蒲生麻由
初代『仮面ライダー』(1971~1973)の放送以降、いまなお高い人気を誇る仮面ライダーシリーズ。最新作『仮面ライダーギーツ』も大きな話題を呼んでいる。10月3日に発売された「週刊プレイボーイ」42・43合併号には「歴代仮面ライダーが大集結」と題し、歴代の仮面ライダー女優たちが登場。最新水着グラビアに加え、インタビューを収録し、各々がシリーズへの想いを披露している。

その特集より、歴代ヒロイン4名のインタビューを、4日間連続で週プレNEWSに再掲載。今回は『仮面ライダー響鬼』(2005~2006)で立花香須実役を演じた、蒲生麻由さんが登場。立花香須実は魔化魍(まかもう)と戦う組織「猛士」に所属する23歳。普段は甘味処で働きながら、主人公・響鬼らをサポート。勝ち気でハキハキした性格で、常に冷静で決断も早い美女だ。作品から得たものや当時の心境、そして仮面ライダーシリーズの魅力を語る。

──蒲生さんは、『仮面ライダー響鬼』に出演される前年、『特捜戦隊デカレンジャー』に出演されているんですよね。

蒲生 ヒロイン役を目指して『デカレンジャー』のオーディションを受けたんですけど、結果的にはなれず、途中で悪役のサキュバスを演じてほしいということで呼んでいただきました。

それで、サキュバスの衣装合わせに行ったら、ボディラインがわかる全身スーツだったんですよ。その衣装合わせで採寸をされているとき、呆然として泣きながら『着れない!』って言った記憶があります(笑)。

当時のマネージャーさんの説得もあってその衣装で出演するんですけど、それまでの自分を超えるきっかけになったと思っているので、『着れない!』って泣いていた小娘を説得してくれたマネージャーさんには感謝ですよね。

サキュバスはテレビドラマでは数話しか出ていないんですけど、予想以上に反響があって、Vシネマ(『特捜戦隊デカレンジャーVSアバレンジャー』)で復活させてもらったり、人生って面白いな、自分が嫌なことをやったほうが世間に認められることがあるし、反響があるんだなと知りました。サキュバスがきっかけで、自分の価値観を押し通すのではなくて、抵抗があるものにも飛び込めるようになったと思います。

──そんなサキュバスを演じた翌年、『仮面ライダー響鬼』のオーディションに参加されて。

蒲生 オーディションはそれまでにも何回も落ちているし、気にするとやっていけないんですけど、『デカレンジャー』でヒロインになれなかったことは、すごく悔しかったんです。その悔しさを原動力に、『響鬼』のオーディションに臨みました。

──オーディションに落ちることを気にするとやっていけないと理解している蒲生さんが、それでも悔しさを抱いていたのはどうしてなのでしょう?

蒲生 子どもの頃から、スーパー戦隊シリーズと仮面ライダーシリーズを見るのが、日曜の朝のルーティンだったんです。見ないと気が済まないというか、それが高校生になっても、大学生になって一人暮らしをしても続いていました。

そんなふうにすごく身近にあったので、いつか出れたらいいなとずっと思っていたんです。戦隊シリーズには悪役での出演だったので、仮面ライダーシリーズでは絶対にヒーロー側の役で出たいという思いもありました。

年齢的に何度も挑戦できるわけではないと思っていたので、次のチャンスはないなと、ラストチャンスのつもりで受けた記憶があります。オーディション自体は、自分のすべてを出し切った後からなのか、記憶がまったくないんですけど(笑)。

蒲生麻由さんが演じた立花香須実(©石森プロ・東映) 蒲生麻由さんが演じた立花香須実(©石森プロ・東映)

──その結果、『仮面ライダー響鬼』で香須実を演じることになりました。平成仮面ライダーシリーズの第6作目に当たる『響鬼』は、"和"をベースにした世界観で、仮面ライダーは"鬼"と呼ばれる戦士であり、敵である魔化魍(まかもう)は妖怪などをモチーフにしています。そんなシリーズ屈指の異色作への出演ということで、当初は不安も大きかったではないでしょうか?

蒲生 不安やプレッシャーもあったかもしれないですけど、感じる暇も考えている余裕もなかったです。モデルの仕事からスタートして、これから本格的に女優に転身しようという時期だったので、この仕事は絶対にこれからの自分に道筋をつけてくれる。そういう思いでした。

──蒲生さんが演じた香須実は、魔化魍と戦う組織「猛士」に所属し、主人公のヒビキ(細川茂樹)たちをサポートする女性でした。香須美は勝ち気で明るい女性でしたが、その役柄はどのように噛み砕いていったんでしょうか?

