日野秀規ひの・ひでき
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
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総裁に就任したしょっぱなから、株価は大暴落。相場が不安定な今こそ、投資格言「国策に売りなし」に従え! 石破首相の政策で恩恵を受けそうな銘柄を一挙紹介!
石破茂首相は10月1日の就任を待たず、株式市場からのキツい洗礼を浴びた。9月27日に自民党総裁選に勝利するも、週末を挟んだ月曜の日経平均は一時、4.8%も急落。国内外の投資家は、石破氏の持論とされてきた「金利上昇・財政再建」路線への強い懸念を示した。
とはいえ、党内基盤の弱い石破首相がなんでもできるわけではないという声もある。総裁選後の記者会見で、石破氏が岸田政権の経済政策を継承すると発言したことがその根拠だ。実際のところ、直近の下落はアベノミクス再来をうたった高市氏の当選を先走って織り込んだ投資家が狼狽売りをしたのが原因とされる。
ここで思い出されるのは「国策に売りなし」という株式市場の格言。改めて、「石破時代に勝てる投資」をその目玉政策から考えていくとしよう。
その前に、まずは簡単に岸田前政権の発足時をおさらいしておこう。「新しい資本主義」の下で格差縮小と経済成長の両立がうたわれたが、株式市場を力強く牽引するテーマにはつながらなかった。
ほかの経済政策は「国土強靱化」など従来の政権からの継承が主でインパクトに欠け、さらに金融所得課税の強化を口走ったことで株式市場のムードは沈滞。発足から1年半もの間、日経平均はジリジリと安値が続いた。
実は歴代7位という株高を演出した岸田政権の滑り出しは、失望から始まっていたのだ。その意味では、今後の石破氏の動き次第では、前政権以上の大逆転が起きる可能性もある。
そこで、50年以上日本株を見続けている"東証の生き字引"こと株式アナリストの平野憲一氏にアドバイスを聞いた。
「石破首相はすでに安倍元首相から菅、岸田の各政権に引き継がれてきた『デフレ脱却』という使命を確実に果たすことを表明しています。
インフレ基調を定着させるためには、金利の急上昇を容認することと、拙速な財政再建をしてはならないということは、あまり経済に興味がないといわれる石破氏でももちろん承知しているはず。総裁選の勝利を受けた株式市場からのメッセージも強烈で、経済や相場を壊すようなことはまずしないと考えてよいでしょう」
現在、日本銀行が進めている緩やかな金利上昇は、預金金利上昇を通じて人々の生活感を改善し、消費の盛り上げにつながる可能性もある。
石破政権がよけいな口を出さなければ、株式市場は平静を取り戻し、遠からず上昇基調に戻るというのが平野氏の見立てだ。全体観として、当面は株式投資には悪くない環境が続くと考えてよさそうだ。
では、今後注目されそうな個別株のテーマは? 平野氏が続ける。
「石破首相といえば、最初に想起されるのが防衛の専門家であるということ。軍事オタクといわれるほどの知識を持つことに加え、防衛庁長官、防衛大臣を務めた経験もあります。不安定な東アジア情勢が続いていることもあり、防衛関連の支出増は堅いでしょう。
防衛関連といえば三菱重工業などの巨大メーカーが注目されやすいのですが、投資妙味があるのは新明和工業。救護用の飛行艇や訓練支援機などの製造・整備を手がけています」
同社の株式時価総額は約1000億円で、三菱重工業のおよそ77分の1に過ぎない。ただそれは株式投資においてはプラスに変わる。仮に今後防衛が株式市場のテーマとなって資金がなだれ込んだときに、時価総額が大きい銘柄は少々の資金流入ではなかなか勢いがつかない一方で、時価総額が小さい銘柄は大幅な株価急騰が期待できるからだ。
「現状の株価はPBR(企業が保有する資産と株価の比率で、1倍切りが割安度の目安となる)が0.88倍と明らかに割安です。すでに株価は上がり始めていますが、PBR1倍の1620円までは堅いでしょう」
自民党総裁選で注目を集めたのが、党員票が都市部の高市氏、地方の石破氏と明確に分かれたこと。かねて地方創生を掲げてきたことに加え、「防災庁」創設をスローガンとしていることから、土木・建設関連も恩恵が大きいと平野氏は語る。
「全国的に土木工事の需要が盛り上がれば、その追い風を最も強く受けるのは、スーパーゼネコンの一角である大林組です。土木の実績を積み重ねており、業績も2022年から上昇トレンドに乗っています。4.4%の高配当利回りでありながら、今期も3年連続の増配を見込む優良銘柄。株価は現在1800円台ですが、来年前半までに2400円到達を期待します」
そして最後に、忘れてはいけないのが「デフレ脱却」銘柄だ。総裁選をリードしていた高市氏が日銀の利上げ反対を表明していたことで、売られていた銀行株の復活は大いに期待できるという。
「本来、無用な引き締めをせず穏当な経済運営を続ければ、金利はおのずと緩やかに上がっていきます。そうなれば、銀行株の中でも特に収益性の高い三井住友フィナンシャルグループの出番です」
旗艦である三井住友銀行の「Oliveアカウント」をベースに、証券・カード会社との連携を深化。三大金融グループの中で最も勢いに乗っている。
「3.5%の高配当利回りで株価はまだまだ割安でありながら、連続最高益・連続増配を更新中です。株価はPBR1倍水準の3800円はもちろん、4000円台まで突き抜けてくれることを期待します」
平野氏が紹介した銘柄は表にまとめたので参考にしてほしい。最低購入金額が50万円を超える銘柄もあるが、ネット証券各社が100株単位でなく1株単位から購入できるサービスを用意しているので、利用するのもよいだろう。
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
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