【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】ひょっとしたらフェラーリにタイトル獲得のチャンスがあるかも!?

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

カタルーニャGPを制し、優勝トロフィーを手に雄叫びをあげるハミルトン。2位にはラッセル、3位にはノリスがそれぞれ入り、イギリス人が表彰台を独占。1968年のアメリカGP以来、実に58年ぶりの快挙だったカタルーニャGPを制し、優勝トロフィーを手に雄叫びをあげるハミルトン。2位にはラッセル、3位にはノリスがそれぞれ入り、イギリス人が表彰台を独占。1968年のアメリカGP以来、実に58年ぶりの快挙だった

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE51

今シーズン、開幕からライバルを圧倒していたメルセデスの連勝記録がついにストップした。バルセロナで開催された第7戦のカタルーニャGPでメルセデスに土をつけたのはフェラーリ移籍2シーズン目のルイス・ハミルトンだった。

史上最多タイの7度の世界王者に輝く41歳は、フェラーリ移籍初年度は苦戦を強いられたが、今シーズンは開幕から好調な走りを披露。第6戦のモナコGPで2位表彰台を獲得すると、続くカタルーニャでは自身通算106勝目を挙げ、チャンピオン争いにも名乗りを上げてきた。

今週末の第8戦オーストリアGP(決勝6月28日)と第9戦イギリスGP(決勝7月5日)は連戦となるが、ハミルトン&フェラーリ陣営がさらなる攻勢を仕掛けるのか。それともメルセデス勢が巻き返すのか。この2連戦はタイトル戦線の行方を占う重要なレースになりそうだ!

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【メルセデスの連勝がついに止まる】

ルイス・ハミルトン選手が第7戦カタルーニャGPでフェラーリに移籍後の初勝利を挙げ、メルセデスの連勝記録を止めました。約2年振りとなる通算106勝目を手にしたハミルトン選手ですが、フェラーリ移籍初年度となった昨シーズンは本当に苦しみました。

2025年型のマシンはハミルトン選手の意向がまったく反映されていませんし、担当エンジニアとの関係もうまくいっていないように見えました。でもフェラーリ在籍2シーズン目を迎え、マシンにはハミルトン選手の意見がかなり入っているだろうし、スタッフとの関係も整ったことで、成績が出るようになってきたんだと思います。

やっぱりハミルトン選手は、チームを良い方向に導くことができる人なんですよね。そこが7度の世界王者に輝く彼のすごさだと改めて感じます。チャンピオンとして戦ってきた経験を生かしてフェラーリに勝利をもたらし、今まさに強いチームを作り上げようとしています。

チームメイトのシャルル・ルクレール選手も才能のあるドライバーですが、今シーズンは苦しんでいます。モナコとカタルーニャでともに表彰台に上がったハミルトン選手とは対照的に2戦連続でリタイアを喫し、ノーポイントに終わりました。

ルクレール選手は2019年、当時21歳でフェラーリ入りを果たし、これまでエースとしてチームを牽引してきました。この6月にフェラーリとの契約延長を発表したばかりで、チームも期待しているとは思うのですが、やっぱり在籍期間が長くなると、何がよくて何が悪いのかが見えにくくなっているところがあるんじゃないかと感じます。

本当の課題が組織の中にいるとわからないというのは、どこの世界でも共通して言えることです。例えば今、注目されているのがブレーキです。

これまでフェラーリはF1では50年以上、市販車でも付き合いの深いイタリアのブレンボ製を使用してきました。でもハミルトン選手はブレーキディスクをフランスのカーボン・インダストリー(CI)製に変更しています。それも今季好調の要因のひとつと言われています。

ルクレール選手もバルセロナで早速CI製のブレーキを試し、巻き返しを図っています。チャンピオンの経験とアドバイスによって、フェラーリが課題をひとつずつクリアし、これからもっと上向きになっていくような気がしています。

【マシン改良に成功したフェラーリ】

新しいレギュレーションが導入された2026年は、シーズン中のマシンのアップデートが重要になってくると思っています。その点に関してはここ数年、マクラーレンが素晴らしい仕事をしてきましたが、フェラーリはうまくできていなかった。

ところが今年のフェラーリはシーズン中のマシン改良を着実に行なっています。第4戦カナダに続いて、第6戦のカタルーニャGPでも大型のアップデートを持ち込みましたが、その効果がきちんと反映されています。なんかフェラーリらしからぬ仕事ぶりです(笑)。

カタルーニャGPの決勝日は気温が30度を超え、路面温度も50度以上となり、タイヤに厳しい状況でしたが、バルセロナに投入した新型のホイールが効果的だったようです。新しいホイールはブレーキの熱を遮りタイヤへの影響を抑えることができると言われていますが、実際にハミルトン選手はタイヤをうまく使って、ラップペースも安定して速かった。

バルセロナでメルセデス勢は2ストップ作戦を採る中、ハミルトン選手は3ストップを敢行します。フェルナンド・アロンソ選手がマシントラブルでストップし、バーチャルセーフティーカー(VSC)が出たタイミングでハミルトン選手は3回目のタイヤ交換を行ない、それが功を奏し、ポールポジションからスタートしたジョージ・ラッセル選手を抜いて首位に立ちました。

でもVSCが出なかったとしても、ハミルトン選手はメルセデス勢を抜いてレース終盤にトップの座を奪い取って優勝していたと思うぐらい、最後まで断トツに速かった。逆にラッセル選手はレース中盤以降、ペースがまったく上がらなかった。

現状では予選一発の速さに関してはまだメルセデスに分があるように見えますが、レースにおいてはハミルトン・フェラーリが相当に強い。タイヤの温度管理が非常にうまくいっており、そこが強みになっていると思います。

