南海トラフや首都直下だけじゃない、超巨大地震が北海道で発生する!? 海底の地殻変動調査で わかった衝撃事実! 400年に1度のM9クラス!

取材・文/村上隆保 写真/富田史章(観測装置) 時事通信社

2011年に発生したマグニチュード9の東日本大震災で、地震と津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市付近2011年に発生したマグニチュード9の東日本大震災で、地震と津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼市付近

15年前にマグニチュード(M)9の東日本大震災が発生し、10年前にはM7.3の熊本地震が起こった。そして今、M8クラスの南海トラフ地震発生の可能性が高まっているという。しかし、それだけではない。実は北海道でもM9の超巨大地震が起こるかもしれないという調査結果が出たのだ! どこにいても地震の脅威があることを忘れてはいけない!

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【北海道沖の地殻が32mほど変形している!】

現在、マグニチュード(M)8クラスの揺れが起こる「南海トラフ巨大地震」の発生が懸念されている。また、首都機能がマヒし、死者1万8000人にも及ぶ「首都直下地震」も心配されている。しかし、大地震の恐怖はこのふたつだけではない。北海道にも超巨大地震発生の可能性が迫っているというのだ。

それはどんな規模で、どのような地震なのか? 調査を行なった東北大学災害科学国際研究所の富田史章助教に聞いた。

「北海道沖(千島海溝)では、約400年に1度の間隔で巨大地震が発生していることは、地質調査である程度わかっていました。

北海道の太平洋側の沿岸地域に、過去数千年間にわたり大きな津波が何回も来ていたことがわかる痕跡(津波堆積物)があるんです。

ただ、『その津波が本当に地震によるものなのか』『今後も地震が発生するのか』などについては、不透明な部分が多かった。そこで今回、私たちは千島海溝の地殻変動の様子を調査しました。

海溝型地震は、海のプレート(太平洋プレート)が陸のプレート(北米プレート)の下にどんどん沈み込んでいき、陸のプレートの端がそれに伴ってぐんぐん押されて変形していきます。そして、陸のプレートが変形に耐えられなくなってポーンと戻ったときに地震が起こります。

今、どれくらいプレートにひずみがたまっているかなど、地殻変動の様子は内陸部ならGPSで計測できますが、海中は電波が通らないので計測できません。

では、何を使って計測するかというと音波です。音で距離を測るための装置を海底に設置し、その海上まで船で行ったり、ドローンなどを飛ばして音波を出す。すると、海底の装置が返事をするのにかかった時間からお互いの距離がわかります。

船やドローンの位置はGPSでわかるので、このふたつを組み合わせると海底の装置の位置が特定できるんです。

私たちは、この観測装置を用いた海底観測点を3ヵ所に設置して、2019年から5年間計測を続けました。5年間でどれくらい海底の地殻変動が起きたかを調査したんです」

その調査から何がわかったのか?

「海のプレートと千島海溝に近い陸のプレートの海底の観測点が、ほとんど同じスピードで年間約8cm動いていることが確かめられました。これは海のプレートと陸のプレートが、境界で固着している(完全にくっついている)ことを示しています。

図の中央やや右下にある3つの矢印が海底の観測地点。海のプレート(G23)と陸のプレート(G22)が、年間約8cm西北西に移動していることがわかった。陸上の矢印は国土地理院の観測による動き(図は富田氏のプレスリリースより作成)図の中央やや右下にある3つの矢印が海底の観測地点。海のプレート(G23)と陸のプレート(G22)が、年間約8cm西北西に移動していることがわかった。陸上の矢印は国土地理院の観測による動き(図は富田氏のプレスリリースより作成)

日本周辺では、海のプレートは年間約8cmのスピードで動いています。固着していなければ、海のプレートが陸のプレートの下に8cmほどスルスルと沈み込むだけで、陸のプレートは変形しません。

しかし、固着している場合は海のプレートが沈み込んだぶんだけ陸のプレートが変形します。この変形が、将来的に地震が発生するためのエネルギーになります。

前回、この地域で巨大地震が起こったとされているのが約400年前です。仮に年間8cmの動きが400年間続いていたとすると、32mほど陸のプレートが押し込まれて変形しているということになります。誤差なども踏まえて試算すると20.5~30mです。これは、非常に大きな変形です。

