日本最大のスカウト集団「ナチュラル」の実態に迫り、若者の意識の変化も明らかにした一冊!『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』(著:清水將裕 +日本橋グループ*)

取材・文/武田和泉

スカウトグループ「ナチュラル」の実態に迫った著者の清水氏スカウトグループ「ナチュラル」の実態に迫った著者の清水氏

国内最大級のスカウトグループ「ナチュラル」。女性を性風俗店やキャバクラに紹介して店舗からあっせん料を受け取る集団だが、その違法性・暴力性から警察が匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)の代表格として重点マーク。1月には公開手配の末に会長が逮捕されるなど、本腰を入れた解体作戦が展開中だ。

地域限定の数十人単位のサークルに過ぎなかった従来のスカウト集団とは一線を画し、ナチュラルは全国に2000人ものメンバーを擁するとされる。さらに、独自に開発した秘匿性の高い通信アプリで効率的な運営を推進。組織防衛を徹底する謎多き集団に、NHKで警視庁キャップを務めたジャーナリストの清水將裕氏が中心となって斬り込んだのが本著だ。

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――ナチュラルを取材対象に選んだ理由は?

清水 NHKでは事件取材を長く担当し、暴力団や半グレの番組も制作しました。退局した2024年10月当時、ナチュラルは反社会的組織の進化系であるトクリュウの中でも最も勢いがあり、しかもメディアや警察が実態をつかめていなかった。こうした組織が生まれる背景を含めて、明らかにしたいと考えました。

――関係者取材を通して見えたナチュラルの特異性とは?

清水 デジタルとアナログの並立です。私も取材の過程で彼らが使うアプリを確認しましたが、そこではおびただしい数の掲示板やチャットグループが運用され、責任者の指示が小まめに飛び、業績拡大が図られている。

また、アプリ上で出退勤の打刻が義務づけられ、各自の位置情報も把握される。動きが不自然であれば警察に逮捕されたと見なし、遠隔操作でアプリを消去する徹底ぶりです。

一方で、警察の捜査をかわすため、交通系カードや配車アプリ、電子決済の利用は厳禁。給料は、上司と公園などで待ち合わせて現金で手渡される。効率化と組織防衛の意識が組織内に浸透しています。

――本書でも組織防衛についての言及が目を引きました。

清水 警察や、強盗目的のほかの不良による尾行への警戒心を植えつけるため、仲間内で尾行し合う「バグ」という制度があります。これは、メンバーを尾行して自宅の特定に成功したら報奨金がもらえるというもの。その原資は、尾行された者とその上司の給料の天引きです。

密告も推奨していて、戦時中の隣組のような相互監視のシステムが働き、不満分子は暴力で制裁されることになります。

――ナチュラルのメンバーはどういった人たちでしょうか?

清水 ほかのスカウト集団のように不良上がりのオラオラ系も一定数いますが、早慶やMARCH卒の高学歴の者も多いです。総じてコミュニケーション能力が高くて礼儀正しく、一般の会社勤めでもこなせるタイプ。違法なことをやっているという意識は低く、彼らはナチュラルを「会社」と呼びます。

――秘密結社のような組織ですし、取材も大変だったでしょう。

清水 取材に応じるメンバーがいても、その人は直属の上司としか接点がないので組織全体についてはわからない。手広く取材をする必要があり、実態をつかむのに時間がかかりましたね。

――1月に会長の小畑寛昭容疑者が逮捕されました。彼はどういう人物でしょうか?

清水 スカウト業界では「木山」という名前で知られています。06年頃に東京・立川で「ランコム」というスカウトグループに入り、その後独立して歌舞伎町に進出し、ナチュラルを立ち上げた。武闘派で鳴らし、業界ではご法度のスカウトの引き抜きもやりつつ、自身のカリスマ性で勢力を伸ばしました。

そして、20年の住吉会系組織との間で生じた乱闘事件で全国的に知名度を広げます。それまでは暴力団と対立してきましたが、事件を契機に協業関係を築く道を選び、ヤクザという後ろ盾を利用しながら組織を全国各地に展開させました。

――小畑容疑者の逮捕で組織は瓦解していくのでしょうか?

