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東京都品川区で開催された報道陣向けの技術戦略説明会で、スズキの今後の方針を説明する鈴木俊宏社長
世界で、日本で、スズキの勢いがもうどうにも止まらない!! 軽の老舗は、なぜここまで強くなったのか? そこで週プレ自動車班は、9月25日に東京都内で開催されたスズキの報道陣向け技術戦略説明会に突撃取材。最新技術とクルマづくりの思想から、今のスズキの強さを徹底解剖する!
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軽の老舗が、いつの間にかホンダを抜いてトヨタに次ぐ存在になっていた!
スズキと聞けば、軽自動車やコンパクトカーを思い浮かべる人も多いだろう。ところが2026年上半期(1~6月)、日本メーカーの世界販売でトヨタに次ぐ2位となった。世界販売は前年同期比10.3%増の179万9736台をマーク。上半期として過去最高を更新した。
さらに驚くのが、輸入車でも首位になったことだ。2026年上半期、スズキはメルセデス・ベンツを上回って輸入車ブランド首位に立った。その数字を押し上げたのが、インド生産の5ドアSUV、ジムニー ノマドだ。
インド製の5ドア・ジムニー ノマド。2025年1月30日の注文受け付け開始後、4日で5万台もの注文が殺到。伝説と化した爆売れカー
では、なぜスズキはこれほど強いのか。自動車ジャーナリストの桃田健史氏は、その理由をこう分析する。
「自社の強みと弱みを理解した上で、世界戦略を立てているからですね。特にインド市場への徹底したシフトが奏功しています。現地への設備投資にも積極的です」
スズキは「マルチパスウェイ(全方位戦略)」を掲げ、国や地域のニーズに合わせた車種をそろえる
スズキはインドでの四輪事業を全社戦略の中心に据え、日本、欧州、インド以外のアジアでは、四輪だけでなく二輪やマリンも含め、それぞれの市場に合わせた事業を展開している。その原点が1980年代のインド進出だった。
「当時のインドは、自動車産業だけでなく、日本企業にとっても未知の領域でした。そこで故・鈴木 修会長が、インド政府から『国民車を造りたい』という要望を受け、スズキとしてできることを積極的に行なった。
販売網についても、地域ごとに異なる文化や風習に丁寧に対応してきた。その積み重ねが、インド政府や地方政府、販売店、そしてユーザーからの高い信頼につながったのが大きい」
桃田氏は、スズキの企業姿勢にも強さの源泉があると指摘する。
「企業メッセージの『By Your Side』が示すように、全社一丸となってお客さまに徹底的に寄り添う姿勢が、スズキの底力になっている。また、北米での四輪事業から撤退したという決断も大きい。結果的に、昨今の関税問題に配慮せずに済んだ」
そしてスズキは今、「開発スピード」も新たな強みにしようとしている。9月25日に開催された「10年先を見据えた技術戦略説明会2026」で、鈴木俊宏社長は2030年までに新車開発期間を2020年度比で半減する方針を明らかにした。カギを握るのは〝並行開発〟だ。
これまでのようにデザイン、設計、生産技術などを順番に進めるのではなく、企画、設計、生産、品質、調達が初期段階から同じ目標を共有し、複数の工程を同時に進める。
加えて過去の設計基準や評価ノウハウ、実車で蓄積した知見をAIでも活用する。共通モジュールを広げ、開発から生産までを一体で最適化する。目標は開発効率30%、生産効率50%の向上。現在40~48ヵ月程度かかる共通プラットフォーム車の開発期間を、24ヵ月までに短縮する。
鈴木社長は、その狙いをこう説明する。
「自動車業界にはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリングサービス、電動化)という大波が来て、AI化も進んでいます。そうした中でクルマづくりそのものが変わり、求められるものも変化しています。高機能化、高度化が進む中、そのスピードについていくためにも、開発期間の短縮は必要」
新技術を搭載したカットモデル。スズキは車体のあらゆる部分を見直し、安全性を高めながら軽量化を目指す
「カーボンキャプチャーキャリイ」。軽トラで走りながらCO2を回収。農作物の成長促進にCO2を使用するハウス農業などで再利用する
ただし、新車を次々と投入することが目的ではない。
「大切なのは準備をしておくこと。そして『変わってきたな』というときに、臨機応変に動ける機動力を持っておくことです。小さな改善を積み重ねて『良くなったよね』と感じてもらえるクルマにしていく。そのためにも、開発期間の短縮は重要になります」
開発の仕組みそのものを変え、市場の変化に素早く対応できる体制をつくる。その難しい改革について、鈴木社長はこう強調した。
「チームスズキならできる。社内が一丸となってやっていくのが強みだ」
スズキの変化を象徴するもうひとつの存在が、間もなく正式発表される軽EV「e SKY」。日産「サクラ」、三菱「eKクロスEV」、ホンダ「N-ONE e:」、BYD「ラッコ」などが競合する市場に、軽の老舗であるスズキが満を持して参入する。
間もなくデビューが正式発表されるスズキ初の乗用軽EV「e SKY」。気になる価格は!? EV普及の起爆剤となるか
桃田氏は、この新型軽EVについてこう語る。
「あえてEVらしさを強調していないことが、最大の特長です。軽自動車に慣れ親しんできた人が、違和感なく自然にEVへシフトできます。走り味、ハンドリング、乗り心地、外観、内装など、すべてにおいて、作り手からユーザーに押しつけるような無理がありません」
では、販売のキモは?
「エネルギーマネジメントを通じて地域社会全体の変革に取り組む姿勢を見せること」
市場を見極め、強みを生かし、必要な場所でクルマを造り、必要な人へ届ける。そして、変化に合わせてクルマの造り方そのものも変えていく。その総合力こそ、今のスズキの強さなのだ。