに、相手になんのゼリーを買ったか聞かれたので、「白桃ゼリー」と言ったら「格闘ゼリー」って入力されたことがあります。
そんなゼリーないわってなりますよね。何その、打撃をしてくるぷるぷるの塊。食べようとしたら僕のことを投げ飛ばしたりするんでしょ。そんなの食べるのにひと苦労ですよ。
極めつきは、あるとき風邪をひいてしまって、それが治りかけのときに、「風邪気味だったから体だるかったわ」と相手に伝えようとしたら、「化石になったから体だるかったわ」って入力されたんですよ。
どんな状況やねんってなりますよね。スマホのマイク、聞き取れてなさすぎるでしょ。
化石になったから体がだるい? 確かに、化石になったら体はだるくなるかもしれないですけど。
「風邪気味だった」と「化石になった」は固い韻を踏んでるとはいえ、もうちょっと集中して聞き取ってくれよって思いましたね。
一番情けなかったのは、何回「お疲れさま」ってスマホに向かって言っても、なんの文字も入力されなかったときですね。
めちゃくちゃ腹が立ったんですけど、シンプルに音声入力がオフになっていただけでした。
とまあ、こんな感じで僕は悪戦苦闘しながら文章を書いています。
さらに技術が進歩して、頭で思い浮かべるだけで文字が入力されるようになったりしたら、もっと楽に文章が書けるんですけどね。
ただ、そうなったら僕の入力スペースが大量のエロいワードで埋め尽くされてしまって、誰にもメッセージを送れなくなりそうです。
●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】