清水 それは考えにくいですね。逮捕後も活動は継続していて、給料もきちんと支払われていると聞きます。警察幹部は会長を「10回再逮捕する」と意気込んでいますが、会長不在でも内部のシステムがすでに確立されているため運営は問題ない。

逮捕後にメンバーが200~300人減ったという情報もありますが、幹部たちも「解散しない」と豪語しています。

――若い男たちを引きつけるナチュラルの魅力とは?

清水 彼らは日本の一般的な企業に勤めた場合、無駄な会議や雑務に追われると考えています。20年近くの下働きを経て、やっと一人前として扱われてそれなりの役職に就き、ポストに見合う報酬を得る。こういう企業風土は、「コスパ」や「タイパ」の意識が強い今の若い世代には時間の無駄に映ります。

ナチュラルであれば月収300万円なんてざらで、1000万円以上稼ぐ者だっています。そして、稼ぎによって組織内での役職も上がっていく。現代の若い人たちは、ナチュラルのような実力主義の組織に合理性や魅力を感じるのでしょう。

――若者の意識の変容が組織に投影されているんですね。

清水 はい。彼らにとって、仕事のやりがいや大企業に勤めるステータスは二の次。むしろ、居心地の良さや業務の効率性を優先させます。経済の停滞といった社会的要因もあるでしょう。汗水垂らして頑張っても報われないと思っているんです。

――スカウト摘発に躍起になる警察の狙いは?

清水 まず、彼らは暴力団の資金源になっている。また、順法意識の低い2000人もの若者が集まるシナジーで、犯罪へのハードルが低くなり、新たな事件を起こしかねないという治安悪化への懸念もあります。

――昨年の風営法改正で、あっせんの報酬である「スカウトバック」が禁止になりました。

清水 特に地方の風俗店は、どうしたって自らの求人活動だけではキャストをそろえられない。スカウトの力は必要で、広告費やコンサル料などの名目で付き合いは続いていくでしょう。

そのため、警察の対症療法的な摘発だけでは解決にならない。社会の必要悪として跋扈するスカウトの存在を直視し、女性の性就労の問題も含めた広い視点でナイトビジネスのあり方を改めて考える時期に来ていると思います。

■清水將裕(しみず・まさひろ)
1973年生まれ、長野県出身。99年NHK入局。報道局で警視庁キャップや社会部副部長、『おはよう日本』編集責任者などを務め、主に事件取材や調査報道に携わる。また、NHKスペシャル『ひとり団地の一室で』『職業"詐欺"』『未解決事件』シリーズ、事件の涙『たどりついたバス停で』など数々のドキュメンタリー作品の取材・制作に当たった。2024年10月に独立し、メディア関連会社「日本橋グループ*」を設立。同社所属の取材チームは本著の取材に協力している

■『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』
東京・新宿の歌舞伎町から全国に進出し、今では国内最大規模といわれているスカウトグループの「ナチュラル」。独自の通信アプリを使ってやりとりし、メンバーでさえ会長や幹部の顔を知らないという情報統制の徹底ぶりから、警察による実態解明のための捜査は困難を極めている。そんな組織の現役メンバーと秘密裏に接触し、一度入ったら抜け出せない"沼"とも称されるナチュラルの実態に迫った本邦初のルポルタージュ

『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』講談社 1870円(税込)『捕食 欲望をカネに変えるトクリュウ型犯罪集団「ナチュラル」の闇』講談社 1870円(税込)

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  • 武田和泉

    武田和泉

    風俗・飲食業界を得意分野として月刊誌や情報誌に寄稿。座右の銘は「夜の住人は十人十色」。

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