ドジャース「WS(ワールドシリーズ)3連覇」のカギは? 先発は「スネル(左)⇒山本(右)⇒スクーバル(左)⇒グラスノー(右)」の順で回せ!! 

写真/時事通信社 共同通信社

いよいよポストシーズンが幕を開けるMLB。ワールドシリーズ3連覇を目指すドジャースは5年連続の地区優勝を決めたが、大谷翔平が一時離脱するなど万全ではない。「1998~2000年のヤンキース」以来となる大偉業へのカギはどこにあるのか。短期決戦を勝ち切るための"最適解"を探る!

※成績はすべて日本時間 9月22日時点

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【勝負の10月へ状態は上がってきた】

5年連続のナ・リーグ西地区優勝を果たしたドジャース。だが、夏場の戦いは一筋縄ではいかなかった。8月(日本時間。以下同)にはカブス、レッドソックス、ブレーブスとのカードでいずれも全敗を喫し、リーグ最高勝率を争っていたブリュワーズとの4連戦も1勝3敗と負け越した。

現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、シーズン終盤で王者らしからぬ停滞が続いたドジャースをさほど悲観してはいない。

「8月は調子を落としましたが、ある程度は仕方がない。勝負の10月から逆算して調整するのがドジャースのやり方ですから。

9月はPS争いから外れたチームとの対戦が多かったですが、捕手も含めて全体を整えてきた。移籍1年目のカイル・タッカーも調子を上げてきており、守備でハッスルするようになった。ようやくチームになじんできた印象です。ケガや不調で戦列を離れていた選手たちが戻ってくれば、PSも十分に戦えるでしょう」

最大の懸案は、やはり大谷翔平だろう。投手としては7月4日を最後に登板がなく、8勝2敗、防御率1.79。打者としても打率.277、30本塁打、OPS.902を残しているが、9月10日にIL(故障者リスト)入りし、しばらく実戦から離れた。

9月に右腕と左膝の不調でIL入りした大谷。PSは打者に専念する9月に右腕と左膝の不調でIL入りした大谷。PSは打者に専念する

「右上腕二頭筋と左膝という重要な2ヵ所を痛めているので、思っているよりも状態は悪いのかもしれません。本調子でないまま戻っても、苦手な左腕が相手なら〝扇風機〟になる可能性もありますが、逆にここぞという場面で本塁打を量産するかもしれない。

いきなりベストの状態まで復活するのは難しいので、WSまでの約1ヵ月で上げていくしかありません。短期決戦では、大谷のような〝主人公〟が爆発しないとなかなか勝ち切れないでしょう」

野手陣には光明も差している。ムーキー・ベッツは9月中旬に3試合で12打数10安打と当たりを取り戻した。

「全体的に良くはないけど、悪くもない。フレディ・フリーマンやマックス・マンシーは経験も頭脳も別格で、相手の細かい癖やベースの踏み忘れまで見ている。多少調子が悪くても計算できる選手です。

控えのミゲル・ロハスは、出場すれば抜群の働きをする川島慶三さん(元ソフトバンクほか)のような存在。こういう選手が短期決戦では効いてきます。

そして、8月下旬に左手を骨折したアンディ・パヘスの復調にも期待がかかります。今季オールスターに初選出されるなど、打撃でも守備でも輝きを放っていただけに、PSを戦い抜く上では必要不可欠な選手です」

今季は初めて球宴にも選出されたパヘス。死球による左手骨折で離脱したが、PSで復活を期す今季は初めて球宴にも選出されたパヘス。死球による左手骨折で離脱したが、PSで復活を期す

【短期決戦仕様の柔軟な投手運用】

過去2年、PSにおけるドジャース投手陣の事情は正反対だった。2024年は先発の頭数が足りず、ブルペンデーを実施して乗り切り、WS制覇。一方、2025年は中継ぎが崩れかけて佐々木朗希をリリーフに回し、山本由伸のフル回転で連覇を達成した。

