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千葉県大網白里市内で大雨により水没した2台の車両。県内では多数のクルマが被害を受けた
千葉県を襲った記録的豪雨によって水没し、動けなくなった車両が路上にあふれた。こうした被災車両の多くはいったいどこへ向かうのか。中には中古車市場にまぎれ込んでくる車両もあるようだが、そんな水没車をつかまされないための方法とは?
水没カー、1万台超!
8月13、14日に千葉県の広い範囲を襲ったゲリラ豪雨で、道路や市街地が冠水。大量のクルマが水にのみ込まれ、各地に水没車が取り残された。熊谷俊人知事は、県内の被災車両が1万台を超えるとの認識を示している。
そんな中、水が引いた被災地で別の動きが始まっている。水没車を巡る〝大争奪戦〟だ。実は、水没車や事故車などの損傷車両を買い取り、再販や輸出につなげるビジネスは珍しくない。中には120ヵ国以上への輸送に対応し、アフリカや中東、南アジアなどに販路を持つ業者も存在する。
なぜ、全損扱いとなったクルマにまで買い手がつくのか。中古車事情に詳しい関係者はこう語る。
「水没の程度がひどく、エンジンや電子制御系までダメになっても、日本車は部品として価値が残る。エンジンやトランスミッション、ドア、ライト、ホイールなどを取り外し、〝部品取り車両〟として活用できるからです」
中古車ブローカーはこう説明する。
「日本で全損と判断されたからといって、車両そのものの価値がゼロになるとは限らない。日本では修理費が高くついて廃車扱いになっても、人件費などが比較的安い国なら再生できる場合もあります」
日本の中古車や損傷車両は、パキスタンやUAE、アフリカ諸国、ニュージーランドなどへ輸出されている。中でもUAEは、日本から輸出された中古車の〝中継拠点〟のひとつとして知られているという。
「修理や整備を経て海外へ輸出される車両もあれば、流通ルートを変えて日本国内の中古車市場に戻るケースもあるでしょうね」(前出・関係者)
一方、ご意見番の自動車評論家・国沢光宏氏はこう警鐘を鳴らす。
「今回の豪雨では、過去に例のない規模で水没車が発生しました。特に注意したいのがネットのオークションや個人売買です。水没歴を隠して販売されるケースも考えられます。
相場より少し安いからと飛びつくと、後で痛い目を見ることになります。中古車に『掘り出し物』はありません。安さには必ず理由がある。その意識を持つことが大切でしょうね」
千葉市役所に隣接する駐車場に集められた被災車両。豪雨で動かせなくなったクルマや路上に放置された車両が次々に運び込まれた
ネット上でも、水没歴を隠した車両が闇業者の手により中古車市場に流通することを懸念する声は少なくない。しかも厄介なのは、〝いかにもワケあり〟とわかる激安価格で売られるとは限らないこと。水没車と気づかれないよう、あえて相場並みの値づけをするケースもあるという。
そもそもの話だが、水没車は修理さえすれば問題なく乗り続けられるのか。自動車ジャーナリストの桃田健史(けんじ)氏は、3つのリスクを挙げる。まずは電装系だ。
「現在のクルマには数十個のECU(電子制御ユニット)が搭載されており、エンジンがかかったとしても、後になって各部で不具合が発生する可能性があります」
次にエンジン。
「ハイブリッド車でも、エンジン内部に水が入り込めば、深刻な故障につながることがあります」
さらに車内の劣化も見逃せない。
「吸音材や防振材などが水分を含むことで、腐食や悪臭の原因になります。しかも、時間がたってからトラブルが表面化するケースも少なくありません」
過去の豪雨災害でも、水没車の買い取り業者が被災地に殺到し、「買い取ります」と書かれたチラシが被災車両に次々と貼られる光景が話題になった。
とある中古車店のオーナーは、声を潜めてこう話す。
「本来、水没車であることを明示せずに販売すれば、不当表示に当たる可能性があります。ただし、業界団体に加盟していない業者もいますし、実態の見えにくい販売業者が存在するのも事実です。だからこそ、中古車はすべてが安心とは限りません」
桃田氏も、水没車の判別の難しさを指摘する。
「水没中古車を見分けるのは実質的に不可能です。長期間浸水していればボディの変色などが出る場合もありますが、1~2日程度の浸水では外観から判断できないことがあります。相場を大きく下回る中古車にはなんらかの理由があり、その中に水没車が紛れている可能性もあります」
では、購入者は何を確認すべきか。都内の整備士は言う。
「水没の程度によっては、乾燥や清掃などの処置で普通に走れる場合もある。ただし、車内まで浸水した車両は悪臭がなかなか取れない。購入時はにおいも大事な判断材料です。芳香剤のにおいが異常に強い中古車は、水没臭をごまかしている可能性もあるので注意してください」
取材で共通して耳にしたのは、「修復歴あり・なしだけで判断したり安心してはいけない」という声だった。「冠水歴はないか」「どこまで浸水したのか」「どんな修理や整備を受けたのか」。販売店に具体的な説明を求め、整備記録や車両履歴もできる限りチェックしたい。
水が引いても、問題は終わらない。1万台の水没車は、これからどこへ向かうのか。