高木 豊が新人王レースを展望!! セは2人の左腕、パは投打5人が有力

取材・文/浜田哲男 写真/産経新聞社

阪神のルーキー左腕・伊原は先発、リリーフでも活躍。キレのある真っすぐとスライダーが武器阪神のルーキー左腕・伊原は先発、リリーフでも活躍。キレのある真っすぐとスライダーが武器

プロ野球はシーズン終盤に突入し、チームの順位だけでなく、個人成績、そして新人王レースの行方も気になるところだ。ルーキーを含む有資格者たちの中で、新人王争いをリードしているのはどんな選手なのか。

かつて横浜大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)などで活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木 豊氏に注目選手について聞いた。

* * *

――まず、セ・リーグの新人王レースをリードしていると思う選手は?

高木 豊(以下、高木) セ・リーグは不作なんですよね。現在、新人王の可能性がある選手を挙げるとすれば、ドラ1ルーキーの左腕・伊原陵人(阪神)。先発、リリーフの両方で起用されていますけど、社会人出身(NTT西日本)ということもあってか、落ち着いて投げられています。

負けが先行しているのが気になりますが(5勝6敗、8月25日時点。以下同)、チームが優勝する確率が高いので、8勝くらいすればチャンスはあると思います。優勝チームの1勝の価値は、ほかのチームの選手たちよりもクローズアップされますからね。

同じくルーキーで、ドラ3左腕の荘司宏太(ヤクルト)も可能性があると思います。シーズン前半でチームのリリーフ陣が崩壊する中、ひとりで支えたと言っても過言ではありません。最近はほかのリリーフも良くなってきていますが、それまでは荘司に頼る部分がすごく大きかったですし、成績も文句なしです(33試合登板、1勝1敗19ホールド、防御率1.34)。

ただ、リリーフなので目立たないんですよ。過去の新人王を見ても先発ピッチャーのほうが有利です。記者投票であることを考えても、やっぱり目立たないといけません。

――荘司投手のピッチングはどう見ていますか?

高木 彼のチェンジアップは特殊です。ボールがよく抜けますし、投げた瞬間から糸で引っ張られているみたいな抜け方をしていて、バッターも苦労していますね。非常に面白いピッチャーだなと感じています。

広島のドラ3ルーキー右腕・岡本 駿も登板数が多い(33試合登板、1勝1敗1ホールド、防御率2.64)ですが、荘司に比べて重要な場面で投げているわけではないので、価値ある登板の多さを考えると、やはり荘司に分があります。セ・リーグは伊原がリードしていて、対抗馬として荘司という感じですね。

――続いてパ・リーグですが、まず投手についてはいかがですか?

高木 先発ピッチャーでいえば、今シーズンに飛躍した達 孝太(日本ハム4年目)と松本 晴(ソフトバンク3年目)の2人が候補だと思います。リリーフだと、山田陽翔(西武3年目)。この中で話題性が高いのは、達じゃないですかね。

7月31日のソフトバンク戦でプロ入り初の負けを喫しましたが、それまで負けていなかったわけですから(11試合登板、6勝1敗、防御率2.05)。彼は真っすぐに力があるのと、マウンドさばきもいい。若手とは思えないほど堂々としています。

ただ、松本 晴も勝ち星は同じですよね(24試合登板、6勝3敗、防御率2.55)。スライダーが武器で、真っすぐは140キロ台中盤くらいなんですが、打者が差し込まれることも多いです。ソフトバンクも優勝の可能性がありますから、日本ハムと同様に優勝すれば印象が良くなりますし、対抗馬になると思います。

――野手に関してはいかがですか?

高木 開幕から大卒ルーキーの3人、宗山 塁(楽天1位)、渡部聖弥(西武2位)、西川史礁(ロッテ1位)に注目しています。

その中でも宗山は大本命だったのですが、スタメン出場が減ってきたこともあって難しくなったかなと。その点では、シーズンが進むにつれてスタメン出場が続いている渡部や西川のほうが、現在はリードしていると思います。

――ロッテの西川選手(75試合出場、打率.292、1本塁打、25打点)は、7、8月と好調を維持していますね。

高木 規定打席に届くかどうかは微妙なラインだと思いますが、投高打低が顕著な状況で、仮にルーキーが3割をマークして首位打者になるようなことがあれば、とんでもないことですよ。ロッテの首脳陣は、西川をできる限り打席に立たせるでしょうね。

彼は思い切りがいい。失敗を恐れないタイプのバッターで、結果よりもバットを振ることを優先していますが、それはバッターとして一番大事なことなんです。乗っていくと止まらなそうなところも含めて、森下翔太(阪神)タイプかもしれません。

――西川選手の長打力はどう見ていますか?

高木 もっと慣れてきたら20本塁打くらい打てる素質は感じます。まだ1本だけしか打てていないのは、思い切りが良くて、どんなボールにも手を出してしまうからでしょう。

ホームランバッターはある程度、球種を絞って打ちにいきます。長打という点では、そこがもったいない部分かなと。バッティングのセンスは高いのですが、アピールするためにはホームランが必要だということです。

ロッテでもうひとり、忘れてはいけないのが2年目の寺地隆成です。キャッチャーというだけでも大変なところを、2番や4番を打ったり、DHでも出たり......。それだけ寺地に魅力があるのだと思いますが、ロッテは20歳の選手に〝おんぶにだっこ〟じゃないですか。それを考えれば、寺地の活躍も見逃せません。

――パ・リーグは、日本ハムの達投手とソフトバンクの松本投手、野手では西武の渡部選手、ロッテの西川選手と寺地選手が新人王の有力候補になりそうですね。

高木 ただ、みんな成績としてはまだまだ不十分ですし、ここからどういう数字を残していけるかで変わってくると思います。パ・リーグは候補が多いので新人王争いが激しくなりそうです。

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