高市首相が史上初「年内2回目の総選挙」を仕掛ける!? 増長する維新、"党内抵抗勢力"の不穏な動き、不透明な重大2法案の行方......

写真/共同通信社

第2次高市改造内閣の顔ぶれ。初入閣は7人、閣僚経験者の再入閣は3人だったほか、日本維新の会からも1人が閣僚入り第2次高市改造内閣の顔ぶれ。初入閣は7人、閣僚経験者の再入閣は3人だったほか、日本維新の会からも1人が閣僚入り
9月発足の第2次高市改造内閣。一時、41%まで下がっていた内閣支持率は45%に回復する(毎日新聞調査)など視界良好、フレッシュな顔ぶれで、10月5日から始まる臨時国会へ!

......と思いきや、早くも党内外で無視できない不和が。さらに「史上初の年内2回目の解散」というとんでもない"未来予測"まで飛び出た。奇々怪々の永田町、その深淵をのぞき込め!

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【工夫に満ちた高市人事】

「18人中10人が交代する大きな改造でしたが、ご安心ください。皆さんのカウンターパートはみんな留任しました」

内閣改造直後の日米首脳会談で、高市早苗首相がトランプ米大統領にこう語りかけたのは9月22日のこと。

カウンターパートとは、ここではアメリカ側の閣僚と同じ役割を持った大臣を意味する。

(左から)茂木敏充外相、赤沢亮正経産相、片山さつき財務相は第2次内閣でも続投(左から)茂木敏充外相、赤沢亮正経産相、片山さつき財務相は第2次内閣でも続投確かに茂木敏充外相、片山さつき財務相、小泉進次郎防衛相、赤沢亮正経産相ら、これまで対米交渉に当たった主要閣僚は軒並み留任となっている。5500億ドル(約80兆円)もの対米投資をはじめとする日本からの貢ぎ物を確実に手中にしたいトランプ政権にとっては、それなりに安心できる改造人事だったのかもしれない。

だが、国内に目を向けると、今回の高市首相による人事は本当に"安心"できるものなのだろうか?

折しも10月5日から秋の臨時国会が始まる。政府はこの国会でエネルギー確保や外国人の土地取得制限関連など、21本の法案を提出する予定だ。

この中で高市政権にとってリスキーな法案がある。「衆議院議員の定数削減法案」と「消費税減税法案」の2本だ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏が言う。

「いずれも野党からだけでなく、自民党内からも異論が出ている難しい法案。高市首相が多数で強引に法案を成立させようとすれば、野党の審議拒否や自民党内からの抵抗で、国会運営に行き詰まってもおかしくありません」

もちろん、高市首相も2法案成立のハードルが高いことは百も承知。そのためか、今回の内閣改造にもハードルクリアのために"工夫"を凝らした跡がうかがえる。

そのひとつが藤井比早之(ひさゆき)総務相(55歳)や井林辰憲(たつのり)国交相(48歳)といった、官僚上がりの議員をあえて出身省庁の大臣に登用するというサプライズ人事だ。その数は留任した片山財務相を含めると、18人中5人になる。

旧自治省(現総務省)の官僚だった藤井比早之総務相(右)や検察官出身の山下貴司法相(左)など、計5閣僚が出身省庁のトップに旧自治省(現総務省)の官僚だった藤井比早之総務相(右)や検察官出身の山下貴司法相(左)など、計5閣僚が出身省庁のトップに
この人事の意図を自民関係者がこう説明する。

「出身省庁の大臣になるのだから、担当する政策には精通している。当然、国会での答弁は安定し、野党の追及に動じることもない。国会答弁に苦手意識のある高市首相だけに、5大臣を自分の代わりにしっかり答弁してくれる防御壁として配置したということです」

経産省出身の元衆院議員、福島伸享(のぶゆき)氏もこううなずく。

「官僚上がりの議員が出身省庁のトップに就くというのは、実はかなりレアな人事なんです。

役人にとって入省年次の上下は絶対なのですが、大臣の年齢によっては役所時代の上司に命令を出さないといけない。若い大臣にとってこれはやりにくいし、場合によってはその省庁の慣習に縛られたり、言いなりになってしまう恐れがある。

だから、こうした人事はなるべく避けるのが、これまでの自民党政権の知恵でした。しかし高市首相は、その人事をむしろ積極的に行なった。高市首相にとって、大臣は国会での答弁係に過ぎず、政策の判断や調整は自分がやるということなのでしょう」

