【武蔵野うどん】フードコートで食べられるご当地グルメ「竹國」の武蔵野うどんが好きすぎた:パリッコ『今週のハマりめし』第234回

取材・文・撮影/パリッコ

ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。

それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。

そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。

* * *

埼玉県の東松山という街に、局地的に存在する酒場カルチャーがある。

それは「やきとり」と呼ばれるご当地料理なのだけど、実際は串に刺した豚のカシラ肉を焼いたもので、それぞれの店が独自にブレンドした辛いみそをつけて食べる。戦後の物資不足のころ、近くにあった食肉センターからカシラ肉が安く仕入れられたことが由来で、元祖の店から同スタイルのやきとりが徐々に広がり、現在でも市内に数十軒の店が存在する。

そんな東松山やきとりを初めて食べ歩いたのはもう10年ほど前。酒飲みのバイブル的漫画『酒のほそ道』の作者、ラズウェル細木先生らと、取材も兼ねて東松山でハシゴ酒をした。それが本当に楽しくて「次回は宿をとって1泊取材にしましょう!」と話していたんだけど、やっと実現したのがつい先日。実に10数年ぶりの東松山再訪となった。

元祖と言われる「大松屋」のやきとり元祖と言われる「大松屋」のやきとり
というのは本題ではなく、散々飲み歩いた翌朝、同行のメンバーのみんなで、せっかくだから観光をして帰ろうということになった。調べてみると「吉見百穴(よしみひゃくあな)」という古墳時代後期の横穴墓群が近くにあるらしい。しかも、メンバーのなかにひとり、埼玉県や東京の多摩地域で親しまれるご当地うどん「武蔵野うどん」のファンがいて、吉見百穴の近くに良いうどん屋があると言う。というわけで、2日目は実に観光客らしく、吉見百穴&武蔵野うどんツアーとなった。

「吉見百穴」「吉見百穴」
ところが吉見百穴の目の前にあった茶屋が非常に飲める店で、朝からみそおでん、せいろそば、おみやげコーナーのせんべいなどをつまみに、瓶ビールやご当地カップ酒などを飲みまくってしまう。すぐそばのうどん屋へ移動したころには、もうお腹がいっぱいだ。

というわけで僕は、ものすごく美味しそうな武蔵野うどんをすすっている人々を見ながら、ここでもまた、ただ瓶ビールを飲むのだった。

その時同行者が食べていたうどんその時同行者が食べていたうどん
その不完全燃焼感がここのところずっと心に残っていた。またそれとは別件で、数日後にひとり、東松山を訪れる機会があった。前回の訪問で別の新しいネタを見つけてしまったからなんだけど、それに関しては別に機会があれば。

とにかく、僕にとって東松山は、やきとりの街であると同時に、うどんの街にもなってしまった。取材の空き時間、吉見百穴まで行く時間はないけれど、どこかで武蔵野うどんが食べられないだろうか。と思って調べてみたら、駅からほど近い「ビバモール東松山」という商業施設のフードコートに、「武蔵野うどん 竹國」という、チェーン店ではあるが武蔵野うどんが食べられる店があるらしい。ひとまずいい、それでもぜんぜん!

「ビバモール東松山」「ビバモール東松山」「武蔵野うどん ビバモール東松山店」「武蔵野うどん ビバモール東松山店」

竹國は埼玉県や東京の多摩地域を中心に展開するチェーン店。コシのある太麺を、地場産の野菜と肉がたっぷり入った温かい汁で食べる「肉汁うどん」が名物。メニューには「鳥汁うどん」「カレー汁うどん」「甘辛汁うどん」などのバリエーションもあるが、まずはやっぱり「肉汁うどん」(税込900円)だろう。トッピングやサイドメニューもいくつかあり、「かき揚げ」(180円)と「缶ビール」(400円)も頼んでしまおう。

