山本優希
山本優希の記事一覧
フリーライター。編集プロダクション、週刊誌記者を経て独立。政界や証券市場が主戦場。
第2次高市改造内閣の顔ぶれ。「高市一強」を反映した首相の「好き嫌い人事」との指摘もある
9月17日、第2次高市改造内閣が発足した。2月の総選挙で空前の勝利を収め、いまも高い支持率をキープする中での人事異動には、高市早苗首相のイケメン贔屓(びいき)がにじみ出た布陣だとして、自民党内からは早くも不満がくすぶっている。
世間を震撼させたのが、改造内閣発足に伴う首相官邸階段での記念撮影だった。高市氏は後方にいた細野豪志復興相を自らの右隣に手招きした。そして、長身の細野氏を見上げるように10秒以上も凝視。その様子を収めた映像がSNS上で拡散し、「見過ぎだろう」といった冷ややかな声が飛んだ。
省庁を所管する大臣でもないのに、細野氏の内閣における序列は高い。衆参両院本会議場の「ひな壇」ではナンバー2とされる演壇の右側に。閣議前の閣僚応接室でも高市氏から見て右側の席が用意された。首相不在時の臨時代理の順位は、木原稔官房長官、茂木敏充外相に次ぐ3位だ。
もっとも、閣僚の当選回数を見れば茂木氏の12回に次いで細野氏が10回と、実は2位につけており、年功の物差しに沿った処遇だとする見方もできる。また、高市氏と距離を置く旧二階派に所属していた細野氏を厚遇することで引きはがしを狙ったという観測もある。
それでも、細野氏といえば民主党議員として菅直人政権で入閣を果たし、テレビの討論番組では党内きっての論客として自民批判を繰り返していた記憶がいまも世間に残る。2021年の自民入党の際は、地元県連が強く反対した経緯がある。こうした経緯を経ての抜擢(ばってき)について、政治部記者が語る。
「高市氏は改造にあたって、党所属議員に役職希望アンケートを書かせました。これについても、『雇用主のつもりか』という不満があった。そのうえで細野氏を重用したのだから、ベテラン議員からは『よそから来た人間を登用するなら、他に処遇すべき人間がいるだろう』という恨み節も聞こえる。
タレントと浮名を流した細野氏の風貌の良さは広く知られたところで、あの"見つめる"一幕も相まって、高市氏の面食いが人事に反映されているのではという臆測が飛んでいます」(政治部記者)
不記載議員として批判を受けながらも農水相として初入閣した旧安倍派の簗和生氏(左)。自民公認で臨んだ2月の衆院選では比例復活だっただけに、民意を得た人選なのかどうかは疑問が残る
似た構図として永田町界隈で挙げられるのが、村井英樹氏の国対委員長への起用。閣僚経験がないままでの国対委員長への就任は極めて異例だ。自民党関係者が冷ややかに述べる。
「国対委員長は野党との水面下での折衝が求められ、場数がモノを言うポスト。衆院で圧倒的多数を握っていることからの野党軽視のあらわれともいえるが、さすがにキャリアが乏しい印象が否めない。
ただ、村井氏は東大卒の元財務官僚という経歴に加えて精悍(せいかん)な顔立ちで女性人気が高く、出身の旧岸田派ではプリンス的な立ち位置だった。『結局は見た目込みの評価では?』と勘繰る向きもあります」(自民党関係者)
高市氏といえば、衆院選における日本テレビの党首討論で、共演した元・嵐の櫻井翔を前に思わず「顔が小さい」と口にする一幕が話題になったことがある。高市氏の地元である奈良県でもイケメン好きが根強く伝えられる。
「地盤である天理市の市長とは12年の衆院選で戦って、高市氏が勝利した経緯がある。敗れはしたものの高市氏からの評価が高く、天理市長に当選後は自民党の地元支部で顧問を務めている。その抜擢の裏では、高市氏のプッシュがあった。記者との懇談でも、『うちの市長、イケメンなのよ』と声を弾ませていたことがあったそうです」(地元関係者)
厚遇組の陰で割を食ったのが、総務相だった林芳正氏だ。昨年の総裁選では、党内リベラル派から一定の支持を集め、「ポスト高市」の一人に挙げられるが、閣外放出となった。
「前回の総裁選に出馬した茂木氏や小泉進次郎防衛相、小林鷹之党政調会長が留任しているのに、一人だけ追い出された。恰幅の良い体型で親しみやすさを感じさせるタイプで、官房長官や外相を歴任して政治家としての手腕は高いものの、いまいち地味という印象が付きまといます」(前出・自民党関係者)
もう一人、党内ポストで割を食ったのが石井準一参院幹事長だ。石井氏は立憲民主党や公明党など野党に太いパイプを持ち、少数与党の参院で手腕を発揮してきた。それでも交代となったのは、本年度予算案の審議日程がずれ込んだ際に高市首相との間で確執が生じたためとされる。
「実務能力より心証で切られたとみる向きは少なくない。石井氏は参院自民のドン的な人物で影響力は大きい。来年の総裁選では、子分の議員を束ねて林氏を推すことになるでしょう。イケメン重用人事から漏れたおじさんたちの逆襲に目が離せません」(前出・政治部記者)
「働いて働いて」を掲げて政権をスタートさせた高市氏だが、記者会見や国会答弁に立つ機会を絞り込むことへの批判が繰り返される。また、広島の原爆死没者慰霊式・平和祈念式に出席した8月6日は現地を早々に離れ、しかも北朝鮮による弾道ミサイル発射まであったのに、歯科受診には3時間も費やした。
看板と実態のズレを指摘する声もあるなか、来年に控える総裁選を現状のイケメン布陣で勝ち抜けるのか。「働き方」だけでなく、「人の見方」もまた問われている。