工夫は党人事にも見られる。国会運営を知り抜く古参議員が担うことの多い国会対策(国対)委員長に、46歳の村井英樹衆院議員を起用した。

46歳という若さで自民党国会対策委員長の重責を担うことになった村井英樹元官房副長官46歳という若さで自民党国会対策委員長の重責を担うことになった村井英樹元官房副長官
村井氏は当選6回、岸田政権時代に官房副長官を務めたことがあるが、大臣経験はない。水面下で野党相手に国会の舞台回しをするにはあまりに初々しい。前出の自民関係者が言う。

「実は村井氏は熱烈な国会改革論者。首相の予算委員会出席は原則不要とし、その時間を高度な政治判断や首脳外交などに充てるべきと主張してきた。

そんな村井氏は国会答弁を嫌う高市首相にとって、ぴったりの人材です。野党と交渉し、できるだけ自分の国会出席を減らしてくれるはずと期待し、国対経験の乏しい村井氏をあえて国対委員長に抜擢したんだと思います」

ただし、国対委員長としての村井氏の資質はまったくの未知数だ。

「国会審議は与野党の合意で進めるのが原則。相手を論破するというより、互助と譲り合いの精神で議論の舞台を設定する。だからこそ、法律に基づく正式な機関でない国対の場では『そちらで野党に花を持たせるから、こちらでは与党に譲ってほしい』などと、舞台裏の取引をしてきたんです。

村井氏は、そんな難しい仕事をこなしながら、高市首相の望むように国会を回せるのか? 多くの議員が『やれるものならやってごらん』という感じで見ているはずです」(前出・福島氏)

【石井幹事長更迭の余波】

秋の臨時国会で与野党激突のヤマ場になると目されているのが参議院審議だ。

現在、参院は与党の自民党、と日本維新の会を合わせても過半数に4議席足りない状況にある。前出の鈴木氏が言う。

「衆院は自民315、維新36。3分の2を上回る多数を持っているだけに、野党が抵抗しても数の力で2法案の採決へと持ち込める。

しかし、与党過半数割れの参院はそうはいかない。もし、衆院において強行採決などをして参院に送られることにでもなれば、国会は大荒れ必至でしょう。野党が審議拒否し、国会が空転することもありえます。ちなみに、こういった不正常なまま参院に持ち込まれた法案を国会用語で『荷崩れした』と表現します」

与党の自民党内にも地雷は埋まっている。

今回の改造で注目された参院自民の人事がある。それは"参院のドン"と目されていた石井準一参院幹事長が退任へと追い込まれたことだ。

先の特別国会で、2026年度予算の年度内成立にこだわる高市首相に対して、石井前幹事長は野党との熟議を重視し、審議に時間をかける方針を貫いた。そのため、予算成立は11年ぶりに4月上旬までずれ込み、この失態に怒った首相が石井氏排除へと動いたとされる。前出の鈴木氏が言う。

「この人事に石井氏は仲の良い議員に電話で不満をぶちまけたという話を聞いています。石井グループは40人ほど。これに、主要閣僚からただひとり閣外に去った林芳正(よしまさ)前総務相のグループ約40人を加えると80人の勢力になる。

総務相を退任した林芳正氏は、次回の自民党総裁選への出馬をすでに表明。党内の反高市の旗手になれるか総務相を退任した林芳正氏は、次回の自民党総裁選への出馬をすでに表明。党内の反高市の旗手になれるか
林氏は高市首相が8月末に行なった人事希望アンケートを白紙で提出するなど、来年秋の自民総裁選出馬を視野に、首相と距離を置き始めた。

ここに党税制調査会の幹部を辞任した小渕優子氏、石破茂前首相など、高市首相の積極財政策や党運営に不満を覚える議員らが集まって異論を唱えるようなことになれば、党内政局に発展します」

ともあれ、臨時国会での野党反発は確実だ。2法案のひとつ、消費税減税法案の財源(2年間で約10兆円)はいまだ示されていない。その金をひねり出す責任者の片山財務相は財源明示の時期を「(財務省の査定が進む)12月第2週頃になる」と発言した。

この時期設定が「火種になりかねない」というのだ。前出の自民関係者が心配する。

「これでは減税法案なんて、まともに審議できるはずがない。10兆円をどこからどうひねり出すか、その道筋が見えないまま、野党に法案の審議をお願いしても乗ってくるはずがない。事実、野党関係者も財源の説明がなければ審議に応じようがない。場合によっては審議拒否もありうると、今から息巻いています」

前出の鈴木氏も言う。

「財源提示が12月中旬。なのに、審議と採決はそのはるか前の10~11月だなんて、順序があべこべ。収入の当てがないのに、お金はどんどん使うと決めるようなもので、財政民主主義の否定です。野党からすれば、この点は高市政権への最大の攻めどころとなるはずです」

野党の攻勢時に、高市首相は自ら非主流派へと追い込んでしまった石井グループなどと一致協力して法案成立へと動けるのだろうか?

