山下メロやました・めろ
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、いよいよ冬眠を控えたクマに遭遇する危険度が増す時期にさしかかってきました。北海道ではリアルな熊のイラストを使った「熊出没注意」という、注意喚起の看板を思わせる商品が今も有名ですが、平成が始まる頃にはファンシーなタッチの注意喚起パロディ商品「くまがでるぞー」があったことをご存じでしょうか。
1980年代から90年代にかけて全国の観光地で売られた子供向け雑貨土産の総称である「ファンシー絵みやげ」。その中でも特に北海道全域で広く売られたのがこの「くまがでるぞー」シリーズなのです。
三毛別羆事件を例に挙げるまでもなく、ヒグマとの遭遇は人命に関わる事案なわけですが、そこに「熊出没注意」というシリアスさでなく「くまがでるぞー」という、ユルい注意喚起。まさにバブルの頃の軽いノリが如実に表れている商品といえるでしょう。
そしてこのシリーズで重要なサブキャラクターがキタキツネ。北海道で、ひいてはファンシー絵みやげ界では一番メジャーな動物ですが、ここでは「危」という札を持っていたり、公衆電話から緊急通報していたりするイラストで描かれており、かなり重要な役割を担っています。何しろここには人間は登場せず、ヒグマに出会っておびえているのはキタキツネなのです。
ブラキストン線たる津軽海峡を越えた北の大地の固有種の夢の競演。「DANGER ZONE HOKKAIDO」と書かれていて、北海道の〝試される大地〟感もしっかり演出。
そして、キタキツネ、ウシ(乳牛)、ヒグマの3体を同じサイズに描いて仲良く並べたイラストのお土産が多い中、ヒグマの危険性を示唆しつつ、大きさや関係性を描きストーリー性を感じさせる「くまがでるぞー」はシリーズ化されるのも納得の名作なのです。
現地のファンシー絵みやげは減少していますが、今もときどき見つかる「くまでる」グッズを北海道で探してみましょう。熊鈴をお忘れなく。
1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。