例えばM7の地震だと地震時に解消される変形(すべり)は1mくらいです。M8でも数m~10mいかないくらい。

11年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の変形は最大で約60mでしたが、その半分でも大きな津波を起こすには十分に大きな変動です。もし巨大地震によって30mのすべりが生じた場合、北海道の太平洋沿岸地域に最大20m近い津波が押し寄せる可能性があります。

約400年前に北海道沖で起きた巨大地震は、津波堆積物からM8.8程度だったと推定されており、今回の調査から前回と同程度の巨大地震が、いつ起きてもおかしくないと考えられます。

また、もし約400年前の地震よりも広範囲ですべりが起これば、マグニチュードはそれより大きくなる可能性も否定できません」

東日本大震災とあまり変わらない、M9クラスの巨大地震が明日にでも起こる可能性があることが、今回の調査でわかったというのだ。

【千葉県房総沖でもM8級の地震が!】

こうした超巨大地震の発生には〝地震空白地帯〟が関係していると富田氏は言う。

「北海道の太平洋沖は、地震空白地帯と呼ばれています。陸に近い場所では地震が活発に起きていますが、陸から離れた千島海溝に近い所ではほとんど地震が起こっていません。小規模な地震もないんです。

記録されている地震は約400年前の巨大地震だけです。そこから考えられることは、ふたつあります。

ひとつは、地震がまったく起きていないということは、『地震を起こすようなエネルギーが蓄積されていない』場合。海のプレートが陸のプレートの下にスルスルと滑り込んでエネルギーが蓄えられていない状態です。

もうひとつが『完全に固着していて、小さな地震も起きずにエネルギーをどんどん蓄えている』場合。北海道沖は後者でした。

宮城県の沖合を震源とした東日本大震災も、陸に近い所ではM7程度の地震が30年に1度くらいの間隔で起きています。しかし、日本海溝に近い沖合では、非常に長い間活発な地震活動がなかった地震空白地帯でした。南海トラフの辺りも小さな地震は少なく、ここも地震空白地帯と言ってもいいでしょう」

北海道沖、南海トラフ、首都直下、千葉県房総沖地震の推定・想定震源地。この中で北海道沖、南海トラフ、千葉県房総沖は地震空白地帯と呼ばれている北海道沖、南海トラフ、首都直下、千葉県房総沖地震の推定・想定震源地。この中で北海道沖、南海トラフ、千葉県房総沖は地震空白地帯と呼ばれている

ということは、地震空白地帯で起こる地震は巨大地震につながりやすく、逆に言えば地震が頻繁に起こっている所には、巨大地震は襲ってこないということなのか。

ちなみに、今年に入ってから関東地方では、震度3以上の地震が9回起こっている。

「実はそうとも言えないんです。地震空白地帯でも、陸に近い所では地震活動が活発だったりしますし、内陸の活断層で起こる地震もあります。最近、関東地方で地震が多いからといって『エネルギーが解放されているので大丈夫』とは言えません。

大事なのは、大きな地震が起こるかどうかは、実際にプレート境界の断層に近い所で地殻変動の様子を調査してみないとわからないということです」

では、今後はどのように地殻変動の調査を行なうのか?

「今回の調査で千島海溝に設置した観測点は3点ですが、昨年、十勝沖に新たに観測点を設置しました。日本海溝については現在、23地点で観測を続けています。

千島海溝と日本海溝の北部は、内閣府も巨大地震が発生してもおかしくない場所として想定しているので、観測点をさらに増やしたいと思っています。

それから、もうひとつの海域は千葉県の房総沖です。すでに2年前に観測点を設置しています。ここは1677年に房総沖の日本海溝沿いでM8の『延宝房総津波地震』が発生し、非常に大きな津波があったことで知られています。

ただ、このときの記録が非常に少なく〝謎の地震〟ともいわれているんです。ですから、ここで巨大地震が発生する可能性があるのかどうかを調査しています。

1677年の地震では、東京のほうにも津波が押し寄せたと考えられているので、しっかりと調査したいと思っています」

北海道沖の海底に設置された観測装置。この装置で5年間、千島海溝の海底の変形を調査した北海道沖の海底に設置された観測装置。この装置で5年間、千島海溝の海底の変形を調査した

北海道沖では、M9クラスの巨大地震が、いつ発生してもおかしくないという。また、千葉県房総沖でもM8クラスの巨大地震が起きる可能性があるという。

巨大地震の脅威は、西日本の南海トラフだけではない。東日本の北海道や東北、首都圏にもあるということを、しっかり意識して、日頃の備えをしてほしい。

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