【"米国大統領のドラ息子"の乱】元コカイン依存の56歳が、暗号資産で大金を稼ぐ20歳のバロン・トランプを挑発!

写真/共同通信社

(左)ハンター・バイデン/1970年生まれ。ジョー・バイデンと前妻ネイリアの子。2013年に海軍予備役に入るも、薬物検査で陽性となり除隊 (右)バロン・トランプ/2006年生まれ。ドナルド・トランプと現妻メラニアの一人息子で、トランプの5人の子供の末っ子。身長2m超(左)ハンター・バイデン/1970年生まれ。ジョー・バイデンと前妻ネイリアの子。2013年に海軍予備役に入るも、薬物検査で陽性となり除隊 (右)バロン・トランプ/2006年生まれ。ドナルド・トランプと現妻メラニアの一人息子で、トランプの5人の子供の末っ子。身長2m超
中間選挙を前に、妙に目立つ大統領の息子たち。ドナルド・トランプとメラニアの一人息子で、20歳ながら大金を稼ぐバロン・トランプ。一方、薬物依存症などで父ジョー・バイデンの足を引っ張ってきたハンター・バイデン。

暗号資産で巨額の富を築くトランプ一家に対し、ハンターは黒歴史までネタにして挑発を開始。2世の動向から米政治の行く末が見えてきた!?

*  *  *

【母親と妹が目の前で事故死】

11月3日(現地時間)に迫ったアメリカ中間選挙。その裏で今、大統領の息子たちが、妙な存在感を放ち始めている。中でも最近、何かと話題を振りまいているのが、ジョー・バイデン前大統領の次男、ハンター・バイデン(56歳)だ。

アメリカ在住の作家でジャーナリストの冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)氏はこう語る。

「ハンター・バイデンは今年9月、『$LAPTOP(ラップトップ)』という暗号資産を売り出して話題になりました。

なぜこれが話題になったのか。それを理解するには、彼が長年『偉大な父親の足を引っ張るドラ息子』として扱われてきた半生を説明する必要があります」

冷泉氏は「ハンターを形作った大きな出来事がふたつある」と語る。

「ひとつは幼い頃に、母親と妹を交通事故で亡くしたこと。2歳のハンターと兄のボーも同じ車に乗っていましたが、ふたりは重傷を負ったものの命は助かりました。

そしてもうひとつが、その事故を一緒に生き延びた兄のボーを、2015年に病で亡くしたことです。ボーはものすごく出来が良く、父親のジョーにとっても後継者のような存在だった。だからハンターは、何かにつけて兄と比べられてきたといわれています。

ジョーはボーの死をずっと引きずり、亡くなった後も長男のことを語り続けた。ハンターからすれば、兄が父親の中で永遠に"立派な長男"のままになってしまったわけです」

ジョー・バイデンと前妻ネイリアと3人の子供たち。ジョーが29歳で上院議員に初当選した数週間後、ネイリアと当時1歳のナオミが交通事故で亡くなったジョー・バイデンと前妻ネイリアと3人の子供たち。ジョーが29歳で上院議員に初当選した数週間後、ネイリアと当時1歳のナオミが交通事故で亡くなった
ただし、ハンター自身も経歴だけを見ればエリートだ。ジョージタウン大学を卒業後、イェール大学ロースクールを修了し、弁護士やロビイストとして活動した。

しかしその一方で、長年、アルコールや薬物への依存症にも苦しんできた。とりわけ兄ボーの死後、その生活は大きく荒れていったという。

そして、そんな私生活が世界中にさらされるきっかけになったのが、いわゆる「ハンター・バイデンのラップトップ騒動」だ。

19年、ハンターがデラウェア州のパソコン修理店に預けたノートPC(ラップトップ)を引き取りに来なかったため、店主が中身をコピー。そのデータはやがて、トランプ大統領の顧問弁護士に渡った。

その中には、コカインなどの薬物の購入や使用をうかがわせるメッセージや、その時期のハンターの私的な写真や動画なども含まれ、ネット上に広く拡散された。

さらに24年には、薬物使用について虚偽の申告をして銃を購入した罪などで有罪評決を受け、脱税を巡る事件でも有罪を認めた。最終的には父から恩赦を受けている。

文字どおり、"大統領のドラ息子"としてあらゆる黒歴史をさらしてきたハンター。ところが最近、その黒歴史を自分から武器にし始めているという。

「その背景には、暗号資産で巨額の富を築いたトランプ一家の存在があります」

【暗号資産で潤ったトランプ一家】

「トランプ一家は、第1次政権の頃とは状況がまるで違います。以前は巨額の債務を抱えていましたが、近年は暗号資産ビジネスで一気に巨額の富を築いたんです」

ミームコイン「$TRUMP(トランプ)」や、息子たちも関わる暗号資産事業などに関連するものだけで、トランプ自身も昨年、14億ドル(約2200億円)を超える収入を得たという。

そして、特に資産を増やしているのが息子たちだ。長男ドナルド・ジュニア(48歳)は約5億ドル(約785億円)、次男エリック(42歳)は約7億5000万ドル(約1180億円)もの資産を持ち、その多くを暗号資産事業で築いたとされる。

2019年11月、父トランプ、母メラニアとホワイトハウスを出る当時13歳のバロン。幼い頃からメラニアがメディアへの露出を慎重に管理してきた2019年11月、父トランプ、母メラニアとホワイトハウスを出る当時13歳のバロン。幼い頃からメラニアがメディアへの露出を慎重に管理してきた
そんな"暗号資産ドリーム"をつかんだトランプ一家の末っ子が、現妻メラニア夫人との一人息子、バロン・トランプだ(兄ふたりは前妻との子)。

