
堂本光一
Koichi Domoto
堂本光一の記事一覧
1979年生まれ、兵庫県出身。日本人初のフルタイムF1ドライバー、中嶋悟氏がデビューした1987年頃からF1のファンに。
公式Instagram【koichi.domoto_kd_51】
レギュレーション変更があった今シーズン、開幕から苦しんだフェルスタッペンだが、第16戦のバーレーンGPで今季初勝利を達成すると、続くシンガポールでも優勝。通算73勝目を挙げた
アジアを舞台にした3連戦、第15戦アゼルバイジャンGP、第16戦バーレーンGP、第17戦シンガポールGPで最も光る活躍を見せたのはレッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。
マレーシアのセパンで開催されたバーレーンGPで今季初勝利を挙げると、続くシンガポールでもポール・トゥ・ウインで圧勝する。4度の世界王者の実力をいかんなく発揮した。
一方、着実にポイントを重ねるキミ・アントンネッリはタイトルに王手をかけ、第18戦アメリカGP(決勝10月25日)で早くもチャンピオンに輝く可能性もある。F1はアメリカGPを皮切りに、メキシコGP(決勝11月1日)、ブラジルGP(決勝11月8日)とアメリカ大陸で3連戦が開催されるが、20歳のアントネッリはどのレースで史上最年少のチャンピオンに輝くのか?
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シーズンの終盤に入り、マックス・フェルスタッペン選手が強さを発揮してきました。レッドブルがマシンの大型アップデートを投入した第15戦のアゼルバイジャンGPで2位に入ると、続くバーレーンGPでは今季初優勝を挙げました。
レッドブルは今季からフォードとパートナーシップを組んでいますが、フォードとしては2003年のジョーダン・フォードのジャンカルロ・フィジケラ選手以来、実に23年振りの優勝です。
フェルスタッペン選手は第17戦のシンガポールGPでも予選でポールポジションを獲得し、決勝では一度もトップを譲ることなく圧勝。アジアでの3連戦でフェルスタッペン選手とレッドブルというレーシングチームの底力を見た気がしますね。
ただ、フェルスタッペン選手が速くなると、チームメイトが苦労するという現象は相変わらずというか、再びあらわれているように感じます。
開発がどんどん進んでいくと、速いけれども性能が発揮できるスイートスポットが狭い"尖ったマシン"になっていくのは当然だと思います。それを乗りこなせるかどうかがチーム内でカギになっていくのですが、これまでレッドブルでフェルスタッペン選手のチームメイトになったドライバーは、みんなマシンのコントロールに苦しんできました。
新しいレギュレーションが導入された初年度で、そういった現象がもう出てきているのを目の当たりにすると、今のF1の開発スピードはすごいんだなと改めて感じます。
チャンピオンシップをリードするメルセデスはマレーシアのセパンに車体のアップデートを持ち込みました。この話を聞いたときは「ああ、これでメルセデスはさらに先に行ってしまうな」と思ったのですが、このアップデートはうまく当たっていないように見えます。
「メルセデスでもこんなことがあるんだな」と驚きましたが、見ている側としては接戦になって面白い。フェラーリとしては今こそチャンスだと思うのですが、何かチグハグな戦いをしています。
特に戦略に関しては大きな疑問を感じます。シンガポールGPの予選で2位と3位を獲得したフェラーリはマシンに速さはあり、ルイス・ハミルトン選手とシャルル・ルクレール選手が2台でうまく戦えば、フェルスタッペン選手といい勝負ができるチャンスは十分あったと思います。
決勝ではレース中盤、バーチャル・セイフティカー(VSC)が導入され、そのタイミングでピットインしてタイヤ交換したルクレール選手は2位でフィニッシュ。ピットに入らない判断をしたハミルトン選手は6位に終わりました。
チームからピットインの指示が出たけれども、それをハミルトン選手が拒否。フェラーリのチームとしての判断は間違っていないと、フレデリック・バスール代表はコメントしていました。でもポイントはそこじゃない。事が起きているのは、その前だと僕は思いました。
シンガポールGPでハミルトン選手とルクレール選手はタイヤ戦略を分けました。ミディアム・タイヤでスタートしたハミルトン選手はかなり早いタイミングでソフト・タイヤに交換。好調なペースで周回を重ねていましたが、ミディアム・タイヤに交換したばかりのチームメイトにふさがれるかっこうになりました。
絶対にあそこはポジションを入れ替え、ハミルトン選手を前に出すべきだったと思います。明らかにハミルトン選手の方がペースは良かったですし、ポイントランキングでもルクレール選手より上位につけています。
そもそもなんのためにタイヤ戦略を分けたのか? それは、どんな状況になったとしてもチームとして最大限のポイントを獲るためですよね。でもフェラーリはチームメイト同士で争って、大量ポイントを獲得できるチャンスを失ってしまった。
「今のフェラーリは戦術だけでなく、マシンにもスタート性能がいいとかタイヤに優しいとか、強みがないのも気になります」と話す堂本光一
