大谷・鈴木・岡本・村上と徹底比較! サトテル(佐藤輝明)はメジャーでどこまでやれるのか?

写真/時事通信社

三冠王も射程圏内で「今冬の野手市場ナンバーワン」の声もある阪神の佐藤輝明三冠王も射程圏内で「今冬の野手市場ナンバーワン」の声もある阪神の佐藤輝明

ペナントレース最終盤の現在、打撃3部門のタイトル争いを繰り広げる佐藤輝明(阪神)。MLB挑戦を見据える〝虎の主砲〟の行く末を占う。

※成績はすべて9月22日時点

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【松井秀喜ではなくイチローと〝同じ型〟】

打撃主要3部門でリーグトップを記録する佐藤輝明(阪神)。同僚の森下翔太と本塁打王を激しく競り合っているが、三冠王を達成すれば、2022年の村上宗隆(当時ヤクルト、現ホワイトソックス)以来、史上9人目の大偉業となる。

その打棒は、すでに海の向こうでも高く評価されている。移籍情報サイト『MLBトレード・ルーマーズ』が9月17日に発表した今オフのFAランキングにおいて、ポスティングシステムでのMLB挑戦が見込まれる佐藤は、投手のタリク・スクーバル(ドジャース)に次ぐ2位に堂々選出。野手ではトップの評価で、総額1億ドル(約157億円)を超える大型契約の可能性もあるという。

果たして、佐藤は海の向こうでどこまで通用するのか。現役投手を指導するピッチングデザイナーで、MLBにも精通する『週刊プレイボーイ』本誌おなじみの野球評論家・お股ニキ氏は、日本人打者の〝渡米の型〟から読み解く。

「MLBに挑む日本人打者には、ふたつの型があります。ひとつは松井秀喜さん(元巨人、ヤンキースほか)のように、日本での打撃スタイルを貫いて海を渡るタイプ。松井さんは巨人の4番という立場もあり、ヤンキース1年目の03年途中までスタイルや立ち位置を変えませんでした。村上もどちらかといえばこちらの型に近いでしょう。

もうひとつはイチローさん(元オリックス、マリナーズほか)のように、日本にいる頃から準備を進めるタイプ。イチローさんは1998年頃には振り子打法をやめ、ホームベースから離れて立つなど、すでにMLBを意識した打ち方に移行していた。佐藤は明らかに後者です」

では、佐藤の打撃の何が〝MLB仕様〟なのか。

「今の佐藤は、クラウチング気味に構えてバットを寝かせ、体の回転を使ってインサイドアウトでとらえ、最後は片手で振り抜く。私が最も好む打ち方です。MLBの投手は球もモーションも速いので、無駄をそぎ落としたソフトボールのような打ち方でないとタイミングが合わない。佐藤はその動作を日本にいながら身につけています」

昨季は三塁手でゴールデングラブ賞を初受賞。WBCでは右翼も守るなどユーティリティ性も高い昨季は三塁手でゴールデングラブ賞を初受賞。WBCでは右翼も守るなどユーティリティ性も高い

その成果は数字にも表れている。キャリアハイだった昨季の打率.277から、今季は自身初の3割台がほぼ確実。OPSも.924から1.002へと跳ね上がった。

「データを見ると、泳がされて引っかけた一塁ゴロが昨季より減っているようです。佐藤は泳がされても軸を残して打てるのが長所ですが、ボールの上っ面を叩けば一塁ゴロになる。紙一重なんです。

今季はクラウチング気味にやや前傾で構えている分、わずかに下をとらえられるようになり、ゴロではなくライナーに変わっているのでしょう。飛ばす力は捨てていないからこそ、長打力を保ったまま打率も上がったのです」

打撃の完成度では、〝お手本〟とも言える大谷翔平(ドジャース)を上回る部分もあるという。

「佐藤の打ち方は、大谷をひと回りコンパクトにしたイメージ。軸を残して上半身と下半身を同時に回し、片手フォローで前を大きく残す点は共通しています。

ただ、大谷はどうしてもレフト方向へ体が傾く打ち方なので、クリストファー・サンチェス(フィリーズ)のような左投手のツーシームやスライダーを苦手にしています。

佐藤はセンター方向へ真っすぐ力を伝える上、手足が長くベースから離れて立っても外角に届き、内角もさばけるため、相手はインコースを攻めにくい。右投手も左投手も苦にしないという点では、大谷さえも上回っています」

3月のWBC準々決勝では2番・右翼で先発。大谷の申告敬遠直後に同点の適時二塁打を放った3月のWBC準々決勝では2番・右翼で先発。大谷の申告敬遠直後に同点の適時二塁打を放った

【MLBで活躍する日本人打者と比較】

では、MLBでは具体的にどれほどの数字を残せるのか。お股ニキ氏がまず強調するのは、日米の投手レベルの差だ。

「今のMLBは投手のレベルが数年前と比べて2段階ほど上がり、昔のダルビッシュ有(パドレス)クラスの球速や球種を備えた投手が並ぶ世界です。日本でいえば、ソフトバンクの守護神、杉山一樹クラスがうじゃうじゃいるようなもの。

あの菅野智之(ロッキーズ)ですら、すべての引き出しと経験を振り絞っても防御率5点台という恐ろしい世界なのです」

佐藤自身、交流戦以降は失速し、7月は月間打率.229と苦しんだ。

「佐藤はもともと高打率型ではなく、スランプに入ると長引くタイプ。MLBには、不調でも打てるような格の落ちる投手が少ないため、そこが唯一の不安材料です。

それでも昨年3月には、プレシーズンゲームでブレイク・スネル(ドジャース)から一発を放っているように、適応力はある。何より、打ち方を抜本的に改造しなくていいのが大きいです」

