干支で開運"吉駅"鉄道旅シリーズ!「馬」の字がつく駅を市川紗椰流が巡る

吉方位ならぬ、吉駅で!

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「午×鉄道」について語る。

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明けましておめでとうございます。

新年1発目は毎年恒例! 干支(えと)にちなんだ、「勝手に〝吉駅〟」シリーズ! 干支が午(うま)へと巡る2026年、せっかくだから1月は「馬」の字が入った駅を巡って開運を狙おう!(駅名の由来は市川調べ。諸説ありますがご容赦ください)

まずは江戸の商魂が今も漂うJR総武線快速の「馬喰町(ばくろちょう)駅」(東京都)へ。

地上に出れば、馬の仲買人たちが行き交った江戸の喧騒(けんそう)がふっと脳裏に再生されます。駅周辺は布問屋や問屋街の残り香が濃い。かつてここで扱われたのは馬、今は布。商うものは変われど、商人のきっぷは受け継がれているようで、午年最初の馬詣でとして縁起がいいですね。

対照的に、地名の由来がミステリアスなのが都営浅草線の「馬込(まごめ)駅」(東京都)。

〝馬〟が〝込む〟こととはまったく無関係で、真菰(まこも)の湿地帯が「まごめ」になり、それに馬の字が当てられたというのだから、人間の漢字センスは時に大胆だ。都営浅草線の地味さも手伝って、駅に降りると当て字の小宇宙に迷い込んだような気になります。午年だからこそ、こうした「馬っぽいけど馬じゃない」駅にも敬意を払おう。

本気で馬に寄り添いたいなら、京浜急行の「馬堀(まぼり)海岸駅」(神奈川県)がオススメです。

古代の官営牧場の跡とされ、馬を放つ場所が語源と聞くと、車窓に広がる海の青さも、どこか遠い牧歌の余韻を帯びる。波のリズムとひづめのリズムを重ねながら、駅前で潮風を吸い込む。午年は、ここで一度深呼吸しておくのがいいかも。

伝承がそのまま駅名になった、JR常磐線などが通る「馬橋(まばし)駅」(千葉県)やJR小海線の「馬流(まながし)駅」(長野県)も捨て難い。

馬橋は、「大雨のたびに流されていた橋の形を、馬の鞍くらの形にしたら流されなくなった」のが由来。一方の馬流は、「洪水で馬が流れた」というショッキングな由来がありながら、どちらも駅の雰囲気はのどか。特に馬流駅は、八ヶ岳の裾野を走る高原鉄道の静けさに包まれて、伝説のハードさと実際の駅の優しさの落差で笑ってしまいます。

歴史ロマンを感じるなら、北国街道の馬替え場が由来の、北陸鉄道石川線の「馬替(まがえ)駅」(石川県)へ。降りると、旅籠(はたご)のにおいや大名行列のざわめきが風に混じっているようです。こういう街道の痕跡を駅名が丸ごと保存している場所に弱いの、私だけでしょうか。午年の自分は、馬を乗り換えるように気分を乗り換えていきたいです。

九州に渡れば、軍事用語の「出丸」が転じた福岡市地下鉄箱崎線の「馬出(まいだし)九大病院前駅」(福岡県)、ヤマト王権の古代直轄地を思わせる西日本鉄道甘木(あまぎ)線の「馬田(まだ)駅」(福岡県)が待っています。馬田の素朴なホームに立っていると、自分まで古墳の一部になったような気がしてきます。

馬が実際に走っていた土地もあれば、馬は関係ない駅も。その混沌(こんとん)こそが地名の魅力で、鉄道旅の醍醐味(だいごみ)! 馬の残像に導かれて、まだ知らない日本へ運ばれていくような旅はどうかしら。吉駅巡り、楽しみ馬(ま)しょー。では、今年もよろしくお願いします。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。2026年はたくさん旅をしたい。公式Instagram【@sayaichikawa.official】

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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