【維新入閣の誤算】

連立相手の維新を巡っても、高市人事の危うさがちらつく。今回の改造で、高市首相は維新の前幹事長を大臣に起用している。中司宏(なかつか・ひろし)規制改革担当相だ。

「これまで維新とは閣外協力の範疇(はんちゅう)での連携でしたが、閣内に大臣を出してもらって維新との関係を強化したいというのが高市首相の意向でした。今回の改造でやっとその願いがかなったわけです」(前出・自民関係者)

日本維新の会から初入閣となった中司宏規制改革担当相だが、収賄に関する疑惑を向けられており、波乱の船出に日本維新の会から初入閣となった中司宏規制改革担当相だが、収賄に関する疑惑を向けられており、波乱の船出に
当初、首相は吉村洋文代表の閣内入りを希望していたとされる。維新の地方議員のひとりがこう語る。

「吉村代表は高市首相の大のお気に入り。携帯で話し込むことも多く、首相は吉村代表を頼りにしていたようです。

ただ、フタを開けてみると吉村氏入閣のサプライズはありませんでした。しかも入閣した中司氏は枚方(ひらかた)市長時代に談合罪で有罪が確定した議員で、高市政権にとってはプラスどころか、マイナス要素の多い人事でした」

どうして吉村代表を起用できなかったのか?

維新には地方議員が中心の大阪維新の会と、国会議員が中心の日本維新の会のふたつのグループがある。前者の中核が吉村氏、後者の中核が馬場伸幸前代表だ。

「このふたつのグループは、どうにも反りが合わず、党運営などでもよく揉めるんです(笑)。入閣のプロセスでも吉村グループを牽制(けんせい)するように、馬場前代表が盛んに『総務大臣か官房長官がいい』などと自身の入閣希望を口にしていた。

こうなると吉村グループ、馬場グループのどちらに大臣ポストを差配しても党内がギクシャクする。そこで苦肉の策として、当選3回ながら、性格が温和で両グループの橋渡し的役割をこなしてきた中司氏に白羽の矢が立ったというのが党内の理解です。これなら両グループの間にしこりは残りませんから」

ただ、そのバランス人事の主に早くもスキャンダルが。中司氏が枚方市長だったときの側近だった初田豊三郎元大阪府議が「談合で建設会社から受け取った現金3000万円の一部を中司氏に渡した」と、メディアに告白したのだ。

内閣改造直後に新任大臣のスキャンダルが発覚し、政権支持率が下落するのはよくあるパターン。臨時国会でも中司大臣は野党の追及の的になることは間違いない。

ただ、維新にその責任を感じる様子はない。それどころか、「大臣を出したとはいえ、1ポスト。しかも内閣府特命大臣で省庁のない軽量ポストだ。総務省や国交省など、省庁持ちの重量ポストを含め、2ポストはもらうべきだった」という欲深な声も聞こえる始末。高市首相にとって地盤固めだったはずの維新入閣が、逆に政権へのダメージになりつつある。

【改造内閣の真価は】

今、臨時国会の先行きを巡り、永田町でささやかれていることがある。それは現行憲法下で初となる年2回の解散・総選挙があるかもしれないという観測だ。

「臨時国会が混乱し、重要2法案成立の見通しが立たないということになれば、高市首相が年末に今年2回目(1回目は2月8日投開票)となる解散・総選挙に打って出ることになるかもしれません」(前出・自民関係者)

年間2度の解散・総選挙は、1894年に日清戦争などの影響により帝国議会で実施されたことはあるが、現行憲法下では皆無。もし現実となれば、戦後初のケースとなる。

今井絵理子参院議員の内閣府副大臣就任は今回の内閣改造の隠れたサプライズ......と言えるかもしれない今井絵理子参院議員の内閣府副大臣就任は今回の内閣改造の隠れたサプライズ......と言えるかもしれない
ただ、自民の衆院議席は315。これだけの議席をなげうってまで解散するなんてことが本当にあるのか? この疑問に前出の福島氏がこう答える。

「与党過半数割れの参院で重要2法案が否決されたら、首相が解散を決断する確率はゼロではありません。高市首相は今の高支持率であれば、もう一度選挙を戦っても現状の315に近い議席を取れるという手応えがあるでしょう。

とはいえ、本気でなくても解散風を吹かすことで、『今、解散は困る』と日和(ひよ)って法案成立に協力する野党が出てくることも期待できる。こっちが本線でしょうね。

いずれにしても高市首相は解散含みで2法案の成立を狙ってくるはず。その仕掛けに野党はどう対応するのか? 臨時国会では野党の胆力も問われることになるはずです」

第2次高市改造内閣の真価は臨時国会の69日間で測られることになる。

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