
日野秀規
ひの・ひでき
日野秀規の記事一覧
フリーライター、個人投資ジャーナリスト。社会経済やトレンドについて、20年にわたる出版編集経験を活かし幅広く執筆活動を行なっている。専門は投資信託や ETF を利用した個人の資産形成。
X【@kujiraya_fp】
相次ぐ個人情報流出で、日本中の経営者から熱視線が集まりまくり! 第二のキオクシアはここにあり!?
企業の個人情報流出が相次いでいる。ここまで攻撃の脅威が高まっているなら、今後はいっそう、防御に力を入れなければならなくなるはず。すでにサイバーセキュリティ関連の会社の株価は上昇しているが、今から買っても儲けられそうなところはどこ? 個人情報が流出したショックは、投資の儲けでチャラにするのだ!!
※データは10月19日時点
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9月下旬の「タイムズカー」会員660万件の個人情報流出を皮切りに、連日のように企業が不正アクセスによる被害を報告している。
当然、ユーザーはパスワードを変更したり、信用情報機関に悪用防止の届け出をするといった対策を迫られているわけだが、それは企業にとっても同じこと。サイバーセキュリティの強化はまさに死活問題となっており、あらゆる情報をいち早く織り込む株式市場でもすでに動きが出ている。
証券アナリストの宇野沢茂樹氏に解説してもらおう。
「『守る側』には資金流入、『守られる側』からは資金流出の動きが鮮明です。この1ヵ月で不正アクセスが報じられた『タイムズカー』運営のパーク24や食品大手のニッスイ、楽天グループの株価はいずれも、10月中旬にかけて年初来安値を更新。
その一方で、情報セキュリティ関連企業の株価は急騰しているんです。例えば企業にセキュリティ商品を提供するFFRIセキュリティの株価は10月8日にストップ高となりました」
情報セキュリティを主なサービスとして手がける国内企業には大企業が少ないため、株価上昇が目立つ。時価総額が小さい小型株は、資金流入による株価へのインパクトが大きいからだ。
例えば時価総額100億円の小型株と45兆円のトヨタ自動車で、10億円の資金流入があった場合、それぞれに与える影響がまったく異なることは直感的に理解できるだろう。つまり、この分野の企業は今後も株価が急騰する可能性があるのだ。
「それらの企業は日経平均にもほぼ含まれておらず、10月に入って日経平均が下落基調で推移する中でも、騰勢を強めています。この背景には、日本政府の政策が強く関係している点は押さえておきましょう」
10月1日には、重要なインフラを担う民間企業と国が連携して、サイバー攻撃の分析・対策を積極的に行なう「能動的サイバー防御」の関連法が施行された。これを踏まえて、高市早苗総理と国家サイバー統括室(NCO)が企業への注意喚起を発出。投資家にも情報セキュリティが投資テーマとして強く意識されるきっかけとなった。
「7月に閣議決定された日本成長戦略『戦略17分野』にも、デジタル・サイバーセキュリティが入っています。つまり2040年度まで、国の旗振りでこの分野に投資が行なわれることは決定事項。
官公庁や自治体のシステム基盤における情報防護が強化され、AI時代に対応した先進的な情報セキュリティ製品・サービス、データセンターなどが官民投資の対象となります」
まるで公共事業全盛時代における土木・建築のように、長期的かつ確実な引き合いが情報セキュリティ企業に入り続けることになったわけだ。となれば、まずは官公庁案件の比率が高い銘柄をチェックすべきだと宇野沢氏は強調する。
「その筆頭格が、情報セキュリティサービスの提供に加えて、システムエンジニア向けのセキュリティ教育や、セキュリティ人材のあっせんまで手がけるグローバルセキュリティエキスパートです。
主な顧客が中堅企業と官公庁であるほか、自社が投資家として、ファンドを通じて官公庁のセキュリティ対策に強みを持つ企業に出資しています」
エンジニア教育や人材あっせんの両事業も高利益率を誇り、株価はすでに9月初頭から7割もの急上昇を演じた。これでもまだ株価に火がついたばかりだ、と宇野沢氏は自信をにじませる。
「同様の観点から、デジタルアーツも有望です。総務省が発表した地方自治体の情報セキュリティに関するガイドラインに対応した、ウェブサイトやメールのフィルタリング技術が強みで、公共向けの売り上げが約5割を占めています」
高確度で増収増益・増配が見込める堅実銘柄でありながら、営業利益率38%という高収益体質は魅力十分だ。
続いて宇野沢氏が銘柄の判断基準として挙げたのが、AIとの距離感だ。
「AIを活用してサイバー攻撃の検知率を上げたり、逆にAIには代替できない人間ならではのきめ細かい対応を提供できる企業は、同業他社に対する優位性を確立します。この点で有力なのが、ネットワーク監視とログ分析を手がけるセキュアヴェイルです」
同社のセキュリティ運用サービス「AI-SOC」は、AIを活用することで中小企業向けに廉価な価格を実現し、顧客開拓につなげている。27年3月期に経常利益2割増を掲げ、株価も上昇の一途。大企業向けには24時間有人対応監視のサービスもそろえ、攻めの姿勢が評価されているという。
「一方、企業のITインフラの設計・構築を専業とするボードルアは、AIに代替されにくい点が強み。AIはコーディング(プログラムの作成)においては、確かに人間の生産性を圧倒しますが、顧客のニーズに合わせた総合的かつ複雑なITインフラ設計は、いまだ任せることはできません。ここに同社の確固たる存在価値があります」
ここまでは、情報セキュリティ投資の波に乗る〝イケイケドンドン〟な銘柄を紹介してきた。最後に宇野沢氏は、超堅実な銘柄を挙げる。
「セキュリティ製品の輸入販売・構築を手がけるIT商社のテクマトリックスは創業40年を超える老舗。増益率こそ年率5%程度と控えめな会社予想になっていますが、業績の安定感は魅力です。12年連続の増収増益、11年連続の増配という実績は、新興企業の多いこの分野では光り輝く存在。長期投資にうってつけです」
宇野沢氏が推奨する全10銘柄は表にまとめた。〝攻撃力〟が急上昇したAIに対し、個人レベルでできるセキュリティ対策には限りがある。そんな中、セキュリティ銘柄へ投資しておくのは、一種の防御になるはずだ!
