【#佐藤優のシン世界地図探索156】日本も世界も"だいじょうぶだぁ"

取材・文/小峯隆生

この本を読めば日本はだいじょうぶだぁ!? 1339年に北畠親房が執筆を開始した超古書『神皇正統記』(写真:水戸市HPより)この本を読めば日本はだいじょうぶだぁ!? 1339年に北畠親房が執筆を開始した超古書『神皇正統記』(写真:水戸市HPより)
ウクライナ戦争勃発から世界の構図は激変し、真新しい『シン世界地図』が日々、作り変えられている。この連載ではその世界地図を、作家で元外務省主任分析官、同志社大学客員教授の佐藤優氏が、オシント(OSINT Open Source INTelligence:オープンソースインテリジェンス、公開されている情報)を駆使して探索していく!

*  *  *

――イラン戦争を機に原油危機となり、中国との関係も進展せず......。いま、日本を救うためには何をすればいいんでしょうか?

佐藤 『神皇正統記』は読むべきですね。南北朝時代の公家、北畠親房(きたばたけ・ちかふさ)が、南朝の正統な皇統を主張した歴史書です。

――答えはそこにあるんですか?

佐藤 そうです。この本では冒頭からこう主張します。

『大日本(おほやまと)者は神国(かみのくに)也。天祖(あまつみおやはじめて)基(もと)ゐをひらき、日神(ひのかみ)ながく統(とう)を伝(つた)へ給ふ。我(わが)国のみ此事あり。異朝(いてう)には其たぐひなし。此故に神国(かみのくに)と云(い)ふ也』

つまり、日本は他に類がない神の国であり、永遠に生き続けるということですね。

――それが21世紀の今、蘇ってきたわけですね。

佐藤 日本人の考え方には「そもそも神の道は神秘であって、簡単にはその真実を言葉にしない」という前提があります。

だから、「日本は何なのか? 日本の真実は何であるのか?」、それらをあえて明らかにしないんです。わかりますか?

――あえて明らかにしないというのは、永遠に続いて戻っていく、ということですよね?

佐藤 そうです。

――まさに対数螺旋(らせん)、渦を巻きながら永遠に中心に接近していくけど、絶対に中心には到達できない。

佐藤 我が国には明らかにしない根本があります。そして、その根本を知らないと乱世が始まるのです。明らかにしないという根本があり、神の国・日本があるならば、ひたすら強く念じさえすれば混乱も起きません。

――信じていいのかわかりませんが、非常に明らかですね。とにかく、それで2000年以上続いて成り立っていますからね。心配があるとすれば、念じ方が足りないんですか?

佐藤 必勝の信念が足りません。大東亜戦争も、国家指導部における必勝の信念が足りないから負けたんです。

――なんと! しかし前回話していただいたように、今の日本の民は「二分法」の下で超格差社会を生きています。

佐藤 いまの世の中が仮に悪いように見えていても、それはいまだけです。親房は「天照大御神からの正統の継承者であるからこの争いに、必ず勝つ。いまは乱れているがやがておさまり、神の時代が到来する」と言っていました。

これを固く信じていれば、経済が多少うまくいかなくてもそれは必ず良くなる、ということです。

――本当ですか?

佐藤 本当です。どうしてかというと、「神の国であるから」です。理屈は語られません。その理屈は隠されているんです。それが日本的な考えであり、いま重要なのは日本を取り戻すことです。

――は、はい。そうですね。

佐藤 だから、この記事を読んで「とにかく日本はすごいんだ」と認識するんです。「つべこべ理屈を言うな。うまくいくから高市幕府をちゃんと信頼してついてこい」ということです。

――なんだかものすごく高い所から騙(だま)されているような気がするんですけど、違いますか? それとも、信心が足りないのですか?

佐藤 それは信念が足りないからです。「騙されているような気がする」という不信があると、天から見放されます。

――あ、そうなってしまう。

佐藤 信じない人の下に天からの助けは来ません。そう考えれば何の心配もないんです。

――泣いていいですか? 

