
坂本慎太郎
さかもと・しんたろう
坂本慎太郎の記事一覧
こころトレード研究所所長。ハンドルネームは「Bコミ」。日系の証券会社でディーラー、大手生命保険会社で株式、債券のファンドマネジャー、株式のストラテジストを7年間経験。ラジオNIKKEIや日経CNBCなどの投資番組へのレギュラー出演多数。著書に『プロ投資家が教える副収入1000万円の最短コース』(BEST TIMES books)など
公式X【@bucomi】
国鉄分割により1987年発足。人口減や高速道路網の発達によって鉄道事業で高い成長は望めないため、事業を多角化している
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
熊本地震からの観光回復を目的とした旅行割引キャンペーン「九州ふっこう応援割」が10月から始まった。このキャンペーンで利する上場企業はどこだろうか?
助手 10月から「九州ふっこう応援割」が始まりましたね。1泊以上の旅行や宿泊が原則半額で、熊本県と鹿児島県は最大6割引き。旅行需要の恩恵を受けそうな九州地盤の上場企業っていうと、九州旅客鉄道(JR九州)とか?
坂本 旅行者が増えれば、もちろん鉄道にはプラスだろうけど。ただ、JR九州って、たぶん君が想像するほど鉄道の影響は大きくない。前期は、事業別の営業利益を合計すると約7割が運輸以外です。
助手 鉄道会社なのに?
坂本 そう。というのも、同社が発足した1987年当時、鉄道は年間約300億円の赤字。これだけでは食べていけなかったんです。だから、早くから駅ビルや流通、外食なんかにも手を広げて、収益源を増やしてきたわけ。
助手 鉄道は今も儲かってない?
坂本 最近は立ち直ってきたけどね。運賃改定などもあって、前期の運輸サービスの営業利益は、その前の期からほぼ倍増の239億円の黒字でした。ただ、その間に鉄道以外も成長したから、会社全体では鉄道の比重が昔ほど大きくないんです。
助手 鉄道以外の事業がかなり好調ってことですか。けっこう商売上手なんですかね?
坂本 JR九州には駅も土地もあるし、そこに人が集まるという代え難い強みがあるから。その強みを別の商売にも使ってきたんです。例えば博多駅には、2011年に開業したJR博多シティがあります。約400店の専門店や映画館などが入っているから、鉄道利用者に買い物や食事でもお金を使ってもらえる。さらに、列車に乗らない地元の人も買い物客として取り込める。
助手 なるほど。駅そのものを遊びに行く場所にしたわけですか。
坂本 そういうこと。さらにホテルやオフィス、マンションの開発にも事業を広げてきました。その結果、前期の営業利益は不動産・ホテルが344億円と、運輸サービスを100億円以上も上回ることになった。
助手 それだけ育てば、もう鉄道会社のサイドビジネスって感じじゃないですね。
坂本 立派な柱だよ。ただ、駅ビルやホテルなんかはほかの鉄道会社もやっています。JR九州が面白いのは、本業からいわば飛び地の事業まで積極的にチャレンジするところなんです。例えば、07年にはドラッグストアチェーンのドラッグイレブンを子会社化しました。
助手 駅ナカでやってたんですか?
坂本 いや。街中にも出店して、17年には東京にも進出してた。ただ競争が厳しくなると、23年までにツルハHDへ全株を譲渡しています。
助手 それって、うまくいかなかったってことですよね。
坂本 少なくとも、「大成功したから売った」という話ではない。ただ、うまくいかない事業を抱え続けないところはいいと思います。JR九州は、事業でも資産でも、持ち続けることにはあまりこだわらない。不動産でも、物件の価値を高めて売り、その資金を次の開発に回す「回転型」をとっています。不動産の売却目標も、300億円から500億円に増やしたからね。
助手 思い切りがいいですね。
坂本 そう。限られた資本を、より成長が期待できるところへ振り向ける姿勢は評価できる。配当利回りも約3.6%とまずまず。成長期待と配当を両取りできそうだから、投資先としていいと思うよ。
今週の実験結果
実は鉄道事業よりも不動産やホテルなどの事業で儲けています