『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

今週は作家6名による短編小説集『行きたくない』で『ポケット』を書き下ろした加藤シゲアキさんが登場!

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──人生が動いた映画は?

加藤 高校生の頃、友人に勧められてすごく衝撃だったのが『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(00年)でしたね。もともとひねくれた性格で、周りではやっていた恋愛映画や王道のファンタジー作品があまり好きになれなくて。だから、この作品と出会ったときには「こういうのが見たかった!」って感動しました。

──あまりにも衝撃的すぎて、僕は1回しか見れてないです......。

加藤 確かに、なかなか2回はいけないですよね。ラストシーンのせいか、「嫌い」っていう人もいますし。でも、僕は「これは本当にバッドエンドなのか?」って思うんです。

気持ち悪いし、すごくいやな終わり方なんですけど、主人公が本当に望んだ結末ではあるから。この作品の以前、以後で自分の中の映画観が変わったかもしれないですね。

──ハッピーエンドかバッドエンドかっていうのは小説を書く上でも影響を受けてます?

加藤 確実に受けていると思います。『ピンクとグレー』を書く上でも参考にしました。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はどんな作品を書いていても頭にちらつきますね。

──大人になってから見て印象に残っている映画は?

加藤 公開は昔なんですけど、今年見て度肝を抜かれたのは『クーリンチェ少年殺人事件』(91年)。

──台湾の巨匠、エドワード・ヤン監督の作品ですよね。

加藤 DVDを買って持っていたんですけど、4時間くらいあるのでなかなか手を出せず。でも実際に見てみたら、「30年近くたっているのにこんなにおもしろいんだ」って衝撃を受けました。

──自分が俳優業をする上で参考にされている作品はありますか?

加藤 もちろん、「こういう方々のようになりたい」と思った作品はたくさんあります。邦画なら行定勲監督の『GO』(01年)や、犬童一心監督の『ジョゼと虎と魚たち』(03年)や『メゾン・ド・ヒミコ』(05年)は高校生の頃から大好きでしたね。

窪塚洋介さんやオダギリジョーさんとかに憧れていて。当時、すでにジャニーズでデビューしていたこともあり、自分の中では映画って、「出演している役者に憧れるもの」でした。

──10代は憧れちゃいますよね。

加藤 ジャニーズのみんなもけっこう影響受けていましたよ。「あいつ、今日ちょっとしゃべり方、窪塚さんっぽいな」みたいな(笑)。

──なるほど(笑)。逆に今は作り手目線で見ることが多いですか?

加藤 そちらのほうが増えましたね。

──加藤さんの場合、原作者としても演者としても関われるじゃないですか。どっちがやりたいですか?

加藤 いやー、すごく難しいですね......。やはり映画が好きすぎるんでしょうね。

──すごく映画愛を感じます。

加藤 実はまだ映画に出たことがなくて。やはり初期衝動は役者への憧れだったので、「いつか自分も」っていう気持ちはあるんです。でも同時に好きすぎるあまり、「おこがましい」という気持ちもあるんですよね。夢のひとつではあるんですけど。

★後編⇒角田陽一郎×加藤シゲアキ(タレント・小説家)「小説家として、言葉以外のもので表現する映画に憧れる」

●加藤シゲアキ(KATO SHIGEAKI)
1987年生まれ、大阪府出身。アイドルグループ「NEWS」のメンバー。2012年に『ピンクとグレー』を上梓して小説家デビュー。作家6名による短編小説集『行きたくない』(角川文庫)が発売中

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