
渡辺雅史
わたなべ・まさし
渡辺雅史の記事一覧
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。
ウーバーイーツにまつわる川柳を発表します!
連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第147回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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毎年話題となる「サラリーマン川柳」。現在はサラリーマンという枠を超え「サラっと一句!わたしの川柳」という名前に変わりましたが、略称は変わらず「サラ川」となっています。
そのサラ川は1月29日に優秀作100句を発表(中にはウーバーイーツにまつわる作品もありました)。大賞へ向けた投票が3月に締め切られ、5月下旬の発表を待つばかりです。
そこで、私の身の回りにいるウーバーイーツ界隈の人に川柳作りを依頼。集まった中から優秀作を決める「ウーバーイーツ川柳」、略して「ウバ川」をやってみることにしました。
まずは、配達員が詠んだものから発表します。
【少しだけ 開いたドアから 手が伸びる】
これは置き配が始まる前によくあった光景です。土日の午前中、おしゃれなカフェで商品を受け取ってマンションへ向かい部屋の前でインターホンを押すと、大体このパターンでの受け渡しとなりました。
おそらく女性の方で、メイクをしていない、もしくは誰だかわからない配達員に顔を見られたくないのでしょう。最近は少なくなりましたが、現金配達を行なう配達員に聞くと「伸びた手の先に5000円札があるパターンがけっこうある」とのことです。
個人的には「手が伸びる」を「ニュッと手が」にすると、動きが出てもっと素晴らしい句になると感じました。
【トリプルの 一件目から タイマーオン】
通称「トリプル」と呼ばれる、3件同時配達の現場を詠んだもの。ウーバーイーツではリュックの中に最大3件分の商品を入れて配達を行ないます。また、配達先で注文者が不在でメールや電話を入れても繋がらない場合、以前、「ウーバーイーツ配達員が注文者からの応答がないときに使う『10分タイマー』が『12分タイマー』に変更!」で書いたように、通称「12分タイマー」と呼ばれるタイマーを作動。12分経過すると注文の商品を破棄して次の配達を行なうことができます。
この場合、配達員に所定の配達料が支払われるので金銭的な損害はありませんが、12分待機するということが配達員にとって深刻な問題となります。これが1件目だと、2件目、3件目の人は配達員の現在位置を示すGPSを見ながらストレスを抱えることになり、BAD評価を受ける可能性が高まります。
さらに最近は配達員評価の中に「オンタイム率」という、到着予定時刻通りに配達できたかどうかの評価が加わったため、12分タイマーの起動は配達員のテンションが下がる大きな要因となっています。
【警官に 止められ遅れ BADつく】
私作の一句です。先日、深夜にラーメンを配達中、自転車歩道通行可の標識のある歩道(右側)を通行していたところ、警官に止められました。そして「ここは通っても大丈夫だけど、自転車は基本左側、歩道は原則禁止なので注意してください。4月からルールが変わって、そういった意識づけを自転車の方に......」と5分以上指導を受けました。
注文者はこの間、おそらく私の動きをGPSで見ていたのでしょう。店も住宅もない場所でずっと止まっている私の位置情報を見てBAD評価をつけられていました。もちろんオンタイム率も下がりました。
続いては、注文者による川柳のご紹介です。
【謎すぎる 突然伸びる 待ち時間】
こちらは配達員の到着時刻がグンと延びる現象を詠んだものです。配達員が決まる前に予想到着時間を出すのもおかしいとは思うのですが......。パソコンやスマホアプリなどのアップデート時間が参考になったためしはないですし、そもそもソフトやアプリはアップデートするもので完成品ではないし、ということを考えると、IT業界は商品やサービスに関する情報は不確定なのが当たり前なのでしょう。こちらも2km先の店に商品を受け取りに行く際、到着予想時刻が3分後となっていて驚くこともあります。
ここは「ラーメンが 到着時間と ともにのび」といった感じで、「のびる」にラーメンと到着時間のふたつの意味を持たせると、より一層味わい深くなりそうですね。
【ドアの前 フラペチーノを 置かないで】
置き配によるトラブルを詠んだ、嘆きの一句ですね。マンションのドアは部屋の中から押して開けるタイプがほとんど。そのため、ドア前にドリンクを置かれたらたまったものではありません。このような被害に遭った人が多いのか、最近は配達員への注意書きの欄に「ドア横に置いてください」「押して開けるドアなので、扉に当たらない位置に置いてください」など、丁寧に指示する方が増えました。
わかりやすい句ではありますが、例えば「置き配の 完了写真を 見て戦慄」と、置かれた側の感情を入れたほうが深い句になると思いました。
【配達員 同じ人しか やってこない】
地方でウーバーイーツを注文されている方からの句。特に早朝や深夜など、配達員や営業している店が少なくなる時間帯は、料理を食べ終わって別の店でスイーツを注文したらまた同じ配達員が来た。朝マックを週3回ウーバーで注文しているが、ほぼ同じ人が運んでくる。といったことが多いそうです。
こちらは「食生活 配達員に 握られる」と、同じ人しかやってこない感じを強調した方が面白そうですね。
次は店員からの一句。
【店内に リュック持ち込む 配達員】
こちらは個人店の方からの句。私がやっているわけではありませんが、なんか申し訳ない気持ちになります。ただ最近は、ウーバーを名乗って商品を盗んでいく人もいるようで、店からの注意書きに「必ずリュックを持って店に入ってください」と指示するところもあり、私はしっかり確認してから店内に入るように心がけています。
個人店の方からなのでこのような句となりましたが、ファミレスのバイトの方なら「睨み合う 配膳ロボと 配達員」と、リュックを持って入ってきた配達員と配膳ロボ、双方とも身動きが取れなくなっている句を思いついたかもしれませんね。
【予定より 早く来たのに 急かされる】
これは最近注文が増える時間帯に出されることがある通称「ピークタイムクエスト」が原因と思われる現象です。昼のクエストは10時30分から15時。夜のクエストは17時から21時30分に出されます。クエストを達成できるかどうかで収入が大きく変わるので、終了時間に近い14時30分以降や21時以降はカリカリする配達員が増えるようです。
以前「ウーバーイーツの新報酬システム『フラットレート』はどのくらい稼げるのか?」でも書きましたが、稼動した時間で計算する報酬体系のフラットレートをうまく使えば、こういったピリつく感じはなくなると思うのですが、運営側が状況の改善に取り組む動きは現在のところないようです。
【ロッカーが 思った感じに 使えない】
大手チェーンではフードデリバリー専用のロッカーを設置。おそらく配達員がロッカーを使うことでレジの業務を軽減する目的で作ったと思われますが、混雑時はまったく機能していないこともしばしば。特にクリスマスの時期のケンタッキーフライドチキンはロッカーが機能していたためしがありません。
ここは思い切ってクリスマスのケンタッキーに絞って「ロッカーを 使うヒマない クリスマス」と詠んでもいいかと思いました。
最後は、どのジャンルにも属さないものを。
【出前館 ウーバーイーツ 7NOW】
ウーバーイーツの川柳、というテーマからは少し外れますが、フードデリバリー川柳としてはうまいのではと思い選びました。
配達員の身としては、最初に紹介した「少しだけ 開いたドアから 手が伸びる」が心にグッとくる感じがしました。皆さんはどの句に共感を覚えましたか?