
山下メロ
やました・めろ
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1981年生まれ、広島県出身、埼玉県加須市育ち。平成が終わる前に「平成レトロ」を提唱し、『マツコの知らない世界』ほかメディア出演多数。著書に『平成レトロの世界』『ファンシー絵みやげ大百科』がある。
記憶の扉のドアボーイ・山下メロです。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、オンラインでの商品購入において定番のウェブサイトといえばアマゾンです。ECサイトのスタンダードたるアマゾンにおいて、平成末期の2016(平成28)年に発売された「アマゾンダッシュボタン」を覚えていますでしょうか。令和になって間もない19年8月に終了してしまったダッシュボタンを振り返ります。
楕円形の小さな端末であるダッシュボタンは、ブランドロゴやパッケージデザインと丸いボタンで構成されていました。事前に設定すれば、ボタンを押すだけでアプリに情報が飛んで注文され、実際に商品が届くという仕組みになっています。
端末が小型で、ボタンはひとつの商品に対応したひとつだけというのがとてもわかりやすく、家の中の物をインターネットに接続して便利にする「IoT」のお手本のような商品でした。
ダッシュボタンが特に活躍するのが消耗品です。必ず決まった頻度で必要になるものには定期的に配送してくれるサービスがありますが、減ってきたタイミングで注文したいタイプのものには向きません。減ってきたタイミングで、後でPCから注文しようと思っても忘れてしまうこともあります。
わざわざブラウザやアプリを開くのは面倒です。食品のボタンなら冷蔵庫に、洗剤なら洗濯機に貼りつけておけば、気づいたその場でボタンを押して注文ができるのです。
ダッシュボタンは500円とお手頃で、初回注文時のキャッシュバックで実質無料でした。好きな商品のパッケージがそのままグッズになったようなものですので、キーホルダーのように持ち歩くこともできたのです。
しかし、その後PCやスマホのバーチャルボタンや、音声アシスタントAlexaによる注文が増えたことからダッシュボタンは終了してしまいました。
便利すぎる今こそ、あえてボタンを押して注文するという感覚が新鮮なものとして評価されるかもしれません。