
日野秀規
ひの・ひでき
日野秀規の記事一覧
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
X【@kujiraya_fp】
6月18日に日経平均は7万円を記録。22日には7万2000円台を突破した
昨年6月末には3万9810円だった日経平均は、歴代最大の伸び率を見せ、ものの1年で7万2000円を突破した。この大相場に乗り遅れたあなた、諦めるのはまだ早い!
株式市場を知り尽くした4人の識者に、下半期からが本番となる"とっておきの出遅れ割安株"を選出してもらった!
まずは、本誌で連載『街歩き投資ラボ』を持つ株式評論家・坂本慎太郎氏から。時流をとらえた銘柄発掘に定評のある坂本氏に、この先の相場をどう推理するかを聞いた。
「AI投資ブームを受けた半導体関連銘柄が目下絶好調ですが、大事なのは、いずれ来る一時的な下落局面に備えること。キオクシアやフジクラを売った投資家の目に魅力的に映るであろう、今は蚊帳の外に置かれている銘柄に先回りしておくことです」
日経平均の大躍進を支えたキオクシアHD。株価は4月から4倍に
なるほど、具体的には?
「海外企業を顧客とする半導体銘柄で利益を確定させた投資家は、次に内需株、つまり国内での売上比率が高い銘柄に注目するとみます。その筆頭格として、大手私鉄の中で純利益トップを誇る東急に注目しています」
渋谷と横浜を結ぶ大動脈・東横線に加え、渋谷駅周辺と田園都市線沿線の不動産開発が絶好調。5期連続の増収増益を達成し、勢いに乗っているのは間違いない。
JRの運賃値上げを受け、東急はさらに利益を積み上げそうだ
「ここでさらに弾みをつけるのが、3月に実施されたJR東日本の値上げ。渋谷―横浜間を東横線は309円で結びますが、これがJR経由だと440円。1.5倍近い価格差ですから、勝敗は明白です。四半期ごとに旅客収入の伸びが明らかになるにつれ、株価も伸びていくことを期待しましょう。
そしてもうひとつ有望なのが、円安の定着を背景とするインバウンド需要。北から南まで、全国各地で特色あるお土産菓子を提供している寿スピリッツが狙い目です」
2022年度に1株当たり6円だった配当が今や35円と、4年で約6倍という驚異的なペースで成長。業績が増収増益続きな上に、株主還元にも積極的なのだ。
「実は円安は、国内旅行需要にも利いています。海外の物価が割高になっている分、旅行先の国内シフトが起きている。外交関係の影響で中国人観光客は減少していますが、それを補って余りあるボリュームです。
日経平均に入っていない銘柄のため、実力以上に株価がつり上げられていない点も有利で、資金移動の受け皿になれば上昇余地は大きいでしょう」
続いて、証券アナリストの宇野沢茂樹氏。今後の日本株は警戒も必要と、坂本氏とトーンは一致している。
「各種指標を見ても、AI関連株や株価の高い値がさ株に過熱感が出ています。この先の主役は稼いでいるのに株価が出遅れているセクターで、中でも注目すべきなのが、鉄以外の貴金属や産業金属を取り扱う『非鉄金属』銘柄です」
23年から今年初頭にかけて、世界的なインフレや紛争を背景に金価格が急上昇。加えて、AIやEVの普及に欠かせない銅やニッケルなどの金属を取り扱う非鉄金属銘柄が、儲かっていながら株価は出遅れていると宇野沢氏は言う。
「国内外で鉱山を保有し、採掘から材料化まで行なっている住友金属鉱山は半導体株に比べるとはるかに割安で、AI相場の恩恵をこれから本格的に受ける銘柄です。
株価は過去1年で2倍を超えていますが、銅価格上昇を受け業績が本格好転し、むしろここからの楽しみのほうが大きい。そして、同じ住友系の資源株ということで、住友商事にも注目しています」
エネルギーや食料、インフラ、デジタルまで、あらゆるビジネスを手がける総合商社は、中東情勢が沈静化し、貿易が正常化することが追い風になる立場。交渉完全妥結を前に、まだまだ割安な今がチャンスだ。

株式ストラテジストの田口れん太氏は、今年後半のイベントカレンダーから株式市場の不穏を予想している。
「6月に新規上場されたイーロン・マスク率いるスペースXについて社員や公開前からの投資家が、8月に持ち株を売ることができるようになります。そして11月には米国の中間選挙と、市場を攪乱する要因が見えているんです」
つまり、今高騰している銘柄ほど売られる展開が予想されているわけだ。続けて気になる、資金の投入先を聞いていこう。
「世界的なSNS規制が、投資テーマとして面白そうです。若者に対して、インスタグラムやTikTokなどのSNS利用を制限する動きが始まっており、空いた時間を埋めるエンタメ関連の銘柄に恩恵がありそう。
例えば『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』などのジャパニーズアニメの版権を持つ、東映アニメーションが有望です」
同社の株式は現在、東証スタンダード市場に上場している。機関投資家や、NISAやiDeCoで投資する個人の資金は、TOPIXなどの株価指数に連動するファンドやETFで運用されることが多く、同社の株式は現状では含まれていない。
それが、今進められているTOPIXの見直しにより、スタンダード市場の銘柄も含まれるようになることが決まっているのだ。
「同社の株式がTOPIXに組み入れられれば、インパクトは極めて大きい。息の長い資金流入が期待できそうです」
経済ジャーナリストの和島英樹氏は、今夏に高市政権が示す「骨太の方針」を視野に入れながら、注目株を教えてくれた。
「昨年、一昨年と代々の骨太の方針で、コンテンツ産業は日本の戦略産業と位置づけられてきました。その方針に変わりはなく、今年も政府による投資や補助金のスキームが徐々に出てくるでしょう。
日本から世界へのコンテンツの導管として、最も恩恵を受けるのがソニーグループです」
傘下のアニプレックスは、昨年の大ヒット映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』『国宝』の製作を担当しており、すでに実績は十分と言える。
ソニーグループは傘下企業が『鬼滅の刃』劇場版の製作を手がけている
「国内外でアニメの配信を手がけるクランチロールも傘下企業で、コンテンツIP(知的財産)がグループの次なる柱として期待されています。株価は非常に割安ですし、まさに買い時です。
そしてもう一銘柄、同じく時流に乗りながらも、株価がまだ割高になっていないカチタスを推します。中古住宅の再生事業を全国展開しており、マンション価格の高騰にあえぐ人々のニーズを一手に引き受ける存在です。
累計10万戸以上の中古住宅再生実績は断トツで、ノウハウの積み上げでライバルとの差を年々広げています」

4氏の推す計30銘柄は表にまとめた。相場格言「人の行く 裏に道あり 花の山」に従って今飛び乗るのもよし、来たる買い場を待つのもよしだ。
*データは6月23日時点