【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】エネルギーマネジメントはメルセデスが一枚上手。フェラーリはどう対抗する? アストンマーティンのアップデートは? 夏休み前の2連戦は見どころがいっぱい!

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

現代F1を象徴するような戦いが見られたイギリスGP、その後のベルギーGP、ハンガリーGPの行方についても、ファン目線で思いを巡らす堂本光一現代F1を象徴するような戦いが見られたイギリスGP、その後のベルギーGP、ハンガリーGPの行方についても、ファン目線で思いを巡らす堂本光一

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE52

連戦となった第8戦オーストリアGPと第9戦イギリスGPは、チャンピオン争いを繰り広げるメルセデスとフェラーリの両陣営が1勝ずつ挙げるという結果に終わった。ただ、それぞれのレースを制したのは、ここ数戦、不調に陥っていたメルセデスのジョージ・ラッセルとフェラーリのシャルル・ルクレールだった。

チャンピオンシップをリードするメルセデスのキミ・アントネッリはマシントラブルもあり、大量のポイント獲得には至らず、その結果、チャンピオン争いは接戦の様相を呈してきた。

前半戦を締めくくる第10戦ベルギーGP(決勝7月19日)と第11戦ハンガリーGP(決勝7月26日)は連戦となるが、コース特性がまったく異なるサーキットが舞台となる。果たして、どのドライバーが結果を残し、ポイントリーダーとして前半戦を折り返すのか!

* * *

【ルクレールが約2年振りの優勝】

シャルル・ルクレール選手がイギリスGPで2024年シーズンのアメリカGP以来となる優勝を飾りました。ルクレール選手にとっては長い2年間だったと思うので、勝てて本当にホッとしたでしょうね。やっぱり自分がフェラーリのエースだという自負もあったと思いますが、なかなか結果を出せなかった。

その一方で、フェラーリ移籍2シーズン目を迎えたチームメイトのルイス・ハミルトン選手は開幕から元気な走りを見せ、第7戦のカタルーニャGPではフェラーリに今季初優勝をもたらしました。ルクレール選手は苦しかったと思いますが、イギリスGPでフェラーリにとって記念すべきF1通算250勝をもたらしました。

スタートを決めて首位に立つと、そのままポジションを守り切ったルクレール。自身にとって約2年振り、フェラーリにとってはF1通算250勝目のメモリアルウインだったスタートを決めて首位に立つと、そのままポジションを守り切ったルクレール。自身にとって約2年振り、フェラーリにとってはF1通算250勝目のメモリアルウインだった

地元のハミルトン選手も3位に入りフェラーリはダブル表彰台を獲得しましたが、今年のマシンはシルバーストンやスペインのバルセロナのような中高速コーナーがあって、空力効率を求められるようなサーキットで強いことが証明されたと思います。

逆にストレートをヘアピンやシケインでつないだ"ストップ&ゴー"のサーキットは厳しい。実際にオーストリアGPではフェラーリの2台はレースペースに苦しみ、優勝したメルセデスのジョージ・ラッセル選手や2位に入ったレッドブルのマックス・フェルスタッペン選手らと表彰台争いに加わることができませんでした。ハミルトン選手とルクレール選手はそれぞれ5位と8位に終わっています。

【現代F1のあり方が凝縮されたイギリスGP】

イギリスGPのメルセデスとフェラーリの予選でのポールポジション争いは、現代F1を象徴していて興味深かった。フェラーリはコースに合った空力性能を生かして勝負していましたが、一方のメルセデスはルールの抜け穴をつくような戦い方をしていました。

簡単に言うと、計測ライン超える直前にアクセルを緩めることで電気エネルギーを最大限まで使ってタイムを上げるというのです。

そうしたエネルギーマネージメントの"裏技"を見つけて、競い合うのが現代F1の面白さなのですが、ドライバーがアクセル全開で攻めながら、バトルを繰り広げるのを見てきた昔からのF1ファンからすると、「なんだかなあ......」と不満に感じるところもあるんです。

今年のイギリスGPはレース中のさまざまな場面でバトルがありましたし、はたから見ているとマシンが遅くなったようには感じなかったと思います。でも、ラップタイムにおいては史上最速と言われる2020年シーズンの映像を見比べてみると、やっぱり全然違いましたね。

シルバーストンといえば、高速のS字コーナー、マゴッツ~ベケッツ~チャペルです。F1マシンのコーナーリング性能や俊敏性がもっとも発揮される場所ですが、レギュレーション変更前はドライバーがアクセル全開でコーナーに飛び込み、限界ギリギリで攻めて走っていました。ダウンフォースを効かせたマシンが驚異的な速度でコーナーを駆け抜けていくのが、F1の本来の姿です。

現代のF1は1周全体で電気エネルギーを効率的に使うために、高速コーナーであえて減速して充電をする場合があります。それがF1の魅力を失わせることにつながると主催側は判断して、来年からは内燃機関(エンジン)と電気モーターの出力比率を変更し、エンジンの比率を引き上げることになっています。

F1は、いわば規則の過渡期にあるわけですが、それでもオーストリアやイギリスでの連戦を含め、ここ数戦は面白いレースを見せてくれるわけですから、ドライバー、エンジニア、関係者の皆さんの「軌道修正力」はすごいなと感じています。