「今季は先発が盤石です。PSは登板間隔も詰まるので4枚いれば十分。しかも、全員がサイ・ヤング賞クラスです。ブレイク・スネルが万全であれば、『スネル、山本、タリク・スクーバル、タイラー・グラスノー』の順で回すのが最適解です」

スネルは今季、左肘の手術で長期離脱していたが、8月に戻ってからは防御率1.01と圧倒している。

サイ・ヤング賞2度の左腕、スネル。8月の復帰後は神がかり的な投球を続けているサイ・ヤング賞2度の左腕、スネル。8月の復帰後は神がかり的な投球を続けている

「まさに神がかり的なピッチングです。1年を通して稼働するのは難しくとも、しっかり休むととんでもない球を投げる。キャリアを通して2桁勝利は2回しか達成したことがないですが、その2シーズンはピンポイントでサイ・ヤング賞を受賞している投手ですから。

17日のレッズ戦で左股関節の張りを訴えて1イニングで降板しましたが、大事を取った面もあるでしょうし、重症ではないとみています」

今季14勝を挙げ、リーグ屈指の安定感を誇る山本を2番手に置く理由も明快だ。

今季14勝の山本。安定感と右の軸という点で先発2番手が最適か今季14勝の山本。安定感と右の軸という点で先発2番手が最適か

「山本は安定感の塊で計算が立つ上に、右投手。左のスネルとスクーバルの間に挟むのが一番いい。日本シリーズでも『2戦目が大事』とよくいわれますが、山本が控えていれば、初戦を落としたときの保険にもなる。

気になる点があるとすれば、今季は三振が少し減ったこと、初回の失点がやや多いことくらい。とにかく〝勝てる男〟なので、今季もやってくれるはずです」

先発4枚が計算できれば、残る投手の使い方にも幅が生まれる。お股ニキ氏が強調するのは〝役割のタグ〟を外した運用だ。

PSでのリリーフ起用が決まった佐々木。昨季はPS9登板で3セーブを挙げたPSでのリリーフ起用が決まった佐々木。昨季はPS9登板で3セーブを挙げた

「佐々木は昨季と同様にPSでリリーフを務めることが決まりましたが、ジャスティン・ロブレスキーも第2先発で控えてもらうのが一番いい。

私は常々言っていますが、先発や中継ぎという〝タグ〟は外せばいいんです。昨季の山本の連投だって、ある意味アドリブ。最初から予断を持って役割や序列を決めすぎずに対応していくしかないのです」

カギを握るのは救援陣の復調だ。守護神として今季新加入したエドウィン・ディアスは、右肘や首の故障で離脱を繰り返すなど本調子ではないが、19日のジャイアンツ戦で復帰すると、1回無失点、2奪三振と復調の気配を感じさせる。

「ディアスは今季、リリースポイントが下がりすぎて、ストレートとスラッターの分離があいまいになっていました。同じ変化量でも、リリースが下がると縦の落ち幅は小さく感じます。

もう少しだけ上のほうが、本人にとってベストなバランスのはず。ディアスが戻り、最速168キロ右腕のエドガルド・エンリケスが腰の故障から回復すれば、タナー・スコットやアレックス・ベシアらと共に中継ぎのめどは立ちます」

【強者ぞろいのPSのライバルたち】

ナ・リーグで最も警戒すべき相手は、4年連続の地区優勝を決めたブリュワーズだ。昨季のリーグ優勝決定シリーズではドジャースが4連勝で一蹴したが、今季は様相が異なるという。

「ブリュワーズは〝現代版マネーボール〟です。お金はないけど頭を使い、年俸の割に強いチームをつくる。バントを増やしたり、リリーフエースのアーロン・アシュビーの使い方を工夫したり、面白いことをやっています」

MLBトップの防御率1.86を誇るミジオロウスキー。201cmの長身から100マイル超を連発するMLBトップの防御率1.86を誇るミジオロウスキー。201cmの長身から100マイル超を連発する

