「レーサー長瀬は努力家」「勝ち負けだけじゃない」。長瀬智也が所属するチームの3人が語る旧車ハーレーによるレースの魅力とは?

取材・文・撮影/川原田 剛

表彰台で満面の笑みを浮かべるJCRの3人。左から2位の長瀬智也、優勝した西田 裕、3位の伊藤 毅表彰台で満面の笑みを浮かべるJCRの3人。左から2位の長瀬智也、優勝した西田 裕、3位の伊藤 毅

ロックバンド「Kode Talkers」のボーカル&ギターとして活動する長瀬智也が4月19日、茨城県の筑波サーキットで行なわれたMCFAJ(全日本モーターサイクルクラブ連盟)主催の「2026 クラブマンロードレース第1戦」に出場した。

アメリカのビンテージバイクによるロードレースの団体A.V.C.C(アメリカン・ビンテージ・コンペティション・クラブマンロードレース)のFSCR(ファイティング・ショベル・クラブマン・レーサー)クラスにエントリーした長瀬は予選でクラス2位という好グリッドを獲得。

決勝ではスタートで出遅れ、一時4番手までポジションを落とすが、すぐに2台をオーバーテイク。2番手に順位を上げると、そのままポジションを守り切り、チェッカーフラッグを受けた。

優勝したのは長瀬とともにJapanese Chopper Racing(以下、JCR)として活動する西田 裕、3位には伊藤 毅がそれぞれ入り、JCRの3人が表彰台を独占。レース後に3人に話を聞いた!

* * *

【楽しく走って結果も残せた】

――昨年11月の クラブマンロードレース第3戦は大雨のためにレースを棄権していますので、約10ヵ月振りの出走となりました。今回は快晴に恵まれる中、JCRがワン・ツー・スリーを飾りました。

長瀬 結果は後からついて来るものだと思っています。僕らはいかに楽しく走れるかというのを優先してレースをしていますが、楽しく走れて結果もついてきた。特に僕は西田さんにバイクをつくってもらっているので、走りながら今まで築き上げてきた信頼のようなものを感じることができたのもうれしかったですね。

――優勝した西田さんは表彰台の上では直前にマシンにトラブルがあって心配だったと話されていましたが、具体的にはどんな症状が出ていたのですか?

西田 長瀬君とは今回、新しいマシンで出場しているのですが、テストの段階から細かいトラブルが出ていました。長瀬君のマシンは1ヵ月前にエンジンブローしてしまい、それを直してレースに臨みました。

スケジュール的にはそこまでタイトな状況ではなかったのですが、さらにトラブルがあれば、本当にギリギリになってしまうところでした。だから今回は「頼むからふたりのバイクが無事に走ってくれ」という思いがありました。

――ちなみにマシンはどこが変わったんですか?

西田 同じハーレーダビッドソンですが、ベースの車種が変わっています。昨年11月ぐらいからマシンづくりをスタートしました。

僕は「JOYRIDE SPEED SHOP」というバイクショップを経営し、昔からレースにも出場しているのでデータとノウハウはあります。それでマシンをつくっていくのですが、今回はエンジンのチューニングをかなりガッチリやってきたのですが、そうすると性能が上がる反面、どうしてもトラブルリスクが上がってしまいます。

長瀬 それでレース直前にエンジンブローしちゃったんです。

――そんな中でのワン・ツー・スリーという結果はどのように受け止めていますか?

西田 僕はトラブルなく、みんなが楽しく走ることができれば、これぐらいの結果は出せるだろうなと思っていました。でも長瀬君が言うように、僕たちは勝とうというよりも、まずは楽しむことを第一に考えてレース活動をしています。

長瀬は今回の筑波ではレースに出場しながら、他カテゴリーの表彰台インタビューを行った長瀬は今回の筑波ではレースに出場しながら、他カテゴリーの表彰台インタビューを行った

レース前の準備に余念がない長瀬レース前の準備に余念がない長瀬

【旧車ハーレーでのレースの魅力】

――JCRはどのような経緯で誕生したのですか?

西田 もともと長瀬君と毅がずっと付き合いがあったんだよね。

伊藤 そうですね。もう20年ぐらいの付き合いです。僕が「ROUGH MOTORCYCLE GARAGE」 というバイクショップを立ち上げたときにご縁があって知り合って、ずっと応援して支えてもらってます。で、レースを始めようとしたときに西田さんから学びたいと思って、いろいろと相談していました。

西田 だったらみんなで練習に行こうぜ、という感じで自然に3人がつながっていきました。

長瀬 おふたりはバイク屋さんですが、僕らはアメリカのV型エンジンの文化に魅了された日本人の仲間なんですよね。だからJapanese Chopper Racingという名前にして活動しています。

僕らが好きなアメリカの古いバイクによるレースは、A.V.C.Cしかなかったんです。日本にはこういうレースもあるんだと知ってほしいと思って活動しています。

――JCRが参戦する旧車ハーレーを使ったレースの魅力は?

