「進次郎首相」の可能性は永遠にゼロ!? 高市内閣誕生で小泉氏が引いた最悪の貧乏クジ

文/山本優希 写真/首相官邸HP、小泉進次郎公式X

内閣発足の記念写真で、高市首相の両脇を固めたのは、総裁選では小泉氏に届かなかった林氏(総務相)と茂木氏(外相)。小泉氏はその一列後ろに内閣発足の記念写真で、高市首相の両脇を固めたのは、総裁選では小泉氏に届かなかった林氏(総務相)と茂木氏(外相)。小泉氏はその一列後ろに
公明党の離反といった難局を経ながら、日本維新の会の連立入りを取り付けて、なんとか高市早苗新内閣が船出した。初の女性首相というセールスポイントが奏功してか、各社の世論調査では軒並み高支持率をマーク。タカ派の高市氏らしく当面の目標として安保三文書の前倒し改定に言及し、安全保障面での抜本的強化にのめりこむことが想定される。

一方、総裁選で高市氏と決選投票で争った小泉進次郎氏はこれまで縁のなかった防衛相に登用されたが、自民党内からは"タカ市内閣"批判の矢面にさらされるだけという懸念の声が聞こえる。後ろ盾の重鎮の影響力低下もあいまって、「首相の芽がなくなった」という厳しい指摘まで飛ぶ情勢だ。

■防衛相就任もスケープゴートに?

「厳しい安全保障環境をふまえ、緊迫感を持って、高市総理が訴えてこられた戦略三文書の見直しを検討する必要があると認識しています」

防衛相への着任に際して燕尾服で職員に訓示を垂れた小泉氏は、安保三文書の前倒しの必要性を訴えた。国家安保戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画から成る安保3文書は、2027年度までの安全保障計画が記載されている。しかし、長期的な円安に伴う輸入備品の高騰や周辺諸国の圧力を受け、高市氏は前倒しの改定を公言していて、小泉氏もこれにならったかたちだ。政治部記者が語る。

「高市氏には、2022年にハト派の岸田政権で策定された現行の安保三文書では生ぬるく、中国の圧力に抗しえないという思いがある。現行路線では防衛費を2027年度にGDPの2%にするとされているが、高市氏はその引き上げを狙っていて、肝いり政策に据えています」(政治部記者)

2024年の総裁選で対北朝鮮政策について、「金正恩総書記とは父親同士が会っているし、同世代同士で新たな対話の機会を模索したい」と述べて世間を呆然とさせ、国防や外交面での底の浅さを露呈した小泉氏。防衛相として安保三文書の改定という重責を担えるか疑問視される中、自民関係者は次のように指摘する。

「小泉氏は防衛関連での経験や見識がなく、お飾りでしかない。だから、小泉氏には改定にタッチさせず、実際の作業は首相官邸直属の国家安全保障局(NSS)で防衛費増額などの検討が進められるとみられます。NSSは、高市氏が慕った故安倍晋三氏が第二次政権で設置した外交・安全保障政策の司令塔的な機関ですから、なおさらその存在感が高まります。

ただ、国会では一義的には防衛相である小泉氏が野党から追及を受ける立場になり、物価高に庶民が苦しむ中、改定による防衛費の増額への理解を求めなければならない。坊ちゃん育ちの4世議員で、当たりの柔らかさが売りだった小泉氏のイメージ悪化につながる恐れがある。防衛相に抜擢したのは、ポスト高市の筆頭である小泉氏の人気を下げるためではないかという観測も出ています」(自民関係者)

■連立相手の入れ替わりで菅氏が失墜

一方、小泉氏からのバトンタッチで農水大臣の座に就任した鈴木憲和氏は、小泉氏と同学年の43歳。開成高校、東大法学部、農水省キャリアという正真正銘のエリートだ。この鈴木氏は就任早々、「コメの無責任な増産はしない」「価格にもコミットしない」と表明。前政権でコメ担当大臣を自認した小泉氏の政策は全否定される形となった。

次世代の旗手というメッキが剥がれ、苦境に立たされる小泉氏に追い打ちとなるのが、後ろ盾の菅義偉氏の求心力の低下だ。政治部記者が語る。

8月、小泉氏が大阪・関西万博をした際に撮影された、日本維新の会の吉村洋文代表とのツーショット。この相手が2ヶ月後、自らの不遇の原因のひとつとなるとは、思いもしなかっただろう8月、小泉氏が大阪・関西万博をした際に撮影された、日本維新の会の吉村洋文代表とのツーショット。この相手が2ヶ月後、自らの不遇の原因のひとつとなるとは、思いもしなかっただろう
「小泉氏の過去二回の総裁選で、後見役として議員集めなどを担った菅氏ですが、結果はいずれも敗戦。影響力の源泉は、公明・創価学会や維新とのパイプの太さでしたが、公明は連立から離脱。維新は高市氏が握ったため、健康不安も重なってレームダック化が絶賛進行中です。

もともと小泉氏は、先輩議員に叱責されても『私のことを気にかけてくれるのは先輩だけです』と下手に出られる従順さが取り柄。"ジジ殺し"的な処世術で党内の有力者にかわいがられてきましたが、菅氏や前幹事長の森山裕氏といった後見役は、反主流派だし今期限りの引退が囁かれるほどの高齢で先がない。

かといって、同年代の議員は小泉氏の政治家としての見識の乏しさが引っ掛かり、積極的に支持する者は少ない。結局、重鎮たちが政界を去れば、力のある担ぎ手がいなくなるのです。まだ44歳と若いですが、実は今回がラストチャンスだったのではないかと囁く自民議員もいます」(政治部記者)

■麻生氏の不快感

そのうえ、今回の総裁選で、小泉氏にさじを投げたとされるのがあの人物だ。

「麻生派を率いる麻生太郎氏は、当初は小泉氏支持を考えていました。しかし、中盤でステマ騒動が発覚した際、小泉氏は『知らなかった』として陳謝で済ませる一方、小泉陣営に入っていた麻生派の牧島かれん氏が責任を取って広報班長を辞任した。

麻生氏には、小泉氏が責任を取らずに仲間を切り捨てる人物だと映り、高市氏支持へと舵を切る要因になったと言われています。高市政権樹立の立役者として多大な影響力を持つ麻生氏の目の色が黒いうちは、小泉氏には上がり目はないのではないか。

そもそも、小泉陣営は地元の神奈川グループと、旧岸田派から乗り込んできた木原誠二氏らのグループとが反目しあって機能不全に陥っていました。ステマ問題が週刊文春に報道されたのも、陣営内部のスパイによるリークだともささやかれている。実際、出陣式には国会議員が92人も集まったのに、1回目の投票では議員票が80票しか入らなかった。

結局、前首相の石破氏に参院選敗戦による退陣を求めながら、自らの不祥事には正面から向き合わず、そして陣営すらまともに取り仕切れなかったというのが永田町の評価です」(前出自民関係者)

バックに就いてきた重鎮たちが失脚したいま、小泉氏は政治家としての正念場を迎えている。

  • 山本優希

    山本優希

    フリーライター。編集プロダクション、週刊誌記者を経て独立。政界や証券市場が主戦場。

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