世界中に衝撃を与えたアカデミー賞授賞式でのウィル・スミスのビンタ事件。ビンタは暴力か、否か――。日本でも賛否両論が渦巻いている。
そこで4月11日(月)発売『週刊プレイボーイ17号』では、世代別400人アンケートを実施。『笑ってはいけない』シリーズでビンタを大晦日の風物詩にした、蝶野正洋氏にもビンタをする側される側について語って頂いた。今回は、その記事中からテレビプロデューサーでタレントのデーブ・スペクター氏に聞いた『ウィル・スミス問題』を配信!
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■あのビンタは一種のイジメ
あのビンタが出た当初、アメリカではウィル・スミスとクリス・ロックは「どっちもどっち」という評価でしたが、今では「ウィルが圧倒的に悪い」とされています。
アカデミー賞の授賞式で舞台に上がってビンタするなんて明らかに過剰反応だし、完全にアウト。座ったままクリスに向かってファイティングポーズを取るとか、後で文句を言いに行くとか、対処法はあったはずです。
実は、クリスはウィルの妻・ジェイダの病気のことを知らなかったんです。頭を剃(そ)ってることを『G.I.ジェーン』にたとえただけで、その程度のいじりはアメリカでは軽いほう。そもそも近年のスミス夫妻は、多くのコメディアンからちゃかされる存在でした。
なぜなら彼らの結婚観が独特で、ジェイダがテレビ番組で泣きながら自身の浮気を告白したこともあった。あたかも「自分たちをいじってくれ」と言っているようなものだったんです。しかも、ウィルはもともとクリスと仲が良く、彼の芸風もわかっていたはず。それなのになぜ、今回はこうした行為に及んだのかと不思議がられています。
アカデミー賞の品格を落としたウィルには、今後数年間は授賞式に出席できないとか、なんらかのペナルティが科されることでしょう。映画界から締め出されることはないにしても、かなり仕事が減ると僕は思います。だって、映画で彼が人を殴るシーンがあったら気分が良くないじゃないですか。
あのビンタは一種のイジメだととらえられています。自分より体の小さい人に暴力を振るったからです。もし相手がマイク・タイソンだったらビンタしたでしょうか。
また、多感な年頃の子供たちは映画やアニメの暴力シーンをカッコいいと思っている。ウィルは子供たちに「イヤなことを言われたら殴ってもいい」という誤ったメッセージを伝えてしまったと問題になっているんです。
さらに、コメディアンたちが仕事への影響を気にしています。「へたなことを言ったら何をされるかわからない」「舞台に立つのが怖い」などと不安になっている人もいます。
一方、クリス・ロックは結果的にイメージが良くなりました。彼の人気はさらに上がり、ライブのチケットは完売状態ですから、言葉は悪いけど、彼にとっては「おいしかった」のではないでしょうか。(談)
●デーブ・スペクター
テレビプロデューサー、タレント。『サンデー・ジャポン』(TBS系)、『大下容子 ワイドスクランブル』(テレビ朝日系)などに出演中。公式Twitterはフォロワー数190万人突破【@dave_spector】