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強硬な対外政策を打ち出すトランプ大統領
第2次トランプ政権が発足してから、世界は"暴君"に振り回されっぱなしだ。唐突な相互関税と相次ぐ軍事行動は各国によけいなダメージを与えている。
それでも、トランプ劇場は終わらない。その終演まで、まだあと1000日。このままじゃ、世界がもたないよ! 途中で彼を止める手段は存在しないの?
* * *
世界経済を揺るがす相互関税、ベネズエラやイランへの不意打ち攻撃、そして高圧的な外交に問題発言......。「いったい、いつまで続くんだ?」と、世界中が頭を抱えるトランプ劇場。だが、第2次トランプ政権の在任期間はたっぷり2年9ヵ月、およそ1000日も残っている。
もうこれ以上、彼に大国アメリカのかじ取りを任せていたら、世界がもたない! どうにか、現役の米大統領を任期途中でクビにすることはできないのか?
実際、イランへの総攻撃を示唆したトランプ大統領の「今夜、ひとつの文明が消えるかもしれない」という発言を受け、野党の民主党はもちろん、これまで支持してきた保守層の一部からも、大統領の精神状態を懸念する声が上がっている。さらに一部では、「任期中の解任」を検討すべきだとの指摘も出始めている。
では、トランプをクビにする方法なんて本当にあるのか? アメリカ現代政治が専門の国際政治学者で上智大学教授の前嶋和弘氏に片っ端から検証してもらった!
まずは「合衆国憲法修正第25条」の場合だ。
1967年に制定されたこの条項は、大統領の職務継承と職務遂行不能に関するルールをまとめたもので、全4節から構成される。
第1節は大統領が死亡・辞任・罷免された場合、副大統領が大統領に昇格する規定。
第2節は副大統領が空席になった場合の補充方法。
第3節は大統領自らが一時的に「職務遂行不能」を宣言する場合の手順が記されている。
第28代大統領ウィルソンは脳梗塞で倒れた後も職務にとどまり、妻のエディスが実質的に政務を担った。この異例の事態が修正第25条制定につながった
「そして、鍵を握るのが第4節です」と前嶋氏は指摘する。
「『副大統領と閣僚の過半数が連名で、大統領は職務遂行不能だと議会に通告した場合、副大統領が即座に暫定大統領となる』と記されています。
ただし、大統領が異議を申し立てた場合は議会に最終判断が委ねられ、副大統領が権限を継承するには、上下両院それぞれ3分の2以上が『職務遂行不能』と認定する必要があります。
ちなみに、民主党はこの修正第25条の検討を求める法案を提出しましたが、否決されています」
そもそも修正第25条による解任は、「現役閣僚の過半数」が同意しなければ始まらない。つまり問題は「誰がトランプを裏切れるか?」だ。
「この仕組みが動くためには、最初にヴァンス副大統領か、ほかの有力閣僚が『大統領は職務を遂行できない』と宣言する必要があります。しかし、忠実なイエスマンばかりが並ぶ現在の政権で、そんな度胸のある人物がいるでしょうか。
実は、第1次トランプ政権の末期には、当時の副大統領だったマイク・ペンスがこの修正第25条の適用に動くのでは、という話がありました。
2021年1月6日の連邦議会襲撃事件で、トランプに扇動された暴徒が議事堂に乱入し、『ペンスをつるせ』と叫んだからです。しかし、そんな目に遭ったペンスですら、解任の動きには踏み切れませんでした」
ハンガリーでの選挙集会でトランプ大統領に電話するパフォーマンスを見せたヴァンス副大統領は、対外の場でも主従関係の強さを示しているが、彼が裏切れば、あるいは......?
