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今季、本来の姿から程遠いプレーを見せるエース、主砲、守護神たち......。彼らに今、いったい何が起こっているんだ!?
※成績はすべて8月24日時点
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残り1ヵ月余りでレギュラーシーズンが幕を閉じるプロ野球。だが、終盤戦に突入してもいっこうに調子が上向かない選手たちがいる。しかも、ケガではなく、プレーができる状態にもかかわらず......。
髙橋宏斗(中日/投手) 今季は3勝7敗、防御率3.39と苦戦。2軍調整期間を経て、ようやく本来の姿を取り戻しつつある
その象徴が髙橋宏斗(中日)だ。2年前には防御率1点台を記録した右腕が、今季は3勝7敗、防御率3.39といまひとつ。6月からは2ヵ月近く2軍で調整していたため、規定投球回にも届いていない。
現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、この不振を「腕の振りの問題」と指摘する。
「髙橋宏斗はもともと上から投げ下ろす投手でしたが、徐々に腕の振りが横気味になり、ストレートは伸びず、代名詞のスプリットも落ち幅が小さくなった。
開きが早くなりすぎてアングルが下がるやり投げフォームや、『低いアングルから浮き上がるストレートがいい』という発想を取り入れすぎてしまった面はあると思います」
しかし、お股ニキ氏の見立ては悲観一色ではない。
「夏場に入って、縦の変化も、球の速さも強さも戻ってきています。状態が上向いた要因のひとつは、私が以前から勧めているスラッターの有効活用です。
春先は横に大きく滑るだけでしたが、鋭く曲がり落ちるようになり、今では持ち球の中で最も空振りを奪える球種になった。『どう投げればいいか』という原理をつかみつつあるのでしょう。不振組の中では、一番〝出口〟が見えている投手です」
もっとも、髙橋宏斗のように球速が維持できているケースは、今季の不振組の投手では少数派だという。
「成績が上向かない中でもスピードを維持できているのは、髙橋宏斗と高橋奎二(ヤクルト)くらい。それ以外はほぼ全員、球が遅く、キレがない」
有原航平(日本ハム/投手) 昨季まで2年連続最多勝も、古巣復帰1年目の今季は5勝7敗、防御率4.13と足踏みが続く
その典型が、古巣に電撃復帰したものの、期待に応えられていない有原航平(日本ハム)だ。昨季まで2年連続で最多勝に輝いたが、今季は5勝7敗、防御率4.13と足踏みが続く。この現状について、お股ニキ氏は「打たせて取る投手の宿命」と分析する。
「省エネというのは、力を抜くことではありません。打たせて取るには、むしろ思い切り腕を振り、強度を維持したまま球を動かさないといけない。そのため、実は球威低下の影響を強く受けやすいのは、三振を奪って抑えるタイプではなく、打たせて取るタイプなんです。
グレッグ・マダックス(元ブレーブスほか)のほうが現役の最後まで全盛期が続くように見えて、実際に成績を伸ばしたのはロジャー・クレメンス(元レッドソックスほか)やランディ・ジョンソン(元ダイヤモンドバックスほか)でした」
ただし、有原の不振の原因は球威低下だけではない。ソフトバンクから日本ハムに復帰し、環境が変化したことも大いに影響しているのだ。
「ソフトバンクは捕手の配球、内外野の守備が圧倒的で、昨季まではその恩恵をかなり受けていました。ここへきて球速は戻りつつあるので、あとは配球をいかに改善するか。同じことは大瀬良大地(広島)にも言えます」
同じく「球の強度不足」に苦しむのはソフトバンクのふたり。昨季13勝5敗、防御率1.66と圧倒したものの、今季3勝4敗、防御率5.34、被本塁打11と苦しむ大関友久。そして、今季6勝5敗ながら、防御率5.23、与四球31のカーター・スチュワート・ジュニアだ。
「大関は平均球速が明らかに落ちています。それでも強気に押そうとするから、ゾーンの真ん中付近に行ったボールを仕留められてしまう。スチュワートも2年前のようなキレと強度が戻っていません。援護に恵まれて勝ち星はついていますが、この球威のままではポストシーズンで先発を務めるのは難しいでしょう」
