「正論路線」産経の紙面に何やら変化の兆しが?(※写真はイメージです)

産経新聞といえば、「正論路線」と呼ばれる右派バリバリの論調で有名だ。ところが最近、その産経の紙面に何やら変化の兆しが......。

「右派路線が基調にあるのはもちろん相変わらずです。ただ、時々『あれ、これって本当に産経?』と驚くような論調の記事が掲載されるようになったんです」(全国紙社会部記者)

例えば、11月18日に掲載された「『朝鮮人虐殺事件』の真相 何が群衆をあおったのか」という記事。産経はこれまで「関東大震災時の朝鮮人虐殺はなかった」という論調の記事を比較的多く紹介してきたが、この記事は多くの朝鮮人が殺された事実を認め、流言を広めたメディアの責任まできっちりと戒(いまし)めている。

その論調は、むしろリベラル寄りといっていい。ほかにも、最近ではこうした記事が散発的に見られるのだ。

この"微妙なマイルド化"の理由は何か? 産経新聞関係者がこうささやく。

「昨年6月に就任した大阪社会部出身の飯塚浩彦社長が、前任の政治部出身社長の下で進められてきた政治部主導の『正論路線』に危機感を抱いているんです。右派バリバリの論調はネトウヨには評判がいいけれど、あまりにも紙面が偏りすぎていると広告主からは敬遠され、広告料が伸び悩んでいる。

社内では『産経は全国紙なのに、広告界からはジャンクメディア扱いされている』と嘆く声も上がるほどです。そこで『正論』色を薄めるために、"嫌韓反中"路線の記事ばかりでなく、中立的な記事も少しずつ掲載されるようになったのです」

ちなみに、産経新聞の2018年3月期決算は9億円の赤字。コスト削減のために販売網を首都圏と関西圏に絞り、「全国紙」の看板を下ろすのではないかとの報道も最近は相次いでいる。

「リストラを断行し、2000人いる社員を1000人に減らすとの噂も社内で飛び交っています。紙を減らし、好調なデジタル部門とのメディアミックスで生き残りを図るため、第一歩として踏み出したのが記事のマイルド化だと社内では受け止められています」(産経関係者)

この動きについて、朝日新聞社OBで『新聞社崩壊』(新潮新書)の著者、畑尾一知氏はこう語る。

「やろうとしている改革の方向は間違っていませんが、いかんせん遅きに失しました。せめて10年前に改革に着手していれば......。論調の修正も、『正論路線』を支持してきた従来の愛読者が離れる側面もあり、経営的にはさほどプラスにはならないでしょう」

畑尾氏は将来、産経新聞の身売りもありうると予測する。

「産経の経営改革は、フジサンケイグループが将来のM&Aを見据えているからかもしれません。リストラは企業価値を上げるための身辺整理。論調の修正も広告対策のみならず、買い手を幅広く探すためという可能性も否定できません」

もし、新聞の種類が減れば言論は先細る。サバイバルに挑む産経の奮起に期待したい。