渡辺陽一郎わたなべ・よういちろう
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
日本市場で発売開始となったジープのEV、アベンジャーが注目を集めている。ぶっちゃけ、実力はどうよ? つーわけで、カーライフジャーナリスト渡辺陽一郎氏が公道試乗し、その実力をチェックした!!
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渡辺 欧米自動車大手ステランティスの日本法人が9月26日にジープブランド初となるEV、アベンジャーを発売しました。ご覧のようにSUVタイプのモデルです。
――現在、SUVは世界的な売れ筋です。
渡辺 ただ、そもそもの話をすると、SUVというモデルは、悪路走破を目的に開発されたクルマなんです。
――悪路向けってトヨタのランドクルーザーや、スズキのジムニーみたいな感じ?
渡辺 そのさらに先輩カーとなるのが米ジープ。1941年にウイリスMBが生まれ、耐久性に優れたボディと四輪駆動により、第2次世界大戦では小さな軍用車として活躍しました。
――確かジープは日本で一世を風靡しましたよね?
渡辺 はい。ジープは90年代中盤に日本で大ヒットを記録しています。その原動力となったのが当時のジープチェロキー。ボディはコンパクト。水平基調の外観も抜群にカッコよく、アメ車では珍しく右ハンドル車も選べました。
――売れに売れた?
渡辺 実は当時、SUVのなかったホンダもジープを扱っていて、1年間に約1万4000台をマーク! ちなみにこの数字は今のジープブランド全体の国内販売総数を超えているんですよ。
――まさに鬼売れだったと。そして現在のジープはフィアットやシトロエンと同じステランティス傘下です。
渡辺 ステランティス傘下になったことで、品ぞろえは豊富になりました。ジープの伝統を受け継ぐ悪路向けSUVのラングラー、豪華なグランドチェロキー、ミドルサイズのコマンダー、コンパクトなレネゲードなどを用意。そこに加わったのが、今回試乗したジープ初のEV、アベンジャーになります。
――なるほど。実際にアベンジャーを見て驚いたのですが、けっこうコンパクトなクルマなんですね?
渡辺 ジープブランドでは最小で、国産SUVでいうと、トヨタ自慢のヤリスクロスと同等のサイズですね。ちなみに骨格や基本メカニズムは、以前試乗したフィアット600eと同じです。
――試乗してみてアベンジャーの走りはどうでした?
渡辺 水平基調のボディは視界が良く、最小回転半径も5.3mなので、とにかく運転がしやすい。パワー志向のEVの中には蹴飛ばされたように加速する車種もありますが、アベンジャーは違います。アクセル操作に対する反応は機敏ですが、上質に走ります。
――走行安定性などは?
渡辺 フィアット600eと違ってカーブを軽快に曲がるタイプのクルマではありませんが、直進安定性は優れています。乗り心地も重厚です。アベンジャーはEVである前に、ジープブランドの味をしっかり表現しています。操舵感も適度に緩く、リラックスして運転できます。
――居住性はどうです?
渡辺 前席は頭上に十分な空間があり、シートも腰をしっかり支えてくれる。後席は身長170㎝の大人4人が乗車したときに、乗員の膝先空間は握りコブシひとつ程度です。ホンダのヴェゼルやWR-Vなら、後席の膝先には握りコブシがふたつ半収まります。
――アベンジャーは、どんなユーザーが買うべき?
渡辺 EV特有の走りの迫力や面白さは乏しいですが、ゆったりしたジープの運転感覚や乗り心地を好むユーザーにはピッタリ。ボディはコンパクトで街中を運転しやすく、セカンドカーとしてもアリ。
――実際、アベンジャーを買っているのはどんな人?
渡辺 販売店によると、従来型ジープからの乗り替えもあるようですが、買い物などに使う2台目のクルマとして選ぶ人も多いとのこと。
――気になるお値段は?
渡辺 価格は580万円です。国の補助金が65万円なので、これを差し引くと515万円です。そうなるとライバル車の筆頭は日産リーフe+Gで、価格は583万4400円。つまり、アベンジャーは輸入EVですが、日本車並みに割安です!
カーライフジャーナリスト。自動車専門誌『月刊くるま選び』(アポロ出版)の編集長を10年務めた"クルマ購入の神様"&"令和のご意見番"。執筆媒体多数。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員