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ア・リーグ1位タイの14本塁打(5月5日時点)と、入団前の厳しい評価を覆したホワイトソックスの村上
シカゴ・ホワイトソックスの村上宗隆が、MLBでセンセーショナルな存在になっている。開幕戦から3試合連続で本塁打を放つと、4月17日(現地時間。以下同)のアスレチックス戦からは、球団タイ記録で、日本人では昨年の大谷翔平以来2人目となる55試合連続本塁打をマーク。
5月5日の時点(以下成績は同)で、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)と並ぶアメリカン・リーグ1位タイの14本塁打を放ち、長打率.583、OPS.961と、優れた数字を残している。打率は.244で、空振りの多さも指摘されているが、これだけのパワーを発揮しているのであれば文句はないだろう。
「村上に対する評価は極めて難しい。私がこれまでに見てきた中で、最も難しいと言っても大げさではないかもしれない」
フロリダ州オーランドで行なわれた昨年のMLBのウインターミーティングで、あるメジャーの強豪チームのスカウトがそう述べていたのが、今では遠い昔のことのように感じられる。
2022年にNPBで56本塁打を放ったパワー、まだ26歳(ウインターミーティングの時点では25歳)という若さは魅力だったが、当時は三振の多さ、速球への弱さが指摘されていた。そんなマイナスの部分への懸念からか、契約は当初の予想をはるかに下回る2年3400万ドル(約53億円)にとどまった。
しかし......今頃、獲得を見送ったチームの経営幹部はじだんだを踏んでいるに違いない。村上に引っ張られ、直近2シーズンで223敗を喫したチームも17勝19敗と健闘。このままいけば、村上は新人王候補になり、注目度がさらに高まるかもしれない。
懐疑的な見方もあった中で、いきなりこれだけの好成績が残せている要因はどこにあるのか。今年からホワイトソックスの打撃コーチに就任したデレク・ショーモンに問うと、代名詞のパワー以外に3つの要素を指摘してくれた。
まずは「ボールを見極める能力があること」。次に「追い込まれてから打球を引きつけて逆方向へ打つ技術があること」。そして、それらのおかげで「四球も選べて、本塁打も打てるし、逆方向にも打てる。非常に完成度の高い打者になっている」と、35歳の新コーチは村上の打者としての総合力を高く評価した。
加えてショーモン打撃コーチは、野球に臨む柔軟な姿勢と対話技術の高さも特筆する。キャンプ中からスイングについて言葉を交わし、2月中には右手を引いて構える独特のフォームについて村上から意見を求められたこともあったという。
「キャンプ初期に彼のほうから話題に出して、『なぜそれをやるのか』という理由を説明してくれた。ムネとの関係はいい状態にあると思う」
キャンプの時点からコーチと打撃フォームについて話をするなど、英語でのコミュニケーションにも積極的だという
村上は英語力も急速に進歩しており、「もう通訳なしでも簡単な会話はできるし、短期間に多くのことを吸収しているよ」と、称賛の言葉が尽きなかった。
ショーモン打撃コーチが挙げた〝ボールを見極める能力〟にも関連するが、村上の選球眼の良さは特筆されてしかるべきである。三振数はリーグ2位タイの51と多いものの、28四球も同4位。今季から導入されたABSシステムを利用した際の成功率もリーグ平均より高く、ボールがしっかりと見えている印象がある。
「ABSのシステムもありますし、審判のデータも活用しています。自分の中では、日本よりはアメリカのほうがストライクゾーンが狭くなっているイメージです。選手それぞれの身長を測っていますし、それぞれ違うストライクゾーンでやっていますね」
そんな村上の言葉を聞く限り、アメリカのストライクゾーンにも適応できているのだろう。だとすれば、もともとパワーはMLBの中でも飛び抜けている村上の今後は明るいのではないか。
このまま好調を保てば、特に7月は村上にとって重要な月になる可能性がある。地元シカゴでも人気選手になっており、1年目にしてオールスター選手となっても不思議ではない。ホームランダービーの目玉の選手として声がかかることもあるかもしれない。
同時に、8月のトレード期限にも注目株になるだろう。上記のとおり、短期の契約を結んだ村上があらためて移籍マーケットに出れば、多くのチームが補強のターゲットとして興味を持つに違いない。
今季はチーム状況が向上しているとはいえ、まだ優勝争いをするのは難しいホワイトソックス。日本人スラッガーを放出することになっても、その見返りとして複数の有望株の獲得が可能なだけに、悪い取引ではないはずだ。
4月29日には、ロサンゼルス・エンゼルスの菊池雄星(左)と対戦。この日はノーヒットと、菊池に軍配が上がった
一方で、「村上をシカゴに残せ」という声も増えている。米スポーツメディア『The Athletic』のベテラン記者であるタイラー・ケプナー氏は、「ホワイトソックスは村上との契約延長に動くべきだ」と提言した。
「速球が苦手という点が懸念されて割安の契約になったが、私だったら今すぐに村上との契約を延長する。ホワイトソックスは向上し始めている。あと数年のうちに本腰を入れて勝ちにいくとして、その時期まで村上をチームに残すべきだ」
確かに、複数のプロスペクトが芽を出し始めたホワイトソックスは、数年後にプレーオフが狙えるチームになるかもしれない。早ければ来年頃には、大きく飛躍するチームの候補に挙げられることも考えられる。長期的な視野で村上をチームの核に据えたいと考えるなら、再度の契約交渉に動くのも悪くはない。
さまざまな方向性が見えてきているのは、村上の評価が確実に上がっているからこそ。このままシカゴの看板選手となるのか。それとも、優勝を狙う強豪チームから請われて移籍していくのか。どちらに転ぼうと、早い段階で力量を証明した若きパワーヒッターの行く手に、希望あふれるキャリアが広がっていることは間違いないだろう。