ブルペンに目を向けると、不振の意味合いはガラリと変わる。中継ぎの場合、急にダメになったわけではなく、「これまで働いてきた代償」であることが多いからだ。
桐敷拓馬(阪神/投手) 今季は防御率5.89と不振にあえぐプロ5年目左腕。便利屋起用の代償が球の強度に表れているという
「一昨年までの反動が大きいのは桐敷拓馬(阪神)です。昨季は43試合登板、防御率2.84でリーグ優勝に貢献。今季は21試合登板、防御率5.89と成績を落としていますが、これは本人の責任ではありません。
イニングまたぎ、火消し、左のワンポイントと、場面を問わず〝便利屋〟として使われ続けた結果、球の強度が痩せ細ってしまった。7、8、9回が固まっているチームでは、その手前を任されるリリーフが一番先に消耗するんです。
役割は違いますが、〝勤続疲労〟という点では、プロ野球記録の90試合登板を経験した久保田智之・阪神2軍投手チーフコーチ(元阪神)と似た構図だと思います」
これは阪神に限った事象ではない。昨季46試合登板、防御率2.36を記録した鈴木翔天(楽天)は、今季27試合登板で防御率6.08。長年勝ちパターンで投げ続けてきた島内颯太郎(広島)も、今季は12試合登板で防御率4.09と苦しんでいる。
「起用法を変えれば直るのかというと、そう簡単な話でもない。ただし、大ケガをしているわけではないのに球威が落ちてしまっているのなら、しっかり休ませることで復活する事例は多々あります。かつての山﨑康晃(DeNA)も、登板過多で崩れかけたときに1~2週間のリフレッシュを挟んで見事復活したことがありました」
一方、別の理由でブルペンの計算が狂っている例もある。
「中継ぎの不調をすべて勤続疲労でくくってはいけません。入江大生(DeNA)は昨季22セーブを挙げたのに、今季は先発に回されて7試合登板で防御率6.90とパッとしない。これは適性の問題です。入江は短いイニングを全力で投げるのが向いている投手なので、中継ぎに戻してリフレッシュさせれば、球威はすぐ戻ると思います」
新戦力が夏場に失速するパターンもある。ホセ・キハダ(ヤクルト)は今季21セーブを挙げながら、防御率3.89、与四球23と内容は不安定だ。
「キハダは日本人になじみのない速いフォームと、高い強度のストレートでシーズン序盤は圧倒していました。ただし、投球の9割以上がストレート。現役時代の藤川球児・阪神監督(元阪神ほか)でさえ7割程度です。夏に球威がやや落ち、打者に軌道を見極められ、高めのボールをはじき返されるようになりました」
野手の不振組について、お股ニキ氏の分析はある一点に収束していく。体の重さだ。
「不振の選手は、年齢やコンディション不良で体重が増えすぎてしまい、体のキレを失っていることが多い。球が速く変化球のキレもいい投手が多い現代野球において、瞬発力のないスイングを続けていてはなかなか打てません」
山川穂高(ソフトバンク/内野手) 今季46試合出場で打率.175と精彩を欠く鷹の主砲。一方で打球速度は依然としてトップクラス
その象徴が、山川穂高(ソフトバンク)。今季46試合出場、168打席で打率.175、9本塁打と大苦戦しているのだ。
「打球速度そのものは申し分なく、当たれば飛ぶ状態ですが、バットが球に当たらない。山川はもともと波の激しいタイプでもあり、昨秋の日本シリーズでハマった打撃スタイルをもう一度取り戻せるか」
丸 佳浩(巨人/外野手) 今季51試合出場で打率.169と低迷。FA加入8年目にして、最も苦しいシーズンを過ごしている
同じ文脈で名前が挙がったのは、丸 佳浩(巨人)とアリエル・マルティネス(日本ハム)。
丸は51試合出場で打率.169、2本塁打。マルティネスも21試合出場で打率.139、2本塁打。共に大不振と言っていいだろう。
アリエル・マルティネス(日本ハム/捕手) 来日7年目の今季は打率.139と大不振で、出場はわずか21試合。スイングに鋭さを欠いているという
「丸は広島時代から割り切って打つタイプでしたが、年齢を重ねて体重も増えた分、スイングのキレが落ちています。マルティネスも昨季からスイングがやや鈍く、速い球に間に合っていません」
打撃を崩した若手についても、見立ては明快だ。