佐藤 信じ、そして、ひたすら日々生きていけることを感謝するんです。そして一般国民は、働いて、働いて、働いて、働いて、働くことです。

いまの時代、理想的といえるモデルは存在しません。ドイツの社会哲学者ユルゲン・ハーバーマスはそのような状況において、政治エリートが過去の歴史を再解釈して理念形成することを「未来としての過去」と呼びました。

いまの日本はその状況です。だからみんなで「大丈夫」と強く念ずることが重要であって、そうすれば大丈夫なんですよ、この国は。

――それって、志村けんさんの「だいじょうぶだぁ」の世界?

佐藤 そうですよ。

【高市幕府の柳沢吉保は誰だ?】

――高市幕府の動静ですが、高市将軍が内閣総理大臣秘書官、つまり御傍御用人を総務省出身の松井正幸氏に替えました。その方が、徳川綱吉に仕えた側用人として柳沢吉保のような存在になるわけですか?

佐藤 いや、まだ見えていませんが、いまのところは内閣総理大臣政務担当秘書官の飯田祐二氏でしょうね。

――そのお方が柳沢吉保なんですか?

佐藤 そうだと思います。ただ、幕府や大奥の雰囲気になってきていますよね。

――はい。

佐藤 だけど、あまり民主的な統制が効いていません、幕府の話ですから。

――もちろん幕府ですから、民主的になるはずがございません。そもそも民主主義などというのは西洋人がもたらした外来思想です。大日本にはそもそもそういうふやけた思想はありません。しかし、以前勧めていただいた『元禄太平記』を読むと、いまの高市幕府の様相がすごくよく見えてきます。

佐藤 令和の日本に討ち入りをした赤穂浪士はいませんからね。

――そう、当時の幕府から見るとテロリスト集団がいないんですよ。しかし、現在の地球を見渡すと一人赤穂浪士と言いましょうか、"世界皇帝"のトランプ米大統領は、ベネズエラ、イランとあちらこちらに連続討ち入りにございます。

佐藤 だから、高市将軍がトランプの御前に出たときは、吉保になるといいですよね。

――確かに。エマニュエル・トッドは米国のイラン侵攻について「ウクライナ戦争の敗戦と、経済で中国に負けているのを誤魔化すための攻撃」と語っています。

佐藤 その通りですよ。ウクライナ戦争は米国の戦略的な敗北です。しかし、負けたことが明らかになってしまえば、世界大混乱になります。だから、勝っているフリをして、スクラムを組んで睨みながら後退するんです。米国がやっているのはそれです。

――これも東條英機首相と化している、トランプ米大統領のやり方ですか?

佐藤 はい。だから弱い国が縄張りを手放すとき、我が国が大東亜戦争のときにやっていましたよね? 所期の目的をガダルカナル島で達したので"転進"すると。

――そうでした! 絶対に「撤退」とは口にしない。軍歌までもが『さらばラバウルよ、また来る日まで』となっています。やはり、大東亜国際法が生きているわけですね。

佐藤 そうです。だから、ジェネラル・プライムミニスター東條の発想でトランプ大統領は動いているんです。

――『今次聖戦に勝利の栄冠は必ず皇国の上に輝くであります』と東條ジェネラル首相は仰っています。国体が護持(ごじ)されたから、我が国は負けていないという理屈ですね。

佐藤 国体護持が続いていれば、負けではありません。だから、トランプ大統領の心理状況はとても東條総理とよく似ているんです。ということでこの国、日本は希望が持てるんです。

――「だいじょうぶだぁ」だと。

佐藤 心配ありません。とにかく日本を信じるんです。

次回へ続く。次回の配信は4月24日(金)を予定しています。

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  • 佐藤優

    佐藤優

    さとう・まさる

    作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞

  • 小峯隆生

    小峯隆生

    こみね・たかお

    1959年神戸市生まれ。2001年9月から『週刊プレイボーイ』の軍事班記者として活動。軍事技術、軍事史に精通し、各国特殊部隊の徹底的な研究をしている。日本映画監督協会会員。日本推理作家協会会員。元同志社大学嘱託講師、元筑波大学非常勤講師。著書は『新軍事学入門』(飛鳥新社)、『蘇る翼 F-2B─津波被災からの復活』『永遠の翼F-4ファントム』『鷲の翼F-15戦闘機』『青の翼 ブルーインパルス』『赤い翼アグレッサー部隊』『軍事のプロが見た ウクライナ戦争』(並木書房)ほか多数。

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