
坂本慎太郎
さかもと・しんたろう
坂本慎太郎の記事一覧
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
小売り、物流、金融・決済、リテールテックなどの子会社を持つ。「トライアル」は全国300店舗以上のうち、約4割が九州にある
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
昨年11月から東京への進出を加速させた、九州発のディスカウントスーパー「トライアル」。投資先としてのジャッジも兼ねて、昨年12月にオープンした「トライアルGO 中野中央5丁目店」に行ってきた!
助手 去年の年末にできたこのスーパー、ロースかつ重が激安なのに妙にうまいんです。かつおだしが利いた味で、レンチンしても肉が軟らかくて。今ハマってます。
坂本 おっ、噂の 「トライアルGO」じゃないですか。私も気になってたんです。入ってみましょう。間口はけっこう狭くて、都市部でよく見るイオン系列の小型スーパー「まいばすけっと」に近いイメージかな。ただ、入り口の見せ方が違うね。一番目立つ場所に弁当や惣菜を山積みにしている。サイネージで猛プッシュしているロースかつ重は400円切るのか。確かに安いなぁ。卵サンドやすしも大きい割に安いし。
助手 言われてみれば、惣菜の圧がすごいですね。
坂本 そこがこの店の一番わかりやすい特徴だろうね。飲み物やレトルトは普通のスーパー並みで、生鮮品にいたってはほぼ扱っていません。だけど惣菜は品数・値段共にかなり攻めている。店ごとの違いもあるだろうけど、都市部で毎日使ってもらうためにまずは「すぐ食べられる安い飯」を前面に出しているんだと思います。まいばすけっとは店舗数の多さが武器ですが惣菜の評判はイマイチ。この店は惣菜の味と価格で隙間を突こうとしているんだろうね。
助手 かなり振り切ったお店ですよね。上場してたら面白いのに。
坂本 してますよ。トライアルHDという企業で、もともとは九州が地盤のディスカウントスーパーです。安さで来店頻度を増やして、惣菜やプライベートブランド(PB)で買い上げ数や利益率を高め、さらにはテクノロジーを使って人件費や店の運営負担を抑えるというモデルで成長してきました。
助手 スーパーでテクノロジー?
坂本 実は、同社の祖業はITなんです。だからテクノロジーに強いし、自社でシステム開発もできる。決済一体型レジカートを自社開発したりもしています。
助手 ITから小売りにかじを切るとは。
坂本 その独自の強みで成長して2024年に上場し、昨年には首都圏に強い大手スーパー・西友を約3800億円で買収するまでになりました。買収前年度の売上高が7200億円ほどだったトライアルにとっては、失敗は命取りになるような大勝負です。
助手 なんでそんな大きな賭けを?
坂本 これまで手薄だった首都圏の店舗や物流網を一気に手に入れられるからね。西友の既存店舗を惣菜製造や商品配送の拠点として利用すれば、狭小立地ばかりの都市部でも小型店舗を素早く集中出店できる。調理スペースがないトライアルGOに大量に並ぶ出来たての惣菜は、近所の西友から運んでいるものです。一方、西友にトライアルで実証済みのテクノロジーを導入すれば、店舗運営費などコスト削減もできる。
助手 なるほど!
坂本 ソフト面でもメリットは大きい。トライアルはPB商品に力を入れているけど、西友も「みなさまのお墨付き」シリーズなどPBが強いからね。それぞれの人気商品を相互に導入すれば当然、店舗の魅力も増すでしょ。実際、西友をトライアル流に改装した花小金井店は、2ヵ月で売り上げが42%増えたとか。
助手 そう聞くと投資したくなるんですが、PERが900倍超って、めったにないほど割高ですよね?
坂本 買収費用の影響で見え方が特殊なんです。全国規模の一大チェーンに成長することを期待して、長期で狙う価値は十分あると思います。
今週の実験結果
PERが900倍超ですが、これは西友の買収による影響。気にしすぎないように!