【2027年を見据えた戦いも始まっている】

第7戦カタルーニャGPと第9戦イギリスGPでフェラーリが勝ったことで、チャンピオン争いは面白くなってきましたが、今年のF1は不思議なことに、チーム内の片方のドライバーが結果が出せない、という構図になっています。メルセデスはラッセル選手、フェラーリはルクレール選手、マクラーレンはピアストリ選手の流れがよくない。

レッドブルに関しては両ドライバーが苦しんでいますが、特にマックス・フェルスタッペン選手がチームとギクシャクしているように見えます。無線を聞いていても、「俺がこうしてくれと言っているのに、なんでしてくれないの」といった発言が交わされていたり、心配ですね。

チャンピオンシップに関しては、開幕から安定したパフォーマンスを発揮してきたメルセデスとアントネッリ選手は、まだライバルに対してリードを築いています。イギリスGP終了時点で、メルセデスはコンストラクターズ選手権でランキング2位のフェラーリに対して78ポイント、アントネッリ選手はドライバーズ選手権でランキング2位のラッセル選手に25ポイント、同3位のハミルトン選手には32ポイントの差をつけています。

とはいえ、フェラーリがここ数戦、どんどんアップデートを持ち込んで、確実に競争力を上げてきています。優勝争いが白熱するに伴って、コース外の心理戦も激しさを増しています。メルセデスのトト・ウォルフ代表は「コストキャップ(開発予算の上限)の範囲内でこんなにも積極的な開発ができるのか。フェラーリはコストキャップを違反しているんじゃないのか」と発言。それにフェラーリのフレデリック・バスール代表が反論し、舌戦を繰り広げています。

おそらく、メルセデス陣営はタイトル争いを早めに決着させ、来年のマシン開発にリソースを振り向けたいと考えていたはず。でもフェラーリがこれだけ反撃してくると、今シーズン中の開発をやらざるを得ないでしょう。

フェラーリとしてはマシンを進化させ続けて、メルセデスにプレッシャーを与え、彼らの来年の開発リソースを削っていかないといけない。そうじゃないと2027年シーズンもメルセデスが先行してしまう。メルセデスとフェラーリの両陣営はタイトル争いを繰り広げながらも、2027年を見据えた戦いもスタートさせているように見えます。

【アストンマーティン"Bスペック"の実力は?】

夏休み前の最後のレースとなるベルギーとハンガリーの2連戦は、ハイスピードのスパ・フランコルシャンとストップ&ゴーのハンガロリンクが戦いの舞台になります。正反対のコース特性となるので、ドライバーやチームにとって簡単な戦いにはならないと思いますが、ファンとしては逆に楽しみです。

フェラーリは、ハンガロリンクは厳しいと予想しますが、スパにはマシン特性は合っていると思います。チャンピオンシップを考えると、ベルギーは絶対に勝ちたいところですが、スパはF1屈指の高速コーナー、オールージュの後に長い登り坂のケメル・ストレートがあるので、電気エネルギーのマネージメントは相当厳しくなるはず。

電気エネルギーの使い方に関してはメルセデスが一枚上手なので、フェラーリがそこにどう対抗するのか? 大きな見どころですね。

続くハンガリーはマシン特性を考えるとメルセデスが強いと思いますが、一番の注目はアストンマーティンですよね。ついに大型アップデートを持ち込むといわれています。チーム代表で、マシン設計も手掛けるエイドリアン・ニューウェイさんは「2秒は速くなる」と話しているので、期待しています。

ニューウェイさんはF1マシンのデザイナーとして大成功を収めていて、過去を振り返れば、「Bスペック」と呼ばれる改良型マシンを何度か出していました。ウイリアムズのFW14B(1992年)やマクラーレンのMP4-19B(2004年)が代表的なマシンですが、これらのBスペックはしっかりと成績を残しています。

でも、たとえアストンマーティンが"Bスペック"で2秒速くなったとしても、ようやく中団グループに追いつけるレベルでしょう。その点は少し残念ですが、ホンダも夏休み明けのオランダGP(決勝8月23日)に大規模なアップデートを施したパワーユニット(PU)を投入する予定です。

ニューウェイさんもホンダも開発を進めることで、これまで何度も困難を乗り越えてきました。今回もやってくれることを期待しましょう! それでアロンソ選手が「よし、これだったら、来年は勝負できる!」とやる気になってほしいと思っています。

☆取材こぼれ話☆

7月4日、1年を通じて「各世代で最も輝いている人」「宝石が似合う著名人」に贈られる「第37回 日本ジュエリーベストドレッサー賞』の表彰式が東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催され、堂本光一が特別賞エンターテイナー部門を受賞した。表彰式では、特別賞を受賞した高市早苗首相の隣で写真撮影に臨んだ。

「授賞式で高市首相は日本の養殖真珠の技術の素晴らしさについてお話をされていました。それを隣で聞きながら、高市首相に直接『日本のF1をもっと盛り上げてほしい、日本にF1レースをもっと招致してほしい』と伝えたいと思いましたが、そこは心の中にとどめておきました(笑)」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

★不定期連載『堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web』記事一覧★

  • 堂本光一

    堂本光一

    Koichi Domoto

    1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
    公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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