門脇 誠(巨人/内野手) プロ4年目の今季は打率.160と打撃の形を完全に崩している。守備センスは依然として球界屈指
今季58試合出場で打率.160と沈む門脇 誠(巨人)はスイング自体が崩れているという。
「門脇は守備のセンスが抜群で、坂本勇人の後継者として私も非常に買っていました。ところが、今季は打撃の形が変わってしまった。
もともと前でとらえるタイプなのに、後ろに重心を残して球を呼び込む、真逆の動きに〝改悪〟。どれだけ偉大な人のアドバイスであっても、合わないものは合わない。誰に言われたかではなく、自身の特性やタイプに合った動きを見極め、いかに取り入れて極めるかが重要です」
小園海斗(広島/内野手) 昨季、自身初の首位打者と最高出塁率のタイトルを獲得。今季は拙守が目立つシーンも多い
昨季のセ・リーグ首位打者、小園海斗(広島)も、今季101試合出場で打率.257、1本塁打と数字を落としている。
「2018年のドラフトで『一番いいのは小園だ』と私ははっきり断言しました。だからこそ、今季の数字は物足りない。守備でも走塁でも、本来の軽やかさが見えてこない。せっかく野球で生きていける素質を持っているのだから、今という時間を大事にし、もう一度野球に集中してほしいです」
ベテラン勢には「フィジカルの寿命」という壁が立ちはだかる。とりわけ、守備負担の大きいポジションでその傾向は顕著だ。
坂本勇人(巨人/内野手) プロ20年目の今季、50試合出場で打率.164と振るわず。ただ、左腕の遅い変化球を仕留める技術は健在だ
「坂本勇人(巨人)、今宮健太(ソフトバンク)、源田壮亮(西武)のように、全盛期にショートで出ずっぱりだった選手は体の消耗が早い。二遊間やセンターは常に全力プレーを要求されるので、フィジカルの寿命が短いんです。坂本は今季50試合出場で打率.164で、ストレートに振り遅れる場面が増えています」
ただし、お股ニキ氏は〝光〟も見いだしている。
「坂本は頭のいい選手なので、左投手の遅い変化球は今もうまく仕留めています。衰えを自覚した上で、もっと抜本的にスイングを改造するなど、スーパースターのあがきをもう少し見せてほしいです。
源田も今春のWBCでは打撃が良かったのですが、全盛期の〝無限に動けそうな体〟からは変わってきました。浅村栄斗(楽天)も、もともと軌道の大きいスイングで、若い頃はパワーとスピードでなんとかしていましたが、球速の上がった現代野球では、速いボールに間に合わないシーンが増えています」
山﨑康晃(DeNA/投手) 現時点でキャリアワーストの防御率6.10を記録。インステップの矯正が裏目に出たようだ
投手で衰えが見えるのは、山﨑康晃。今季は防御率6.10と、守護神としては厳しい数字だ。
「山﨑は昨オフに減量し、右打者側へ踏み出すインステップを正面向きに矯正しましたが、これが裏目に出たとみています。
インステップは実は悪いものではなく、あえてやる価値すらあるもの。右打者からすればイヤですし、投手・大谷翔平(ドジャース)やジェイコブ・ミジオロウスキー(ブルワーズ)も意図的に少し三塁側へ踏み出しています。
日本では矯正したがる傾向がありますが、山﨑の場合は本来の持ち味まで削れてしまった。今はどの球種でも空振りが取れていません」
彼らが再び輝きを取り戻すことはできるのか?
今季は大野雄大(中日)が復活を印象づけ、MLBでは菅野智之(ロッキーズ)が2年連続2桁勝利を達成。柳田悠岐(ソフトバンク)も、一度は限界説をささやかれながら盛り返した。
復活組とそうでない選手との違いについて、お股ニキ氏は「もともとのポテンシャルの大きさ」と言い切る。
「菅野も大野も柳田も、沢村賞やMVPを受賞するクラス、つまり、フィジカルを含めたもともとのポテンシャルが桁違いだった。だからこそ、一度沈んでも、フォームを調整して球速を戻したり、守備を捨てて打撃に専念したり、必ずなんらかの手を打って復活してきます。
現代野球ではアスリート性が高まり、〝昔の名前〟ではごまかしが利きません。裏を返せば、肉体をつくり直し、フォームをイチから組み立て直せる選手には、まだ生き残る道が残っているということです」
夏はもう終わる。本稿で名前が挙がった面々の中から、秋に「戻ってきた」と言わせる選手は現れるのだろうか。