渡米までの歩みは、大谷と大きく異なる。

「大谷は渡米直後、日本流の打ち方で打てず、オープン戦の終盤に足を上げない打ち方に変えました。さらに1度目のトミー・ジョン手術の後、2020年の不振を受けて動作を大きくつくり直している。

佐藤はその作業を日本で済ませています。裏を返せば、向こうで別人のように化けるタイプでもない。山本由伸(ドジャース)と同じで、MLB挑戦前から相当完成されている選手なのです」

MLB1年目の今季、岡本和真(ブルージェイズ)は打率.235、33本塁打、村上は打率.203、32本塁打と、本塁打を量産しながらも確実性に課題を残している。

対照的に、前述のFAランキングで5位に入った鈴木誠也(カブス)は打率.267、25本塁打と安定した数字を残している。

「鈴木は広島時代から別格で、岡本と比べてもワンランク上の打者でした。佐藤のイメージは、今の鈴木未満、岡本・村上以上。現実的には打率.265前後、30本塁打くらいでしょう。幅を持たせれば打率.250~.275、30~35本塁打くらい。岡本はもともと打率を残すタイプではありませんが、佐藤は確実性の面で別人に変わっていますから期待が持てます」

ただし、過度な期待は禁物だとくぎを刺す。

「MLBはハイレベルな打者がたくさんいるので、優秀な選手のひとりとして、5番打者あたりに収まるイメージ。単なる〝ロマン枠〟ではなく、最初から主力として計算できる打者という評価です」

【MLB挑戦ならどの球団がベスト?】

では、MLBのどの球団がベストなのか。お股ニキ氏が真っ先に名前を挙げたのはドジャースだ。

「技術的な相性でいえば、一番面白いのはドジャース。私が高く評価してきた大谷や山本、佐々木朗希を次々と獲得しているように、あの球団は本物しか取りません。成績だけではなく、構えから打ち出しまでの無駄の少なさや回転の使い方を見ているので、佐藤の打ち方も高く買うはず。

正三塁手のマックス・マンシーが来季まで契約を残していますが、フレディ・フリーマンも30代後半に差しかかり、数年先を見越せば、一塁と三塁は後釜を考え始める時期。三塁も外野も守れる佐藤は喉から手が出るほど欲しい選手でしょう。

加入すれば、大谷やムーキー・ベッツらが並ぶ打線で5、6番くらいからのスタートになるのでは。ただし、ドジャースではチームバッティングを求められ、重圧も厳しい環境だけに、移籍組が一度は打撃を崩すケースも多いです」

一方、編成上の現実味で上回るのがフィリーズだ。今季はプレストン・マッティングリーGMが甲子園まで視察に訪れたことも話題になった。

「フィリーズは正三塁手のアレク・ボームが今季限りで契約満了。右翼も含めて、佐藤を狙うのは理にかなっています。わざわざ視察に来ているということは、三塁のレギュラーを任せても大丈夫かどうかの最終確認をしにきたのではないでしょうか」

資金力でいえばメッツも候補に入るが、お股ニキ氏は大型契約の費用対効果が悪いチーム状況を評価しておらず、積極的には推さない。

むしろ、鈴木が今季で契約満了を迎えるカブスや、村上のいるホワイトソックスを興味深い候補に挙げる。

2025年3月、ドジャース戦でサイ・ヤング賞左腕スネルのストレートをとらえて先制3ラン。試合後、デーブ・ロバーツ監督(左)から称賛された2025年3月、ドジャース戦でサイ・ヤング賞左腕スネルのストレートをとらえて先制3ラン。試合後、デーブ・ロバーツ監督(左)から称賛された

「ポスティングの最後の決め手は、球団の本気度。佐藤は動きもフィジカルも明らかに良く、外れの要素が少ない。フェアバリュー(適正価格)で取りにいく球団は多いと思います」

MLB挑戦に向けて、お股ニキ氏が「やらなくていい」と強調したのが肉体改造だ。

「パワーはもう十分です。日本のボールが飛ばなすぎるだけで、今の村上を見ればわかるように、向こうでは外野フライかと思う打球がそのままスタンドに入る。むしろ、MLB挑戦に向けて筋肉を増やすのは避けたほうがいい。

今の佐藤は、敏捷性を落とさないギリギリのラインまでパワーを高めた理想的なアスリート体形。これ以上太くなると走れなくなって外野を守れず、一塁やDHしかできない選手になりかねないし、膝を痛めるリスクも出てきます」

今オフには労使協定の改定交渉も控え、移籍市場の先行きは読みにくい。それでも、お股ニキ氏は「契約環境の不確実性と挑戦の準備は分けて考えるべき。野球の中身だけを見れば、挑戦するには十分な完成度」と太鼓判を押す。

まずは日本で、史上9人目の三冠王という勲章を手にできるか。その先に待つ海の向こうでの挑戦へ、準備はすでに整っている。

  • お股ニキ

    お股ニキ

    おまたにき

    野球評論家、ピッチングデザイナー。さまざまなデータ分析と膨大な量の試合を見る中で磨き上げた感性を基に、選手のプレーや監督の采配に関してSNSで活動。その理論を取り入れる選手が急増し、オンラインサロンに40人以上のプロ選手が加入。プロ、アマ問わず、千賀滉大、藤浪晋太郎(共にメッツ)に次いでMLBや甲子園を目指す投手の個人指導を行なう。
    公式X【@omatacom】

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