ましてや、現在の副大統領であるヴァンスはトランプを強烈に支持するMAGA(米国を再び偉大に)の世界観に支えられた人物。仮にトランプと一部意見の相違はあっても、親分を裏切るインセンティブはまったくない。
「今回、トランプがイラン攻撃に踏み切る際、ヴァンスは強く反対したと報じられていますが、最終的には従っています。次の大統領選を見据える立場として、ここで悪目立ちはできない。『本能寺の変』のように主(あるじ)の寝首をかく可能性は、ゼロに等しいでしょう。
また、仮にヴァンスが『トランプ大統領は職務を遂行できない』と宣言し、閣僚の過半数が通告したとしても、トランプ本人が異議を申し立てれば、最終判断は議会に委ねられます。
その場合、上下両院で3分の2の賛成が必要になる。4月15日現在、共和党は上院100議席のうち53、下院435議席のうち217を確保しており、この壁を崩すハードルも極めて高いのです」
では、正攻法の「議会による弾劾」はどうか。
第1次トランプ政権のときは下院で2度にわたり弾劾訴追が発議された。
制度としては、まず下院が過半数の賛成で弾劾訴追を決議し、次に上院が3分の2以上の賛成で罷免を可決する2段階の仕組みだ。
「結論から言えば、こちらも現実には難しい」と前嶋氏は語る。
「今年11月には中間選挙が控えています。一般的に中間選挙は政権与党に不利ですから、仮に民主党が下院で多数を奪還すれば、弾劾発議までは持ち込めるかもしれません。
ただし、問題はその先です。上院は任期6年で3分の1ずつ改選される仕組みで、今回改選される議席はもともと民主党が多い州が中心なので、共和党が大きく議席を減らす可能性は低い。
弾劾成立には上院で3分の2、つまり67議席が必要ですが、民主党が大勝したとしても、共和党議員の大量造反がない限り、成立は困難なのです」
ここまでくると、もう残る手段はひとつしかない。軍によるクーデターだ。
第2次トランプ政権発足以来、ヘグセス国防長官の手によって解任・更迭された軍幹部は13人を超えている。
統合参謀本部議長のブラウン大将(黒人として史上ふたり目の就任者)、海軍初の女性トップ・フランチェッティ海軍作戦部長、沿岸警備隊初の女性司令官・フェイガン提督など。そして、最も新しい例が、イランとの戦争の真っただ中に解任された陸軍参謀総長のランディ・ジョージ大将だ。ジョージ大将は解任直後にこう語っている。
「米軍の将兵は、品格があり勇気ある指導者を持つ資格がある」
一見、穏やかな言葉だが、解釈によっては痛烈なトランプ政権批判とも受け取れる。
軍への介入を強めるトランプ政権は、陸・海・空軍の法務総監(軍の国際法・戦争法規の順守を助言する部署)も廃止している。
ベネズエラやイランへの軍事行動でも国際法を無視し、NATOなど同盟国との関係も揺るがしている。
心から国を愛するまともな軍人なら祖国の行く末を案じる"憂国の士"として立ち上がったりしないだろうか?
「情報機関や軍の異論にも耳を貸さず、米国を無謀な戦争へと駆り立てるトランプ政権に対しては、軍の内部に不満や懸念が広がっている可能性はあると思います。しかし、仮にそうでも、クーデターという選択肢は採られないでしょう。
3月28日、全米に広がった「ノー・キングス」デモには約800万~900万人が参加。反トランプの怒りが噴き上がっていることを示した
アジアやアフリカ、中南米などの国でクーデターが起きるのと、超大国のアメリカで起きるのとでは意味が違います。
仮に米軍がクーデターを起こせば、国が二分される大規模な内戦、すなわち"第2次南北戦争"を引き起こしてしまう可能性がある。世界最大で最強の軍がクーデターを起こす意味を、米軍自身が最も理解しているのです」
万策尽きた。結局、世界はあと1000日近くも暴走するトランプ政権に振り回され続けるしかないのか......。
「実は、トランプ政権が1000日後以降も続く可能性が、完全にないとは言い切れないんです」
どういうこと?
「そもそも合衆国憲法では、大統領の3期以上の在任が禁じられているため、トランプが2029年以降に再び大統領になることは制度上できないとされています。
しかし、『大統領継承法』では、任期中に不測の事態が起きた場合に備えて『大統領権限の継承順位』が定められており、大統領、副大統領がそろって辞任した場合、継承順位3位の下院議長が大統領権限を引き継ぐとされているんです」
憲法には「下院が議長を選出する」とは記されているものの、「議長は下院議員でなければならない」という条文は存在しない。
「仮に2028年の大統領選でヴァンスらトランプ派の候補が当選し、下院でも共和党が多数を維持した場合、共和党側がトランプを下院議長に選出し、その後、新大統領と副大統領がそろって辞任すれば、トランプは憲法が禁じた『3度目の大統領への選出』を経ることなく、事実上の"第3期"に返り咲けるかもしれないのです」
引きずり降ろすこともできなければ、法の穴を突いて君臨し続ける可能性すらある。予想外なトランプのことだ。現実のものとならないことを願うしかない......。