【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第46回 CLデビュー&代表のアメリカ遠征で得た学び

構成・文/高橋史門 写真/アフロ

CLデビュー&代表のアメリカ遠征で得た学び

オランダの名門アヤックスで、すでに守備の要として君臨。念願だったUEFAチャンピオンズリーグでのデビューも果たした板倉 滉。9月の日本代表アメリカ遠征で見えてきた課題も含めて、ポジティブにとらえる彼の心境とは。

■CL経験豊富な代表仲間の言葉

9月18日(以下すべて日本時間)、僕はアヤックスの一員としてUEFAチャンピオンズリーグ(以下、CL)のリーグ・フェーズ第1節でインテルをホームに迎え、念願のCLデビューを果たした。

かねて出たいというよりも出なくてはいけない大会だと思っていた。日本代表での遠征でも、会話の中で「今度はこのクラブと戦うんだよね」と、常に話題に上る。

CL出場歴が豊富な(MF南野)拓実君からは「シーズンを通して過密日程の中、リーグ戦とCLを戦い抜く経験をするかしないかでは大きな差が出る」と聞かされてきた。選手としてさらにパワーアップするためにも、CLは必要不可欠だった。

本拠地ヨハン・クライフ・アレナの雰囲気はリーグ戦とはまた違った熱気を帯びていた。入場してピッチに横一列で並んだとき、高らかに鳴り響くアンセムを聞いて「おお、これだ!」と、感無量になった。相手は昨季準優勝の名門クラブ。でも、変に力んだりすることはなかった。

2019年、コパ・アメリカ(南米選手権)ウルグアイ戦でのA代表デビューのように緊張することもなく、人生初の22年W杯・ドイツ戦のようにフワフワした感じもなかった。僕もいろいろな経験をしてきたからか、いつもどおりのリズムで試合に入ることができた。

チーム全体としても試合への入りは悪くなかった。積極的に前から嵌めにいって、いい状態でボールを奪える回数も多く、ビッグチャンスもつくれた。DF陣は、相手の2トップ・エスポジトとテュラムに2対2の状況をずっとつくられて、ファールで止めざるをえない場面もあったけど、やられている感覚はなかった。

それでも、やはりインテルは勝つということを熟知しているチームだった。セットプレーから2得点され、結果は0-2で完封負け。

2ゴールを決めたのは、僕が昨季まで所属していたボルシアMGでかつて同僚だったテュラム。〝強い、巧い、速い〟の三拍子がそろった優秀な選手だったけど、久々に対峙したら、ボールの収め方や駆け引きの部分も含めて、さらに進化していた。彼はフランス代表としても頭角を現しているけど、これがCLでもまれている成果なのだと痛感させられた。

CLは、いわば強豪国の代表スタメンで固めたチーム同士の真剣勝負。簡単に勝てる試合なんてひとつもないし、アウェーゲームとなれば他国への移動などで格段に厳しくなるけど、そのぶん自分がどんどんタフになれるわけだから、うれしくて仕方がない。アヤックスに来て本当に良かったと思う。

■10月の南米との試合は絶好の機会

9月は日本代表でアメリカ遠征にも行った。メキシコ戦(7日、オークランド)では60分に右足首に痛みが生じて交代となったけど、全体的に見れば今の僕たちがどのくらいの力で戦えるのか、いい物差しになったと思う。

やっぱりメキシコをはじめとする中南米の国々はアジアとはまったく違う。球際やデュエルなど、抜群の強さを誇る。

でも、今回の僕らは力負けしていなかった。立ち上がりから前線の選手たちが〝攻撃的守備〟で積極的にプレッシャーをかけてボールを奪いに行き、ショートカウンターで何度かチャンスもつくれていた。

僕らDFも引いて守るだけじゃなく、隙あらば攻撃参加を行なった。局面でちゃんと自分たちのボールにするなど、細かい部分でも絶対に負けないことが実践できた。普段、ほとんどのメンバーが海外で戦っていることによる強度がプラスとして表れたのだ。収穫は確かにあった。

ただ、決めるべきところでしっかりとゴールを決めなければいけない。これは僕らが反省すべき点だ。

それと、僕は出場していないけれど、アメリカ戦(10日、コロンバス)の敗北(0-2)から得られた反省点は、さらなるチーム内でのコミュニケーションの強化。オークランドからコロンバスへの移動は空路で約4時間半、時差も+3時間、試合2日前の時点でグラウンドにすら出られないというカツカツの状況だった。

それでも、前日練習で整理して、詰めるべきところを詰めていかないと、W杯でもアメリカ戦のような負け方をしてしまうだろう。今の段階でそれに気づけたことはポジティブにとらえたい。

10月は南米の強豪国、ブラジルやパラグアイと対戦できる。絶好の機会だ。セッティングしてくれたJFAのスタッフには本当に感謝したい。

22年6月のブラジル戦、僕はCBで出場したが、ネイマールのPKにより0-1で敗北。でも、あの頃と比べて着実に経験と成長を積み重ねてきている。テストだからといって結果にこだわらないのではなく、しっかり臨みたい。

板倉 滉

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  • 板倉 滉

    板倉 滉

    いたくら・こう

    1997年1月27日生まれ、神奈川県出身。日本代表CB。川崎Fでプロ入り、2019年に1シーズン在籍したベガルタ仙台からイングランド1部マンチェスター・Cへ移籍。その後、オランダ1部フローニンゲン、ドイツ2部シャルケを経て、現在はドイツ1部のボルシアMGに在籍。

  • 高橋史門

    高橋史門

    たかはし・しもん

    エディター&ライター。1972年、福島県生まれ。日本大学在学中に、『思想の科学』にてコラムを書きはじめる。卒業後、『Boon』(祥伝社)や『relax』、『POPEYE』(マガジンハウス)などでエディター兼スタイリストとして活動。1990年代のヴィンテージブームを手掛ける。2003年より、『週刊プレイボーイ』や『週刊ヤングジャンプ』のグラビア編集、サッカー専門誌のライターに。現在は、編集記者のかたわら、タレントの育成や俳優の仕事も展開中。主な著作に『松井大輔 D-VISIONS』(集英社)、『井関かおりSTYLE BOOK~5年先まで役立つ着まわし~』(エムオンエンタテインメント※企画・プロデュース)などがある。

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