ホンダ新型EV"実質ほぼ0円"の真相 補助金×残クレで前代未聞のバグ発動!!

取材・文/週プレ自動車班 撮影/宮下豊史

今年1月の東京オートサロンで、ホンダブースに姿を現したのが、噂の新型EVスーパーワンの試作車。会場では注目度も群を抜いていた今年1月の東京オートサロンで、ホンダブースに姿を現したのが、噂の新型EVスーパーワンの試作車。会場では注目度も群を抜いていた
5月下旬に発売予定で、すでに先行予約が始まっているホンダの新型EV(電気自動車)、スーパーワン。名車をオマージュしたデザインに加え、国や自治体のEV補助金、残価設定クレジットを組み合わせることで、「実質ほぼ0円になるのでは!?」という驚きの声も聞こえてくる。

にわかには信じ難い話だが、果たして本当なのか。実際に予約した人たちの声を基に、"激安すぎる"裏側を追った。

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【巨額赤字のホンダが放った"切り札"】

ホンダが、いまだかつて経験したことのないほど厳しい局面に追い込まれている。

2026年3月期の連結決算が、同社の見通しで最大6900億円の巨額赤字に転落する可能性が浮上したのだ。

主戦場である米国と中国での販売低迷、さらに追い打ちをかけたのが次世代EV計画の見直しに伴う減損だ。その規模は最大約1兆3000億円に達し、上場以来初の最終赤字は避けられないとの見方が強まる。ホンダブランドの神話は、今、大きな転換点に立たされている。

そんなホンダが起死回生の一手として母国市場に投入するのが、5月下旬発売予定の新型EV、スーパーワン。先行予約の段階から、すでに大きな話題を呼んでいる。

デザインは1980年代に一世を風靡した名車、シティターボⅡ(通称ブルドッグ)を現代的に再解釈したもの。だが、このクルマの本質は見た目だけではないという。

80年代から世界中のクルマを取材し続けてきた自動車評論家の国沢光宏氏は、すでにプロトタイプを試乗した。

「楽しいクルマです。速いだけが求められる時代ではありませんから、いかに安全に、きびきび走れるかが重要です」

通常、EVには変速もエンジン音も存在しない。ところがスーパーワンは、あえてそれらを"演出"として作り込んだ。加速に合わせて疑似エンジン音が高まり、回転数の上昇に応じて軽いショックとともに疑似変速するなど、ガソリン車を思わせる走りだ。

加えてブーストモードをオンにすると、加速性能が一気に覚醒、男心を熱く刺激する。

だが、それよりも国沢氏が驚いたのは装備だという。

「ケチくさいことで知られるホンダが、今回は珍しく装備を大盤振る舞いしている。BOSEオーディオに、Google対応ナビ、ETC2.0まで標準装備です。特にBOSEの音が素晴らしい」

そして、スーパーワンが本当の意味で話題をさらっている理由は、その価格にある。車両本体価格は約339万円。それにもかかわらず、ネット上などでは、「実質ほぼ0円」などと騒がれている。そのカラクリを、同車をオーダー済みの国沢氏自身が明かす。

「東京都在住なら、EVは自動車税が5年間免税。重量税も初回車検まで不要です。さらに補助金がとにかく大きい。国から130万円、東京都から60万円。太陽光発電を導入している世帯なら、さらに30万円が上乗せされます。クルマの置き場所さえあれば、買わない理由が見当たらない。買わなきゃ損です(笑)」

特に、国による現在のCEV補助金のインパクトは大きい。600万円超の高級EVでも、300万円台のスーパーワンでも、支給される補助金の上限は同じ130万円。車両価格が安い分、スーパーワンの割安感は際立つ。

関西出身の"金髪ラリーカメラマン"こと山本佳吾氏も、迷わず発注したひとり。

「正直、このクルマにはそこまで興味なかってん。試乗会にも行ってへんし、実車も見たことない。でも調べたら、ワシの住む東京都は"補助金マジック"が強烈で、『これ買わんやつはアホや』って気分に。納車は10月やで!」

山本氏は4年の残価設定ローンを利用。4年後、残価140万円を据え置いたまま返却すれば、その分を支払う必要はない。結果として、受け取る補助金額が4年間の支払総額を上回る。この"逆転現象"こそが、「実質ほぼ0円」と呼ばれる正体だ。

*国や都、ホンダ公表の資料および見積もりなどを基に編集部が作成 *補助金額が4年間の支払総額を上回るため、「実質ほぼ0円」と表現されている*国や都、ホンダ公表の資料および見積もりなどを基に編集部が作成 *補助金額が4年間の支払総額を上回るため、「実質ほぼ0円」と表現されている
もっとも、EV補助金制度には賛否もある。物価高に苦しむ生活者が多い中、「EVを買える人だけが得をするのはおかしい」「税金の使い道としていかがなものか」という批判もくすぶる。

国沢氏はこう語る。

「来年、同じ補助金額が出るとは限りませんし、原資は約1100億円。予算が尽きれば終了です。スーパーワンは発売前ですが、納車はすでに11月とも聞いています」

山本氏もうなずく。

「平日の午前中にディーラーへ行ったけど、かなりにぎわっていた。隣の商談もスーパーワン。営業さんも『大変好評です』って言うてた。予約した人、周りにも何人かおる」

走りでクルマ好きをうならせ、破格の補助金制度で一般層の心もつかむスーパーワン。果たして巨額赤字に沈むホンダを救う"復活の一手"となるか。

国沢氏は苦笑いしながら、こう結んだ。

「この一台だけで復活はしません。ただ、"魅力的なEVなら売れる"ということを証明してくれると思います」

この"令和のEVブルドッグ"の熱狂はいつまで続くか。補助金終了後に、このクルマの真価があらわになる。

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