友清哲
ともきよさとし
友清哲の記事一覧
ルポライター、編集者。1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。編集プロダクションを経て、1999年よりフリーライターとして独立。2001年から「このミステリーがすごい!」の編集に携わり、エンターテインメントの評論活動を行なう。17年には父親をテーマにしたアンソロジー『I Love Father』に参加し、小説家デビュー。『物語で知る日本酒と酒蔵』『日本クラフトビール紀行』など著書多数。
Instagram【satoshi.tomokiyo】

日本経済に何よりも必要なのは賃上げ! そう信じる週プレは、現役世代の賃金事情を2023年から毎年調査し続けてきました。物価上昇が始まってはや4年。ベアはどこまで浸透した? ボーナスは? 原油高やAIの影響は? 総力調査した!
まずは、あらゆる業種で急速に導入が進むAI。現場からは、過渡期ゆえの混沌が見て取れる。【みんなの給与明細2026年 春闘お疲れさまでしたVer. Part1】
*本特集に出てくる年収やボーナスは、額面の金額です。すべて個人に対する取材によるもので、職種や業界の平均値ではありません
* * *
●口コミ削除業者(男/20代後半)
<年収>600万円
<冬のボーナス額>40万円 【前年比】↓
<ベアは?>なし
企業や店舗にとって、ネガティブな口コミへの対策は死活問題で、そのコンサルティングがうちの仕事。
やり方としては、悪い口コミの上から新しい口コミを書くという地道なものもあれば、企業名を検索した際に出てくるネガティブな予測ワードを、AIによって消すこともある。
例えば、AIにひたすら「企業名+住所」などで検索させ、さらにヒットしたページを2ページほどスクロールするなど、"人間らしい動き"を100パターンほど自動化し、予測ワードの優先順位を上げるのが常套手段。
ただし、検索AIに取って代わられると、このモデルも終わるだろう。
●パナソニック グループ会社 開発・予算管理(男/30代後半)
<年収>1100万円
<冬のボーナス額>310万円 【前年比】↑
<ベアは?>あり
家電業界でも長らくAIの活用が進み、活況を呈したが、そのブームも2025年をもってピークアウトした気がする。
今年から明確に業績が落ちており、社内でも退職者が増えている。家電は20年以上ずっと不況の状態だったので、AIは一時的な特需だったのかもしれない。
自分の仕事はリファービッシュという、返品されてきた商品のうち正常に動作するものをクリーンナップして、再び製品として市場に戻すこと。
しかし単純作業なのでやりがいがなく、社内ではどちらかというと窓際部署に相当する。年収は悪くないから、割り切ってしまえばいいのだが......。
●SEO記事制作会社 制作ディレクター(男/30代後半)
<年収>520万円
<冬のボーナス額>25万円 【前年比】↓
<ベアは?>なし
クライアント企業の自社メディアの運営を請け負い、その一環としてSEO記事と呼ばれる、自社ページへ呼び込むための記事を量産している。
具体的には、まず検索結果の上位10~20記事を徹底的に分析し、見出しのつけ方や構成、共通する要素などから勝ちパターンを抽出。そのメソッドを落とし込んだ記事を配信し、クライアント企業のURLへの流入を稼ぐというものだ。
しかし、こうしたSEO領域はすでに過当競争で、単価の下落と納期の短縮が激しいのが大きなネック。
つまり速くて安い記事の量産が求められていて、当然、クライアント側がAIを使って記事を内製する流れが生まれている。おかげでこちらとしては価格交渉力が激しく低下していて、売り上げ減少が続く。
せめてコスト圧縮のために、自社でも外部ライターへの発注を抑え、AIへの切り替えを進めているが、品質担保などの問題で、かえって人手による工数が増えてしまった。
取りあえず既存案件の維持はできているが、ジリ貧なのは間違いなく、SEO業界全体の先行きは不透明。今後、記事制作が本格的に自動化される流れは止められず、新たな勝ち筋も見えてこないことから、そろそろ転職を考え始めている。
●アクセンチュア コンサルタント(男/20代後半)
<年収>650万円
<冬のボーナス額>50万円 【前年比】新卒1年目なので比較不能
<ベアは?>なし
ITコンサルがメインの会社なので、最近は「AIを作りたい」という依頼が多く、仕事自体は全体的に増えている。しかし安い仕事を大量に請け負う傾向があるため、給料は上がらないし、昇進も望めない。
それでもクライアントごとにシステムをどう最適化し、構築していくかを考える役どころだから、早期にAIに取って代わられそうなプログラマーやシステムエンジニアよりは失業リスクは低いように思う。
ほかのコンサルファームはAI導入に合わせて採用を減らしているようだが、アクセンチュアはAI関連の案件にうまくアジャストしているので、もうしばらくは人員を増やしていけるのではないか。これはITコンサルからAIコンサルへと、早期に方針転換したことが大きい。
振り返ってみれば、ゼロ年代のITバブルの後、10年代にクラウドバブルとシステムのアップデート需要が重なり、それが落ち着き始めた20年代にこのAIバブルが到来したという流れがある。
もちろん先のことはわからないが、AI関連の需要はもうしばらく続くはず。一方で、AIに仕事を奪われたプログラマーなどの流入も考えられるから、労働市場は人材の供給過多となるだろう。今後の待遇悪化は避けられないのではないか。
●千葉大学 事務職(男/20代後半)
<年収>500万円
<冬のボーナス額>43万円 【前年比】↑
<ベアは?>なし
大学の会計業務担当で、教授の出張費処理や経費精算などをやっている。
自治体でも民間企業でもない国立大学には、独特のルールがかなりあって面倒くさい。何しろ今どき、電子決済の類いが一切使えず、すべての処理に印鑑が必要で、書類ひとつをチェックするにしても、わざわざ本キャンパスから別キャンパスに郵送しているのが現状。DXのかけらも見られない世界がここにはある。
仮にAI導入の話が進んだとしても、独自ルールがややこしすぎるため、千葉大専用のAIを作らなければならないはずで、巨額の初期投資が必要になるに違いない。
●校閲会社 校閲者(男/30代前半)
<年収>400万円
<冬のボーナス額>25万円 【前年比】→
<ベアは?>なし
プロの校閲者の現場にはAIはまだ浸透していない。社内では「今後AIをどう使っていくか」という議論もしているが、今のところはせいぜい、客先に提出する議事録作りに使う程度。
ただし、アナログゆえにAIを敬遠しているというわけでもない。世に出る前の原稿をAIに読ませることに、セキュリティの問題がまずある。公開前のコンテンツの取り扱いにはやはり慎重にならざるをえず、判断できずにいるのが現状。
もちろん、クライアント側がAIで校閲を済ませるケースも増えていくのだろうが、結局、最終チェックは人がやることになる。