
渡辺雅史
わたなべ・まさし
渡辺雅史の記事一覧
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
ウーバーイーツの「12分タイマー」が「8分タイマー」に短縮で大きな問題が?
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第148回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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先月、ウーバーイーツの運営から「届け先で引き渡しができない場合の『置き配』での配達完了を試験導入します」というメールが届きました。
今回は、この制度がどんなものなのか、商品を注文した方にとって何がどう変わるのかを解説します。
届け先で引き渡しができない場合、ウーバーイーツ配達員用のアプリから注文者に到着した旨の連絡を入れると、通称「12分タイマー」と呼ばれるカウントダウンタイマーが自動的にスタート。12分経過しても注文者から応答がない場合は商品を渡さずに次の注文に進んでOK、というのがこれまでの配達員の流れでした。
所定の配達料が支払われる上、料理ももらえるので、スキマ時間に少しだけ働く私にとって、タダでおいしいものが食べられるありがたいルールでした。
ですが、ガッツリ配達する人にとって料理を持ち帰らなければならないというのは面倒なルール。いらない料理を廃棄できそうなゴミ箱なんて都内にはほぼありませんし、わざわざ料理を置きに家に帰るのも時間のロス。
かといって、リュックの中にいつまでも料理を入れておくのも邪魔ですし、汁物やドリンクの場合、別の注文で運んでいる料理を濡らしてしまう可能性があります。
また、12分という時間の長さも大きな問題。ガッツリ稼ぐ人は時給換算で2000円以上稼いでいます。12分タイマーで待たされてからもらえる配達料は、当初の金額よりも色のついたものとなりますが、時給2000円の人が12分働いたらもらえる金額である400円を超えることはありません。つまり、たくさん配達をする人にとってはメリットのないルールです。
注文される方にとっても、商品が届くまで思った以上に時間がかかったので「午後の会議が始まってしまった」「寝落ちしてしまった」といった理由で料理が届かない上、代金を支払わなければならない12分タイマーのルールに納得がいかない人もいるでしょう。
そんな配達員と注文者の双方の声を受けたものが、今回のルール変更と思われます。
ルール変更のポイントは2点です。
●タイマーの時間が12分から8分に短縮
●タイマーのカウントダウン終了後は近くに置き配
ここまで書いてきたことを踏まえると、ガッツリ稼ぐ配達員にとっても、注文される方にも、いいことずくめのルールに思えますが、実は大きな問題点があります。カウントダウン終了後は「近くに置き配」というルールです。
私がよく配達をしている東京・中央区、港区エリアは湾岸地区のタワーマンションをはじめ、たくさんのマンションが建つエリアです。そして、そのほとんどが建物の入口にインターホンがあるタイプで、ここで最初のインターホンを鳴らして注文者に閉まっている建物の中へと通じるドアを開錠してもらい、その後エレベーターに乗って部屋の前に行き、二度目のインターホンを押して商品を渡すという流れとなっています。そのため、12分タイマーを起動させるのは最初のインターホンを鳴らす建物の入口で、というのがほとんどです。
新ルールは「タイマーのカウントダウン終了後は近くに置き配」となっているので、置き配の場所は部屋の前ではなくマンションの入口となってしまいます。
都心エリアでは10階建て以上のマンションは当たり前。タワーマンションだと50階建て以上で1フロアに30部屋以上、1棟のマンションに1000以上の部屋がある建物がたくさんあります。そして、ウーバーイーツを利用する人もたくさんいます。
そんな多くの人が注文されるマンションの建物の入口に置き配をするとなると......どの部屋の人が頼んだものかかわらない料理が建物の入口に大量に積まれる様子が脳裏をよぎります。
ウーバーから届いたメールには「よくある質問」とその回答も記されていて、例えば「Q.注文者の玄関前にアクセスできないなど(例:オートロックの外)、安全な商品の置き場所が見当たらない場合はどうすればよいですか?」という質問があります。こちらに書かれているのは......。
A.安全かつ適切な置き場所が見つからない場合は、サポートへご連絡いただくこともできます。なお、置き配に切り替えずに配達を完了した場合、預かっている注文品はこれまで通り破棄していただいて構いません。一般的な目安として、適切な場所で処分することが近隣への配慮につながります。
と、ふわふわしたアンサーが記されていました。
ウーバーのサポートは基本チャットで、AIによる定型文の回答のラリーが何回かあって、それでも解決しない場合は人間によるチャットが行なわれます。チャットだけで完結するものなので、スマホを使ってチマチマと文字を打たなければなりません。また、私の経験上、やりとりだけで30分以上かかることも当たり前のようにありますし、そもそも解決しないことも多々あります。
となると、ガッツリ配達する人はオートロックのドア前に置く、郵便ポストの中に入れる、処分するといった判断をその場で考え、実行しなければなりません。
こういったことから、建物入口の扉を解除するタイプのマンションに住む方にとって、今回の変更は商品受け取りのルールがシビアになっただけということになります。
ウーバーからのメールによると、今回のルールは「試験運用」で、私はその試験運用の「対象配達員」に選ばれたため連絡したと記されていました。なので現状は「基本12分タイマーで、一部の配達員は8分」というルールとなっていますが、知り合いの配達員に聞いたところ、都内で配達するほとんどの人にこのメールが届いていました。
今後、この制度がどうなっていくのかはわかりませんが、私はウーバーイーツ配達員組合の委員長をやっているので、問題点などあったらウーバーの運営側に「このように変更したらいいのではないか」という提案をしようと思います。