【史上最年少19歳のモナコウイナー誕生】

第2戦の中国GPから第6戦のモナコGPまで5連勝中だったキミ・アントネッリ選手は、バルセロナではレース終盤にチームメイトのラッセル選手を抜いて2位を走行していたのですが、マシントラブルでノーポイントに終わります。

それでもアントネッリ選手は前の週のモナコGPで、史上最年少となる10代(19歳286日)で優勝という偉業を達成しています。些細なドライブミスが即リタイアにつながる難易度の高いモンテカルロ市街地コースでスタートから一度もトップを譲ることなく、ポール・トゥ・ウインで圧勝したことは称えられるべきだと思います。

正直、モナコGPが終わった時点で「アントネッリ選手は強すぎる。今年のタイトルはもう彼で決まったかな」と思いました。でもカタルーニャGPでアントネッリ選手が今季初のノーポイントに終わり、ハミルトン選手のパフォーマンスを目の当たりにしたことで、「これはフェラーリにもひょっとしたらチャンスがあるかも」と期待を抱かせてくれましたね。

カタルーニャGP終了時点で、ポイントリーダーのアントネッリ選手(156)とランキング2位のハミルトン選手(115)とのポイント差は41。ランキング3位のラッセル選手(106)もアントネッリ選手とのポイント差を詰めましたので、タイトル争いは面白くなってきました。

もし41歳のハミルトン選手と19歳のアントネッリ選手がタイトルを争ったら、7度の世界王者に輝いた大ベテランとデビュー2年目の新鋭の対決です。これだけでもう映画になりそうですよね。これからふたりはいろんなドラマが見せてくれると思いますが、フェラーリ目線に立つと、やっぱり2台体制で戦わないとチャンピオン獲得は難しい。そういう意味でもルクレール選手には復調してほしいです。

【オーストリア&イギリスの連戦の注目点は】

今年のフェラーリはマシンの競争力は高いですが、どのサーキットでも安定して速いとは言えません。コーナーリング性能は高いので、中高速コーナーの多いサーキットは得意ですが、ストレートをヘアピンやシケインでつないだ"ストップ&ゴー"のサーキットは厳しい。

第8戦オーストリアGPは典型的な"ストップ&ゴー"のレッドブルリンクが舞台となりますので相性はよくないですが、次のイギリスGPは高速コーナーが多い、シルバーストン・サーキットで開催されます。

コーナーリングマシンのフェラーリに合っていますし、ハミルトン選手は母国イギリスGPで過去9勝と圧倒的な戦績を誇っているので、勝機は十分にあると思います。

繰り返しになりますが、ハミルトン選手の力はフェラーリにすごくいい影響を与えています。ハミルトン選手はマクラーレン、メルセデス、フェラーリで勝利を挙げていますが、過去に3チームで勝ったドライバーはたった16人しかいません。ハミルトン選手はただ速いだけでなく、強力なリーダーシップも兼ね備え、チームを牽引できる人なんですよね。

でも昨年までは、赤いレーシングスーツ姿のハミルトン選手にどこか違和感があったのですが、今年に入って力強い走りを見せ始め、モナコGPで初めて表彰台に上がり、カタルーニャGPで初優勝を飾ると、どんどん赤いマシンとレーシングスーツが似合っていくんです。それが不思議ですね。

フェラーリが元気になるのはうれしいですが、気になることもあります。もしハミルトン選手がタイトルを狙える状況になったら、これまでチームの中心的存在だったルクレール選手をフェラーリはどのように扱うのか。ナンバー2としてハミルトン選手をサポートさせるのか。そしてルクレール選手もチームのオーダーに従うのか。

同じことはメルセデスにも言えます。バルセロナでもアントネッリ選手とラッセル選手はコース上で激しくやり合っていましたが、ふたりのドライバーをどうコントロールしていくのか?

そこはメルセデス陣営にとって大きな課題ですし、これからもチームメイト同士で優勝争いが白熱したときにチームのトップはどんな判断をするのか。そこも今シーズンの見どころだと思います。

「チームメイト同士で優勝争いが白熱したときにチームのトップはどんな判断をするのか。そこも今シーズンの見どころ」と語る堂本光一「チームメイト同士で優勝争いが白熱したときにチームのトップはどんな判断をするのか。そこも今シーズンの見どころ」と語る堂本光一


☆取材こぼれ話☆

F1のモナコGP、アメリカのインディ500マイルとともに世界3大レースに数えられるル・マン24時間レースで、元F1ドライバーの小林可夢偉(かむい)選手とニック・デ・フリース選手、マイク・コンウェイ選手がドライブするトヨタの7号車が総合優勝を果たした。トヨタのル・マン制覇は4年ぶり通算6度目となる。

「昨年のル・マンを制したフェラーリやBMW、GM(ゼネラルモーターズ)などのワークス勢を相手に優勝したんですから、すごいことです。ホンダも頑張ってほしいですね。

アストンマーティン・ホンダはモナコでフェルナンド・アロンソ選手が10位に入り、今季初のポイントを取りました。でもドライバーズサーキットのモナコで結果を出せたのは、アロンソ選手の力によるところが大きかったと思います。

実際、マシンの総合力が問われる次のカタルーニャGPでは、2台そろってマシントラブルでリタイア。いいところがありませんでした。アストンマーティンは開幕からアップデートが入っていないこともありますが、進歩があまり感じられません。そこが本当に心配ですし、アロンソ選手が本来の力を発揮することなくリタイアする姿はもう見たくないです」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア

★不定期連載『堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web』記事一覧★

  • 堂本光一

    堂本光一

    Koichi Domoto

    1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
    公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】

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