もしハミルトン選手がルクレール選手の後ろでタイムロスしていなかったら、VSCが導入されたときにコースに留まるという判断になっていなかったはず。普通に戦っていればダブル表彰台は確実だったのに、なぜそれをやらないのか......。
もうフェラーリはチャンピオンシップをあきらめているとしか思えないし、こんな戦い方をしていたら、いつまで経ってもチャンピオンになれないですよね。フェラーリというチームが好きなだけに、レース終盤、タイヤのグリップを失ってズルズルとポジションを落としていくハミルトン選手を見ているのはツラかったですね。
ポイントリーダーのキミ・アントネッリ選手は着実にポイントを積み重ね、ついにタイトルに王手をかけました。第17戦のシンガポールGP終了時点で、アントネッリ選手の獲得ポイントは340で、ランキング2位のジョージ・ラッセル選手に102ポイント、3位のルイス・ハミルトン選手に111ポイントの大差をつけています。
テキサス州のオースティンで開催される第18戦アメリカGP(決勝10月25日)でアントネッリ選手が優勝し、ラッセル選手が9位以下、ハミルトン選手が5位以下であれば、20歳のアントネッリ選手が史上最年少でチャンピオンに輝きます。
現実的にはアメリカGPでのタイトル獲得は難しいかもしれませんが、連戦となるメキシコGPかブラジルGPのいずれかでアントネッリ選手がチャンピオンになる可能性は高いと思います。
今シーズンのアントネッリ選手は、レギュレーション変更で新しくなったマシンの性能を限界まで引き出し、ミスなくゴールまで運ぶという、ドライバーとしてやるべきことをきちんとやっているんですよね。それが結果につながっていると思います。
もうランキング2位以下のドライバーとは大差がついているので、プレッシャーはないでしょうし、無理をする必要性もありません。まあ、時々、トラックリミット(コース外走行)を繰り返してペナルティを取られることがありますが、そこは若さがあっていい(笑)。
これまでのF1での最年少チャンピオンの記録は、当時レッドブルに所属していたセバスチャン・ベッテル選手が2010年シーズンに達成した23歳134日。その記録をアントネッリ選手は大きく更新します。そんな歴史的な瞬間を見ることができるのですから、ワクワクしますね。
チャンピオン争いが決着したとしても、まだまだ見どころはたくさんあります。僕はフェルスタッペン選手に注目しています。今のレッドブルとフェルスタッペン選手には、残りのレースで全勝するんじゃないかというぐらいの勢いがあります。
昨年もフェルスタッペン選手は後半戦で圧倒的な強さを発揮し、シーズン終盤の8戦で5勝を挙げて、ドライバーズ・ランキンング2位に輝きました。昨シーズンのような戦いを再現してくれるかもしれません。
ただ、メルセデスもこのまま黙っているとは思えません。マレーシアに持ち込んだ車体のアップデートはうまく機能していませんでしたが、シシンガポールGPでは旧型と新型のパッケージを使い分けて走っていました。
そのデータを照らし合わせて、きちんと改良してくるのが王者メルセデスです。それにアメリカGPではパワーユニット(PU)のアップデートを持ち込むと言われているので、楽しみです。
あとはアストンマーティン・ホンダですよね。マレーシアで開催されたバーレーンGPでアロンソ選手がマシンの総合力が問われるセパン・サーキットで8位に入賞。終盤戦は期待できるのかなと思ったのですが、シンガポールGPでは苦しい戦いに戻ってしまった(アロンソ選手が16位で、ランス・ストロール選手はリタイア)。
残りのレースでマレーシアでの走りが偶然じゃなかったと証明してほしいですし、来年に向けて確実に上向きになっているところを見せてくれることを期待しています。
早ければ2030年にF1にV8エンジンが帰ってくると噂になっている。
「V8といっても自然吸気(NA)エンジンじゃなく、ツインターボになるといわれています。ターボにしちゃうと、どうしても掃除機みたいな音になっちゃうんですよね。ターボを外せないのは、最近、市街地レースが増えているのが理由のひとつでしょう。NAのエンジン音は甲高く迫力がありますが、どうしても騒音問題が発生します。
でも9年振りにセパンで開催されたイベントを見ましたが、純粋なサーキットでのレースは面白いと改めて感じました。個人的な希望を言わせてもらえれば、F1の市街地コースはモナコだけでいい。それでNAエンジンを搭載したマシンで、セパンや鈴鹿、シルバーストンのような純粋なサーキットを舞台にレースをすればいいと思うんですけどね。
セパンではフォーメーションラップ中にソフトウェアの不具合が発生し、複数台のマシンが急にパワーを失ってゆっくりと走り出しました。あんなシーンを見たのは初めてでしたし、レース中にマシンに搭載される全車のソフトウェアをアップデートするというのも初めて聞きました。やっぱり今のF1はスポーツとして複雑過ぎます。もっと簡素化すべきだと思います」
スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/tk.TAKEO KIKUCHI THE BOLDMAN/株式会社シビア