西田 そもそもハーレーのほとんどの車種はもともとロードレースをするような設計がされていません。それを自分たちでこうじゃないか、ああじゃないかと工夫して、サーキットでレースできるマシンにつくり上げるのが面白いんです。

ハーレーのバイクは大きくて重いですし、バンク角というバイクを倒す角度が、ヨーロッパや国産のスーパースポーツに比べると根本的に足りない。バンク角が高いほどコーナーリング性能が上がるので、いろいろと手を加えていきます。

足回りは当然ですが、車体の幅を詰めることもやりますし、レギュレーションで許されている範囲で一からマシンをつくり直すようなイメージですね。それでも、やっぱりバンク角を上げるのは、どこかで限界が来てしまう。レースに出るのは簡単ですが、レーシングスピードで走らせるのは大変なんです。

伊藤 実際にレースをやり始めて、現実を知りました。ああ、レース仕様のマシンにするのはこんなにも難しいのかって。でも僕たちのベースにあるのは、好きなものでレースをしたいという思いなんです。

「なぜハーレーなんですか? レースに向いているのですか? 速いんですか?」と聞かれても、「レースに向いてないですし、速くないです。でも好きだから」としか答えられないですね(笑)。その楽しさを僕は西田さんに教えていただいて、のめり込んで、勉強しながら今、JCRの3人でレースをしています。

長瀬は予選でクラス2位という好グリッドを獲得。ベースとなるマシンは、ショベルヘッドエンジンが搭載された83年型のハーレーダビッドソンFXR長瀬は予選でクラス2位という好グリッドを獲得。ベースとなるマシンは、ショベルヘッドエンジンが搭載された83年型のハーレーダビッドソンFXR

スタート前のグリッドでサーキットに駆けつけた観客に手を振る長瀬スタート前のグリッドでサーキットに駆けつけた観客に手を振る長瀬

【レースは速さだけが魅力じゃない】

長瀬 今、おふたりが話したように、ハーレーは世界のバイクメーカーの中でも独自の地位を築いているメーカーです。スピードを求めるようなバイクじゃなく、ツアラーに特化したメーカーです。

サドルバックがついた大型バイクで、アメリカのようなでかい大陸を長い時間ツーリングしても疲れないように設計されています。本来はレース向きじゃないんですが、そういう車両でレースをすることが面白いですし、魅力があると思います。

特に今回のレースの舞台となった筑波はコース幅も狭い、テクニカルコースです。こういうサーキットではヨーロッパや日本のスポーツバイクにもワンチャン勝てるかもしれません。やっぱり遅いバイクで速いバイクに勝つのは楽しいですよね。

同じモータースポーツでもF1のような競技性の高いレースはお金を持っているチームが結局、強いじゃないですか。僕らの場合はそういう勝った負けただけじゃないところに楽しみを感じながらレースをしているんです。

――今年からロードレース世界選手権(MotoGP)でもハーレーダビッドソンの大型ツーリングマシンをレース仕様に改造したマシンを使った新しいシリーズ「ハーレーダビッドソン・バガー・ワールドカップ」が始まりました。ハーレーでレースをしようという機運が世界で高まっているということですか?

長瀬 ロードレースの最高峰MotoGPでも大型ツアラー(バガー)を改造したマシンのレースを前座でやるというのは、どこかそういう"バカさ"って言っていいのかな、遅いバイクで速さを競うというのが魅力的だと思ってくれているのでしょうね。レースは速いだけが魅力じゃない。

――いかに道具(マシン)を使いこなすのか。それが面白いってことですね。

長瀬 そうだと思いますし、自分が使いやすいようにつくるのが楽しい。それは僕にとってバイクだけじゃなく、クルマや楽器とかもそうなんです。僕の中ではそれが普通で、その考えを理解してくれる仲間がいてくれた。すごく恵まれていると思いますね。

レース後に抱き合うJCRのメンバーレース後に抱き合うJCRのメンバー

レース後、タイヤメーカーのスタッフから表彰台用にキャップを受け取り、笑顔を見せる長瀬レース後、タイヤメーカーのスタッフから表彰台用にキャップを受け取り、笑顔を見せる長瀬

【ライダー長瀬は天才型じゃなく努力家】

――おふたりから見て、長瀬さんはどんなライダーですか?

西田 圧倒的にセンスがいいですし、すごく頭が柔らかい。あとすごい努力家です。ちゃんと勉強して、練習のときには「前に走ったときはこうだったので、こうしようと思っているのですが、間違っていないですか?」と言ってくるんです。

僕たちは大体、月に1回ほど筑波で練習走行をしていますが、練習と練習の合間に自分なりにいろいろ調べて、改善策を考えてくる。その点はすごいよね。

伊藤 天才タイプかなと思っていたのですが、努力家ですね。

西田 天才が努力している。だから今、速く走れていますし、きちんと結果が出ているんだと思います。

――長瀬さんが今シーズン、 MCFAJ主催のクラブマンロードレースに出場するのは、今回の開幕戦のみという形になるんですね。

長瀬 そうですね。でもサーキットに行けるのであれば、できるだけ行きたいと思います。でも僕はプロのライダーじゃないので、レースでお金をもらって毎戦出場するというわけではないですから。

それよりも、もっと多くの人にレースに出てほしい。「こんなバカな俺でもこれだけできるんですから、なんで君らにできないの!?」ってことを僕は一番言いたいですね(笑)。ぜひレースにチャレンジしてほしいです。

西田 僕らとしてはこれからも変わらすにJCRの活動を続けていきたいです。長瀬君本人もレースを辞めるわけじゃないですから。

伊藤 別に全部のレースに出場しなければならないわけではないので、出られるときに出ればいいと思っています。練習にはこれまで通りに一緒に行きますので、西田さんがおっしゃるようにJCRの活動は何も変わらないですね。

僕らとしては、サーキットは気軽に遊びに来られる場所だという認識がまだ広まっていない気がします。週末に野球やサッカーをスタジアムで観戦したり、遊園地に行ったりしますよね。そんな感覚でサーキットにも遊びに来てほしいです!

表彰台インタビューに答えるJCRのメンバー表彰台インタビューに答えるJCRのメンバー

Photo Gallery

編集部のオススメ

関連ニュース

TOP

週プレNEWS春のプレゼントキャンペーン