絶対的エースはサイ・ヤング賞最有力候補の201cm右腕、ジェイコブ・ミジオロウスキーだ。今季は100マイル(約161キロ)超えの投球が、スタットキャスト導入以降で初めてシーズン1000球に達した。

「ジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)の上位互換です。160キロ以上の速球を常時連発し制球もいい。現代を象徴する逸材です。

ただ、球が速すぎる分、変化球が普通の人のカットボールのような動くボールになってしまうことがある。ストレートに合わせておけば変化球にはギリギリ対応できるので、意外と打たれることもありますが、徐々にスライダーを増やして改善傾向にあります」

ブレーブスも不気味だ。8月28日のドジャース戦では、37歳のクリス・セールが山本に投げ勝ち、11奪三振完封を記録。ドジャースとの3連戦を3連勝で締めくくった。

37歳でなおリーグ屈指の防御率を誇るセール。8月にはドジャースを11奪三振完封に仕留めた37歳でなおリーグ屈指の防御率を誇るセール。8月にはドジャースを11奪三振完封に仕留めた

「セールは若い頃からサイ・ヤング賞候補の常連でしたが、スイーパー頼みの投球で、近年はケガもあって不良債権気味に。しかし、同僚のひと言でチェンジアップの落とし方をつかみ、2年前に悲願のサイ・ヤング賞に輝きました。

独特の低いアングルから160キロ超えの速球とスイーパー、チェンジアップを駆使する投手で、大谷が一番苦手とするタイプです」

フィリーズも厄介だ。カイル・シュワーバー、ブライス・ハーパーらの長打力に加え、今夏のトレードで加入した安打製造機ルイス・アラエスも並ぶ打線は強烈。さらに先発には、クリストファー・サンチェス、ヘスス・ルサルドと好左腕がそろう。

「ドジャース目線で見ると、嫌なのはブレーブスとフィリーズ。特にフィリーズは左の剛腕が多い。守護神右腕のジョアン・デュランも、ポストシーズンなら回またぎで4つ、5つとアウトを取りにくるはず。カブスやパドレスよりもやりにくいです」

WSで待ち受けるア・リーグは、東地区のレイズとヤンキースが上位を争う。主砲アーロン・ジャッジが再びIL入りしたヤンキースだが、お股ニキ氏が注目するのは、ア・リーグのサイ・ヤング賞候補に名前が挙がるキャム・シュリットラーら投手陣だ。

ア・リーグトップの防御率1.94を誇るシュリットラー。今季、無名の存在から飛躍を遂げたア・リーグトップの防御率1.94を誇るシュリットラー。今季、無名の存在から飛躍を遂げた

「ヤンキースは今、投手育成がMLBで一番いいかもしれない。シュリットラーはアマチュア時代にそこまで目立つ投手ではなかったのに、体格に合わせてフォームを改造し、サイ・ヤング賞級に変貌。レイズもとにかく投手がいい。勢いのあるレッドソックスやホワイトソックスよりも、勝ち上がってくる可能性は高そうです」

昨季のWS第7戦、ドジャースは9回まで劣勢に立たされながら、ロハスの同点弾で息を吹き返し、延長戦の末に連覇をつかんだ。

「結局、覚えているのは勝ったことだけなんですよね。極限の戦いを、紙一重ですり抜けて最後に勝つ。短期決戦とはそういうものです」

「1998~2000年のヤンキース」以来となる大偉業へ――。王者ドジャースの挑戦から目が離せない。

  • お股ニキ

    お股ニキ

    おまたにき

    野球評論家、ピッチングデザイナー。さまざまなデータ分析と膨大な量の試合を見る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してSNSで活動。その理論を取り入れる選手が急増し、オンラインサロンに40人以上のプロ選手が加入。プロ、アマ問わず、千賀滉大、藤浪晋太郎(共にメッツ)に次いでMLBや甲子園を目指す投手の個人指導を行なう。
    公式X【@omatacom】

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