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J-WAVEの『MIDDAY LOUNGE』でも、たまごサンド特集をやりました
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は「たまごサンド」について語る。
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あぁ、たまごサンド。重すぎず、軽すぎず。ぜいたくすぎず、質素すぎず。ごちそうにもなるけど、日常にも溶け込める、矛盾だらけの存在。静かな顔をしているくせに、やたらと記憶に居座る。今回は、冷蔵ケースの前でしばらく迷った末、「結局これでいいか」という妥協ではなく、「やっぱりこれだな」と手に取ってしまうたまごサンドのすごさについて。
魅力の核心は、おそらく「過不足のなさ」。卵、パン、マヨネーズ。派手な食材は使わないけど、塩気はわずかに輪郭をつくり、マヨネーズの酸味が全体を引き締め、卵のコクがすべてを受け止めてくれる。この完成度の高さは異常。味のレンジでいうと、甘い・しょっぱい・酸っぱい、うまいがすべて共存! しかも、どれも主張しすぎない。だからこそ、何度食べても飽きないのかも。
温度の〝記憶〟も面白いです。たまごサンドは基本的に冷たい。でも口に入れた瞬間、なぜかぬくもりのあるものとして認識される。これはおそらく、卵=家庭料理の象徴みたいなイメージのおかげで、無意識に「誰かが作ってくれたもの」という記憶が呼び起こされるからだと思います。だからなのか、コンビニのものでさえ、どこか人の手の気配を感じてしまう。冷たいのに、心理的にはぬくもりがある。この錯覚がたまごサンドの魔法。
種類の多様さも見逃せない。王道は、細かく刻んだゆで卵をマヨネーズであえた「卵サラダ」タイプでしょう。卵の潰し加減や、こしょうの量、パンに塗るバターの有無などで個性が出ますね。関西圏だと、ダシの利いた厚焼き卵スタイルが主流。甘いものもあれば、からしが利いた大人なものもありますね。
ほかにも、半熟卵タイプや、卵が揚げてあるタイプ、スパイスを利かせているタイプなど、〝新興たまごサンド〟も多数。卵を挟むパンも、食パン(耳を残す・残さないも迷う)からコッペパン、バゲットまで、バリエーション無限。大手コンビニもそれぞれ個性があって楽しい。それでもすべて〝たまごサンドらしさ〟が不思議と崩れていない。
ちなみに、日本のコンビニのたまごサンドは、最近英語圏では「TAMAGO SANDO」と呼ばれています。アメリカやイギリスにある「Egg Salad Sandwich」とは完全に別物の扱いで、今やラーメンやすしと並んでインバウンドの定番グルメとして定着してます。パンのしっとり感、卵のクリーミーさ、味の繊細さが、大量生産とは思えない精度で整えられている。パッケージのスマートさまで評価されてます。
結局のところ、たまごサンドは裏切らない。新商品にありがちな「今回はどうだろう」という緊張はなし。想像したとおりの味が、想像したとおりの優しさでやって来る。この予測可能性は、退屈どころか、むしろ安心の源になってます。
突出した何かではなく、完璧に整えられた〝ちょうど良さ〟。重すぎず、軽すぎず。特別すぎず、平凡すぎず。日常の延長線上にありながら、ほんの少しだけ気分を上げてくれる、たまごサンド。今日も冷蔵ケースの中で、誰かの一日をほんの少しだけ整える準備をして待っています。
●市川紗椰
米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。『鬼滅の刃』の主人公「竈門炭治郎」が「たまごサンド」に聞こえる。公式Instagram【@its.sayaichikawa】