「バロン君はまだ20歳の大学生ですが、資産はすでに約1億5000万ドル(約236億円)。その多くを、父や兄たちと関わる暗号資産事業で築いたとされています。暗号資産に詳しく、父トランプにもたびたびアドバイスしていたといわれています。

ただ、これまでほとんど表には出てきませんでした。メラニア夫人が大事に守ってきたからでしょう。

名門の米ニューヨーク大学に進学してからも学生寮には入らず、トランプ・タワーからシークレットサービス付きで通学していたそうです」

ちなみに、兄ふたりには怪しい噂もある。ドナルド・ジュニアとエリックが出資し、顧問に就任した金融サービス会社では、ふたりの参加が発表される前から、なぜか株の取引量が急増し、株価も急騰。専門家からは「事前に情報が漏れていたのでは」「インサイダー取引ではないか」と疑う声も上がった。

1977年、事故から5年後にジョー・バイデンはジル(中央)と再婚した。ジルはボーとハンターの継母となり、その後ふたりの間には娘アシュリーも誕生した1977年、事故から5年後にジョー・バイデンはジル(中央)と再婚した。ジルはボーとハンターの継母となり、その後ふたりの間には娘アシュリーも誕生した
そんなトランプ家の息子たちに、ハンターがケンカを売り始めた。

「今年4月、ハンターはドナルド・ジュニアとエリックに、金網で囲まれたリングで戦うケージマッチを呼びかけました。『俺もろくなジュニアじゃないけど、トランプ家にもろくでもない2代目がいるじゃないか。だったら2代目同士で檻(おり)の中でやろうぜ!』というノリでしょう」

さらに5月にはXで発信を開始。「これまで本当の俺の声を聞いたことはないだろ」と宣言し、自分を攻撃する投稿にも次々と返信。薬物依存やラップトップ騒動まで、自虐を交えてネタにした奔放なやりとりが話題になった。

そして9月、ハンターも暗号資産に参入。その名も、自身最大の黒歴史である「$LAPTOP」だった。

「散々、共和党からイジられてきたのに、今度はそれを自分で暗号資産の名前にしてしまった。『トランプ一家が暗号資産で稼ぐなら俺もやる』ということでしょう」

しかも「$LAPTOP」は、トランプ大統領のミームコイン「$TRUMP」を購入し損失を出した人にコインを配る仕組みも用意。トランプへの当てつけまで仕込んだのだ。しかし、取引開始直後に急騰したものの、1時間足らずで高値から約98%も暴落した。

ここまでトランプ一家を挑発すれば、トランプ支持者のMAGAたちから総攻撃を受けそうなものだが、意外にも保守派からは彼を面白がる声まで出始めているという。

「『こいつ、意外とタマがあるじゃないか』と受け止められています。薬物依存を突かれても、『そうだよ。俺は依存症だったよ』と認めてしまう。そういう姿は、きれいな言葉を並べる従来の民主党のエリート政治家とはかなり違って見える。

そのため、『トランプ支持ではない共和党派』や、『反エリートの民主党派』のような、両陣営が取りこぼしていた層からの支持を集めつつある印象です」

【中間選挙より、大統領選挙への影響大!?】

そんな大統領の息子たちが11月の中間選挙を左右する可能性はあるのだろうか。

「中間選挙への影響はほとんどないと思います。ハンターが何か言ったから民主党票が大きく動くとか、バロンが出てきたから若者が共和党へ動くとかは考えづらいです」

冷泉氏によると、息子たちの動きが面白くなるのは中間選挙の後だという。

「トランプ一家は大きな資産を築きました。息子たちにとって重要なのは、トランプ時代が終わった後、この資産や一族の立場をどう守るかという"出口戦略"です。もし何かが違法だと問われたとき、逮捕をどう避けるのか、誰に恩赦してもらうのか。彼らはそういうことを考えているのです」

2025年、第2次トランプ政権の就任式のときの(左から)エリック、イヴァンカの夫のジャレド・クシュナー、イヴァンカ、ドナルド・トランプ・ジュニア2025年、第2次トランプ政権の就任式のときの(左から)エリック、イヴァンカの夫のジャレド・クシュナー、イヴァンカ、ドナルド・トランプ・ジュニア
対して、バイデン家の第2世代はまったく違う動きを見せている。

「ハンターの場合は、自分自身の名誉回復や、民主党の中で存在感を出す方向に動いているように見えます。しかも今の民主党は、2028年の大統領選に向けた旗印もまだ定まっていません」 

そんな状況だからこそ、ハンターの出番があるのではないかと冷泉氏はみる。

「彼が2028年の民主党予備選になんらかの形で絡んでくる可能性はあると思います。自分が予備選を勝ち抜いて大統領になるというより、党内をかき回す役割です。主流派の候補が従来どおりのきれいな理想論を語ったときに、横からツッコむ。ある種の"触媒"になる可能性はあると思っています。

特に、カマラ・ハリスには噛みつくんじゃないでしょうか。というのも、24年の大統領選で、バイデンが途中で再選を断念し、急遽(きゅうきょ)ハリスが候補を引き継いだ後、選挙戦の進め方やバイデンの扱いを巡って両陣営の関係がギクシャクし、敗北後には互いに責任を押しつけ合うような状態になったのです。そうした経緯もあって、バイデン側にはハリスへのわだかまりが残っているといわれています。

そしてハンターは最近、父親の評判を守るような発言もするようになっています。彼はずっと、優秀な兄ばかり気にかけてきた父親の足を引っ張る"ドラ息子"として見られてきた。だからこそ今度は、父親に『自分も役に立てる息子なんだ』と見せたい。父親を困らせる側ではなく、守る側に回りたい。そういう思いもあるんじゃないでしょうか」

Photo Gallery

編集部のオススメ

関連ニュース

TOP