蒲生 記憶に強く残っているのは、『香須実は長女で、竹を割ったような性格』と監督から言われたことです。撮影が始まった当初は、その言葉にとらわれて、"竹を割ったような性格の香須実"をどうにか自分の中から絞り出そうとしていました。

というのも、実際の私は末っ子の甘ちゃんで、フニャーっとしている性格だから(笑)。だから、忘れ物をしたり、つまずいたりする自分を撮影現場では見せないようにしていました。演技面でも、"竹を割ったような性格"にとらわれて、ひたすらまじめにまっすぐ。でも、そのイメージだけで演じてはいけない。そう気づかせてくれたのは、ヒビキさんと電話で話したシーンです。

電話が途中で切れて、香須美が『もう!』みたいな表情をするんですが、どんな表情をしてもOKが出ない。何をやってもダメで、泣きそうになったときに思わず出たのが、切った後のケータイを自分の額にガンガン打ちつけるという演技でした(笑)。

結果、それでOKをもらえたんです。そこからはまじめなイメージにとらわれず、激しく感情をあらわにする香須美もいていいんだって。そこで演技の幅が広がったし、役に人間的な厚みも生まれたと思います。肩の力も、すごく抜けました。

──第1話のシーンですよね。

蒲生 そうなんですけど、撮影が順撮りではなかったので、あのシーンの前にロケ撮影をしたり、第1話以外のシーンを撮っているんです。そのときは、まだ"竹を割ったような性格"の香須美にとらわれていたんですよね。

──共演者やスタッフとのコミュニケーションで印象深い出来事は?

蒲生 ある回の放送を見て、照明さんがすごくきれいに光を当ててくださっていることに気づいた瞬間があったんです。私をきれいに見せるために、こんなに角度とかを気にして撮ってくれているんだって。

それまでの私は、ただ自分の役を演じるのに必死で独りよがりだったと思います。でも、その照明の緻密さに気づいてからは、スタッフさんたちもそうですし、共演者の方たちともより積極的に、素の自分でコミュニケーションを取るようになりました。

それまでは、さっき話した"竹を割ったような性格"の香須美にとらわれるあまり、待ち時間も素の私を出さずにまじめにしようとして、みんなとは少し距離があったので。

でも、そうじゃなくて素の自分を見せてみんなと気持ちを通じ合わせないと成立しないのが、映像作品の世界。それを教えてくれたのが、『響鬼』でした。

蒲生麻由

──たくさんあるとは思うんですけど、特に印象に残っているシーンを教えてください。

蒲生 まずは、さっきも話した電話のシーンです。あれで役作りのスタートラインが変わったというか。あれがなかったらもっと苦しんでいたと思うし、あそこまで追い込んでくれなかったら殻を破れなかったと思います。

それと、最後の最後にしおらしいことを言って、イブキ(渋江譲二)くんをハグするシーン。あのラストシーンを描いてくれたことで、雨降って地固まるじゃないですけど、私の中で『響鬼』を完結できた。

香須実は物語を通してかなり強気でイブキくんに接してきたけど、香須実の裏側にはちゃんとやさしい気持ちがあった。物語の本筋ではないから、あのシーンはなくてもいいのに、入れてくださってすごく感謝しています。

あのシーンがあったことで、香須美が私の中でストーンと落ちた。今までにないぐらいすんなり、何も考え込むことなく演じられたシーンです。

──『仮面ライダー響鬼』への出演を通して、蒲生さんが得たものは?

蒲生 一人ひとりの愛が集結した形が、映像には出るんだという気づきです。それぐらい、『響鬼』の現場はたくさんの愛であふれていました。だからこそ、視聴者の方にも愛された。そんな『響鬼』に出演して、自分も愛される人間にならなくてはいけないなって。

それまでは、やることをやっていけば、どんなに破天荒な人でもいいと思っていました。私は14歳からモデルをやっていたので、同級生よりお金を稼いでいるという意識があって、人を下に見る時期もあったんですけど、そういう人間じゃ愛されない。

人として愛されなければ、愛される役柄にも作品にもならないんです。そういう生き様を教えてもらったというか、未熟な自分の根っこを叩き直してもらったなと思っています。

──ここまで話していただいたことを踏まえて、蒲生さんが感じている仮面ライダーシリーズの魅力を教えてください。

蒲生 そこにロマンがある、ということだと思います。あとは、やっぱり世の中はヒーローを求めているんだとも思いますね。

私自身が、大人になってもスーパー戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズを見ていたように、人はいくつになってもロマンやヒーローを求めるもの。だから、子どものときに憧れた仮面ライダーが大人になっても好きだし、こんなにも熱心なファンの方たちがたくさんいるんだと思います。できれば、私も仮面ライダーに変身したかった! 最近のヒロインの方たちがうらやましいです!

●蒲生麻由(がもう・まゆ)
1983年3月16日生まれ 埼玉県出身
○最新出演作となる短編映画「Overlong」が、札幌国際短編映画祭のジャパンプレミアに選出