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盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎さん
『R-1ぐらんぷり』第16代王者にして、盲目のピン芸人・濱田祐太郎。彼のコラムが週刊プレイボーイで好評連載中! その名も「盲目のお笑い芸人・濱田祐太郎の『死角からの一撃』」。
第6回は、濱田さんの最近の地方ロケについて。
* * *
お笑い芸人をやっていると、ありがたいことにいろんな場所に仕事で行けます。今回は、僕が茨城県に行ったときの話をしようと思います。
遊覧船に乗ってカモメに襲撃されたり、レンコン農家にお邪魔したり、いろんなことがあったんです。
そもそもどういう企画だったかというと、目の見えない僕が茨城県の霞ケ浦を満喫してみるという取材で、地元の女性ライターさんが観光スポットを案内してくれたんですけど、まあこの人が天然で面白かったんです。
まず最初に、霞ヶ浦で遊覧船に乗りました。その女性は茨城の方言なのか、かわいらしいしゃべり方で「ここのカモメは人に慣れていて頭もいいんです。だから手に餌を乗せてあげると、きれいに餌だけ食べるんですよ」と教えてくれて、僕もやることになったんです。
そしたら、餌だけじゃなく思いっきり指も噛まれました。何がきれいに餌だけ食べるや。カモメたちにめちゃめちゃ手をつつかれとるがな。
次に地元のスイーツを食べましょうということになって、ハンバーガーくらいの大きさのシュークリームを食べたんですけど、その女性が「ひと口サイズで食べやすいですね」って言ったんです。どこがひと口サイズやねん。めちゃめちゃ大きいわ。
天然だと思いませんか? でも、僕は目が見えないのでわかりません。もしかしたらその女性はハンバーガーサイズのシュークリームを、実際にひと口で食べていたのかもしれませんから。
そして最後に、レンコン農家にお邪魔して、レンコン掘りを体験しました。まさかレンコン掘りがあんなに大変なものだと思いませんでしたよ。
脇腹くらいの高さまで水が張られた畑に入って、土をどかしながらレンコンを探す。文章にすると簡単ですけど、服の中に泥水が入らないように隙間のない防護服みたいなのを着たり、水中の重い土をホースの水流でどかしたり。手間暇がかかるものなんだなあと驚きました。
芋掘りみたいな感覚で手軽にできるのかと思ってた自分に、生クリームキャノンをお見舞いしてやりたいですね。生クリームでもう体中ベタベタ。
なんなら〝農家ギャル〟みたいな言葉がはやってると聞いたこともあったから、ギャルが手取り足取り教えてくれるのかと思ってました。
「えっ、自分まじウケる。この後ホテル行こ」とか言われるんじゃないかと思ってた自分に、女巨人のしょんべんキャノンをお見舞いしてやりたいですね。生クリームが洗い流されてさっぱり。
実際にレンコン掘りをしてるときは、土に埋もれてレンコンがどこにあるかわからないので手探りで探します。
僕はすぐに見つけられたんですが、その女性ライターさんは「ここにもない。あれ? 全然見つからない」と苦戦していたので、「こっちにありますよ」と教えてあげたんです。
そしたら僕のほうに来て「ありました! レンコン見つかりました!」と、僕の右腕をつかんで周りに叫ぶわけです。ここまでくると天然というより、とんでもないエンターテイナーなのかと思えてきますよね。
「俺の右腕はレンコンちゃうわ!」とツッコみながら、内心「まさか全部わざとだったのか......?」と少しモヤモヤしました。
ただ、そんな疑念が吹き飛ぶくらい、農家のお父さんとお母さんが振る舞ってくれたレンコンの天ぷらがものすごくおいしかったです。貴重な体験ができたいい仕事だったなあ。
●濱田祐太郎(はまだ・ゆうたろう)
1989年生まれ、兵庫県神戸市出身。2013年より芸人として活動を開始し、『R-1ぐらんぷり2018』(フジテレビ)で優勝。関西の劇場を中心に舞台に立つほか、テレビやラジオなどでも活躍。公式X【@7LnFxg25Wdnv8K5】