累計受注1万1000台超! 異例の大ヒットEVを徹底チェック! ホンダ「スーパーワン」の走りがクソ楽しい!!

取材・文/週プレ自動車班 撮影/山本佳吾

4月16日に先行予約、5月22日に発売された新型EVスーパーワンを箱根の山道で試した4月16日に先行予約、5月22日に発売された新型EVスーパーワンを箱根の山道で試した

ホンダが満を持して日本市場に投入したコンパクトEV、スーパーワンが売れに売れている。EV普及の遅れが指摘されてきた日本で支持を集める理由とは!? 専門家の視点と箱根での試乗結果を交え、その実力に迫ってみた。

* * *

【日本で売れないはずのEVがなぜ売れたのか】

異例のヒットが生まれた。ホンダの新型スポーツEV、スーパーワンである。

ホンダによると、累計受注は1万1000台超。一時、販売店では新規受注を制限したほど注文が殺到。EV比率が新車市場の2%前後にとどまり、依然として普及が進まない日本において、この数字は異常値だと言っていい。

自動車ジャーナリスト桃田健史氏もうなずく。

「ここまで需要があるとは正直驚いた。昨年の英グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでの初披露時は、かなりコアなファン向けという印象でした。

その後、ジャパンモビリティショーや今年1月の東京オートサロンなどで注目を集めましたが、どれだけ実売につながるかは未知数だった。〝シティターボⅡ(通称ブルドッグ)の再来〟というイメージも人気に影響しているのではないか」

今回の撮影を担当し、自らもスーパーワンを購入した関西出身の金髪カメラマン、山本佳吾氏は笑う。

「実物を見ずに買ったから、この試乗会が初対面や。もちろん運転したんも初めて。確かに東京都は補助金が優遇されすぎてる気はするけど、そんなもんワシには関係あれへん。もらえるもんはもらう」

ホンダ スーパーワン 価格:339万200円 全長3580mm×全幅1575mm×全高1615mmのボディを持つ、軽規格を超えたコンパクトカーホンダ スーパーワン 価格:339万200円 全長3580mm×全幅1575mm×全高1615mmのボディを持つ、軽規格を超えたコンパクトカー

ルーフエンドに大型スポイラーを備えるなど、男心をくすぐるディテールが光るルーフエンドに大型スポイラーを備えるなど、男心をくすぐるディテールが光る

価格は339万200円。国や自治体の補助金を活用すれば実質200万円台。条件次第では100万円台も見えてくる。さらに残クレ(残価設定型クレジット)を使うと〝実質0円〟に見えるケースも出てくる。

「補助金による価格訴求は一定の魅力がありますが、EV普及のあり方としては健全とは言い切れません。ただ、普及率が低迷する現状において、スーパーワンのような話題が生まれたこと自体は評価できるでしょう」(桃田氏)

では、なぜここまで売れているのか。神奈川県箱根町で開催された報道陣向け試乗会で、その理由を確かめた。

ホンダによると、購入者の9割近くが男性で、50~60代が全体の6割超を占める。かつてホンダ車に乗っていた世代、あるいは憧れていた世代を直撃し、彼らがセカンドカーとして購入するケースが少なくないという。

四角いフォルムに丸目。そこへ張り出したオーバーフェンダーと大型バンパーを組み合わせた姿は、まさに〝令和版のシティターボⅡ〟。

スーパーワンの系譜について桃田氏はこう解説する。

「ベースは軽EVのN-ONE e:。どこまで高性能化できているかが焦点になっています。かつてシティターボⅡは〝ドッカンターボ〟で、強いアンダーステアに対してアクセルオフのタックインを使って走らせるクルマでした。スーパーワンはそこまで荒々しくはないにしても、とがった味を期待したい」

箱根の山道に持ち込む。走りは実にわかりやすい。視界は広く、車幅感覚もつかみやすい。カーブでも車体は大きく傾かない。ハンドルを切ったぶんだけ素直に向きを変え、狙ったラインを気持ちよくスイスイとなぞっていく。運転がうまくなったと錯覚するほど動きが自然で楽しい。

その理由は1090kgという軽さにある。重量増が宿命になるEVの世界で、スーパーワンは軽ベースがプラスに作用しているのだ。

ドライブモードはエコ、シティ、ノーマル、スポーツに加え、ブーストモードも用意。通常47kWのモーター出力は最大70kWまで高められる。仮想有段シフトとサウンド演出も組み込まれた。

ハンドル右側の紫色のボタンを押すと、最高出力を引き上げるブーストモードが起動するハンドル右側の紫色のボタンを押すと、最高出力を引き上げるブーストモードが起動する

ブースト時の3連メーターは左からバッテリー温度計、タコメーター、パワーメーターブースト時の3連メーターは左からバッテリー温度計、タコメーター、パワーメーター

試乗後、山本氏は苦笑いしながらこう語る。

「音の演出がちょっとな。ワシら世代がメインやとしたら、ホンダのイメージはEF(4代目)からEK(6代目)にかけての歴代シビックや。B型エンジンのあの音を期待してたんやけど、実際は大排気量マルチシリンダーのドイツ車みたいな洗練された音やった。これは好みの問題やな」

一方、走りはどうか。

「絶対的なパワーはないけど、重心の低さが効いてるんやろうな。とにかくコーナーが楽しい。見た目は(初代の)ブルドッグやけど、乗り味は(2代目の)GA2型シティを思い出したわ。目を三角にして走るクルマやなくて、程よいペースで流すのがええ。若い頃に峠やサーキットを走り回ってたオッサンには最高のオモチャやと思うで」

だからこそ、ホンダは試乗会の舞台に箱根の峠道を選んだのだろう。

開発の背景も象徴的である。スーパーワンは潤沢な予算から生まれた企画ではない。社内では〝賄いメシ〟のような存在で、限られた素材をかき集め、工夫を重ね磨いた結果、気づけば爆売れし、看板メニューになった。

普通・急速共に給電口はフロントに配置。航続距離は274km(WLTCモード)普通・急速共に給電口はフロントに配置。航続距離は274km(WLTCモード)

ただ、このスマッシュヒットの陰で、ホンダは1957年の上場以来初めての通期最終赤字に転落している。

桃田氏はこう指摘する。

「ホンダはスーパーワンのスマッシュヒットに満足せず、電動化戦略そのものを早急に見直すべきでしょう」

巨額投資で描いた未来志向のEVではなく、限られた資源で仕上げたクルマが市場を動かした。ここにホンダ再浮上のヒントがある。

ちなみにスーパーワンは日本専売ではない。イギリスを筆頭に、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、インドネシアなど右ハンドル市場を見据えて開発されている。シティターボⅡの血を受け継ぐ小さなスポーツEVは世界を相手に走り出す。

★『インプレ!』は毎週水曜日更新!★

Photo Gallery

編集部のオススメ

関連ニュース

TOP