券売機メニュー券売機メニュー
うどんの量が「並盛(350g)」「中盛(500g)」「大盛(700g)」とあって、どれも追加料金なしで頼めるらしく、だいぶ太っ腹だ。迷ったけれど初めてだし、僕は定食屋で必ずごはんを小盛りにしてもらう男なので、今回は並盛にしておく。

均一料金がありがたい均一料金がありがたい

席を確保してしばし待っていると、うどんが完成したことを知らせる呼び出しベルが振動し、カウンターに受け取りにいく。刻みねぎ、あげだま、しょうが、七味唐辛子、ごまなどがフリーで、ひとまずねぎとしょうがをうどんの横に添えて。

「肉汁うどん」「かき揚げ」「缶ビール」「肉汁うどん」「かき揚げ」「缶ビール」
念願だった武蔵野うどんは、見るからにうまそうだ。麺が太く、断面が独特な、数学で言う「∞」のマークのような形になっていて、表面がつやつや。つゆは、豚肉、あぶらあげ、ねぎや玉ねぎなどの野菜がたっぷり。

見た目がもううまい見た目がもううまい具だくさんな肉汁つゆ具だくさんな肉汁つゆ

さっそくうどんを数本とり、つゆにどっぷりとつけて思いっきりすする。ズズーッ! もぐもぐもぐ......うわー、これはいい! まず、熱々のつゆがしっかりと甘じょっぱく、そこにだしの香りと豚の旨味も加わって問答無用。そこに太めのうどんが絡まる。この麺が、噛みごたえしっかりながら、武蔵野うどんと聞いて想像するハードなイメージよりは硬すぎず、つるつるもちもち感もある。武蔵野うどんとさぬきうどんの中間くらいというか。で、噛めば噛むほど広がる小麦の味。これはもう、うどんという名の快感体験だ。

つゆもうどんも完璧つゆもうどんも完璧

しばらく夢中ですすっていて思い出したんだけど、このうどん、僕がかつて最も愛したあの店の味に似ているかもしれない。以前この連載でも取り上げた、西武池袋本店の屋上にあった「かるかや」だ。麺の荒々しさ、それでいて繊細さもある味わい、つゆのガツンとした濃さ。近い! ような気がする......。まぁ、自分のバカ舌に加え、最後に食べたのが数年前だから、あてになる感想ではないのだけど、それでもなんだか嬉しい。

かき揚げがまたすごい。たった180円とは思えないほど巨大で、見るからにからりと揚がっている。難儀しながら持ち上げて、いったん肉汁に上下を浸し、また皿に戻す。これでじゅわっと味の染みたおつまみかき揚げの完成だ。

巨大なかき揚げを巨大なかき揚げをつゆにひたせばつゆにひたせば肉汁かき揚げ!肉汁かき揚げ!
ざくざくっとした歯ごたえと油の香ばしさ。メイン食材の玉ねぎの甘さ。アクセント的に入る小海老の香りのバランスも素晴らしく、キンキンの缶ビールにこのうえなく合いすぎる。

終盤はもちろん、かき揚げ、肉汁、つゆを合体させ、かき揚げ肉うどんとして食べる。フリーのすりごまも加えてみたら、これまた合う。

かき揚げ肉うどんかき揚げ肉うどん
食べはじめはあまりの勢いに中盛や大盛にしなかったことを後悔したけど、食べ終えたら大満腹。よくばっていたら地獄を見たな。とにかく大満足だ。

ここ、竹國はチェーン店なので、きっと武蔵野うどんの世界には、もっともっと個性的なうどんもあるのだろう。そもそも僕は東京の西側出身者なのに、これまで武蔵野うどんのことを知らなすぎた。今後、新しい世界を開拓する楽しみが増えたことが嬉しい。

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  • パリッコ

    パリッコ

    ぱりっこ

    1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家、イラストレーター。
    著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。2022年には、長崎県にある波佐見焼の窯元「中善」のブランド「zen to」から、オリジナルの磁器製酒器「#mixcup」も発売した。
    公式X【@paricco】

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